表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/259

※そしてフレイは気づく

 巡回中も、ふっと気づくと頭の中で彼女の言葉が蘇る。


 ――私、実験を行っていた場所で彼女のことを見ている。それに今の彼女の魔力量が多すぎるの。


 メイアは、フレイよりもユラの魔力量が多いと言うのだ。

 聞いた瞬間には『ばかな』と思った。たとえそれが、ずっと助けになりたいと願っていた相手の言葉でも。

 なにせフレイは、彼女が拾われたところからずっと見ているのだ。


 魔力だって、目を覚ます前にオルヴェが確認して、間違いなく彼女に魔力がそれほどないことを証言している。魔力を測定する魔法は特殊で、医師のスキルを磨いた人間か魔女に片足を踏み入れたメイアぐらいにしか使えない。そしてオルヴェが、嘘をつくような理由もなかった。


 目覚めた後のユラの行動だって、おかしなところはない。

 フレイは測定石も見ている。ごく普通の……魔法使いというよりは、魔道具を作成するスキルを持つ人間らしい魔力だったと思う。

 だからユラに莫大な魔力があるとか、魔女だとかありえない。


 でも不安には感じる。

 魔女になるため精霊との融合を受けたメイアは、目覚めてしばらくしてから、魔力がとてつもない数値になっていたのだから。


「やはり魔女というのは、魔力が膨大になるのね。精霊の使役……そして世界の力を動かせるだけの力を手に入れられるのだもの」


 彼女は精霊の力によって、自分の魔力を正確に知ったようだ。

 測定石のごとく、彼女は掌の上に黄水晶のような幻を現出させて、フレイに見せた。

 魔力だけが、恐ろしく突出して伸びている。他の数値もメイアは元々高かったけれど、これは異常だ。


「イドリシア王族は精霊の血を継いでいるし、魔力についてはかなり高い数値を元々持っていたはずだけれど、あなたより多いのではありませんか? フレイ」


「ぱっと見た感じでは、私の二倍はあるでしょうね。数字にすると4000ほどだと思うけれど」


 騎士でも2000を持っている者はめったにいない。魔法使いのスキル持ちにしかありえない数字なのだ。

 フレイの数字は、精霊魔法を使うことができる一族だからこそだ。特異体質だろうということで誤魔化し、騎士団では魔法を使う作戦によく参加させられるだけで収まっているけれども。


「でも私の上限はもっと高いはずなんです。魔力が満ちれば、1万にはなるでしょう。あのダンジョンで補充が叶っていたなら……ですが」


「1万……」


 人にはありえない数字だ。それこそ精霊の加護があるような、伝説のになるような人物ではない限り。まさに魔女らしいと言える。

 だからこそ、ユラが魔女ではないかというのも、魔力が大きいと言うのも納得できないのだ。

 彼女はいつもお茶を作っているだけで。先日も初級の魔法が使えるようになったと喜んでいたから。

 ……ただ、フレイも引っかかることはあった。


「ダンジョンに移動したのも、異常だった」


 ユラは精霊と話ができる。それは精霊と融合する実験のせいだろうと考えていた。だから団長達の様子を聞いて、助けに行きたいと思うまではわかる。けれど精霊は、彼女を連れて行く必要がなかったはずだ。

 精霊はきまぐれだが、自分達の声を聞ける相手に対してはめったに危険な方向に誘導はしない。

 なのにユラはダンジョンの入り口に現れるどころか、真っただ中に移動させられている。

 三層目の魔物が、最後の部屋に集合していたのだ。間違いない。


 しかもあの時、精霊が彼女を守っているように見えた。

 まさかと思ったし、幻覚だとフレイは考えていた。精霊がそんな風に特定の人間を守ることなど滅多にない。そんなことをする対象は、団長ぐらいのものだろう。

 だから無理やり自分を納得させていたのだ。団長のことを気にするあまり、精霊がうっかりユラを巻き込んだのだと。団長は特別な人間だから、あり得ることだと。


 けれどメイアの魔力を補充するためにしかけられた魔法陣。それを壊すために、クー・シーを操ったユラ。

 お茶ほしさにクー・シーが言うことを聞く姿に、違和感はあった。でも魔法のお茶など誰にも作れない。だからそんな効果もあるのだということで理解しようと思った。

 でも魔法陣を壊した後……、魔石に吸い込まれる前のものと魔法陣の魔力が拡散して、ユラに向かって行ったようにも見えた。


 ユラに関してはそういったことが多すぎる。だからメイアに、明確に反対できなかったのだ。

 ありえないと。


「……そしてこれだ」


 巡回から帰ってすぐに、街道に魔物が出たと聞いた。それをユラが倒したらしい。

 町の人間が採取に行くような守られた森の中。出て来た魔物の種類からいっても、初級の魔法で倒せる範囲ではある。

 だけどひっかかった。たぶんメイアの話を聞いていたからだろう。


 フレイはすぐに馬を使い、聞き齧ったその現場へ向かった。魔法の痕跡を見るつもりで。

 そして焦げ跡を探した。

 火球を使って倒したのなら、土の上にも焦げが残る。それがあれば、間違いなくユラが初級の魔法で魔物を倒したと安心できるからだ。

 けれど街道の中にあったのは、わずかな水痕だった。


「これは……」


 フレイは側にいた精霊を捕まえて、魔法の痕跡かどうかを答えさせる。

 フレイの魔力を対価に、リス型の精霊は答えた。


「魔法だよ!」


「そうか……」


 精霊が消えてしまっても、フレイはしばらくそこに立ち尽くした。

 初級の魔法で、水を使うものはない。あるとしたら、中級の水の中に敵を閉じ込めるものか、溶けて水になる氷。


 そして城に戻ったフレイは、まっさきにユラに尋ねに行った。

 何の魔法を使ったのかを答えさせるために。

 フレイは彼女の言葉に納得したように見せて、喫茶店を出てからつぶやく。


「ユラさんあなたは……」


 彼女は嘘をついている。それだけは確信できた。

 けれど彼女が魔女だというのだけは、どうしても納得したくない。


「せめて……」とフレイは思う。


 先にメイアが魔女になってしまえば、もしユラが魔女の力を持ってしまっているとしても、表舞台に立つことはない。ひっそりと生きられるだろう。

 でなければ、メイアもユラも守れない。

 だからこそユラにはこのまま、戦闘に参加するようなことはしてほしくないと釘を刺した。

 そうして無関係でいられたなら、彼女を魔女だと疑う必要もなくなるのだから。



 メイア・アルマディール

 HP/MP 300/10000


 攻撃力………10  魔法攻撃力…………100

 筋力…………10  魔法スキル練度……123

 速さ…………11  剣技スキル練度…… 50

 物理防御……10  魔法適性……………100

 魔法防御……50  精霊適性……………100

 魔女……スキルレベル10

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ