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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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森へ草刈りに……行って人助けをしました

 ヘデル刈りに出かけたのは、翌々日のことだ。

 カゴを背負い、不審すぎるからとオルヴェ先生とヘルガさんに口を覆う布を外すよう指導され、採取場所周辺の巡回に行く騎士さん達に同行させてもらう。


 団長様に「この辺りに不案内だというのに、最初から一人で行かせたら、必ずなにかやらかす」と言われ、案内をしてもらえることになったのだ。

 ヘルガさんに誰か紹介してもらおうと思っていた私は、とても感謝して――久々に団長様を拝んだら、嫌な顔をされた。なぜだ。


 ちなみにフレイさんには内緒である。

 まず行って帰れることを証明しないと、面倒なことを言い出すに違いないと思うので。

 みんなが口をつぐんでいる中、フレイさんは街道の巡回に出発した。……許して下さい。心配してくれるのはとてもありがたいのですが、時には一人で行動することも大事なのです。

 フレイさんを見送ったら、喫茶店は閉店中の札をかけ、いざ採取へ!


 採取ができる森へはわりとすぐに到着した。

 周辺の状況やルールについて簡単にレクチャーを受けた私は、もっと奥の方へ巡回しに行くという騎士さんと別れて行動を開始した。


 まずは盾の魔法を発動しておく。何かあってからでは遅いので。

 もし出没したとしても、ごく初歩的な魔物か、蛇やネズミといった生き物だろうということだったけれど、中級の魔法を使っておいた。


「ええと風の盾LV1をぽちっと」


 ボタンを押せば、自分の体の周囲をふわっと緑に光る風が取り巻いた。それはずっとそのままではなかったけれど、手の先なんかにきらっと緑の光が見えるので、発動が続いているのがわかる。


「効果時間はゲームのままかな。30分ぐらいだとすると、かけ直ししたいけど……マクロほしいな」


 何度も使用してレベルが上がれば時間も伸びるだろうけれど、30分ごとに自動で魔法をかけ直しできるようにしたい。使い方を知らないか、今度ソラに聞いてみよう。

 とにかく盾の魔法を発動したままうろついた。


 すぐにヘデルを発見。

 まあ雑草みたいなものなので、すぐ見つかる。

 ナイフを使って蔦を切り、体重をかけて上の方に絡む蔦を引っ張って回収する。あまり取りに来る人が少ないのか、長く成長していた。おかげで二度ほど繰り返したところで、カゴの半分くらいが埋まってしまった。


「もう数本で終わってしまいそう」


 そう思った通り、三本ほど蔦を取ったところでカゴがいっぱいになる。

 想像より早く用事が済んでしまった私は、町の方向へ戻りつつ、木の実を採取することにした。


「あ、キイチゴが沢山ある」


 元の世界のナワシロイチゴみたいな赤い実が群生している場所があった。全部採ってしまってはいけないけれど、少しもらって行こう。

 摘んでいると、キイチゴの近くで跳ねていた、ベレー帽を被ったリスみたいな姿の精霊が歌い出す。


「ユラだ。ユラが来た」


「またお菓子を作るんだよ!」


「お菓子を作って誰かを呼ぶんだよ!」


 精霊達の関心事はおやつのことみたいだ。


「いつの間に私、あちこちの精霊に名前を覚えられてしまってるんだろう……」


 考えてみれば、初対面の精霊に魔女と呼ばれてみたりもしたんだし、精霊というのはそういものなのかもしれない。

 一人に「魔女じゃなくてユラって呼んで」と教えたら瞬く間に広まるあたり、メールの一斉送信で情報を交換しているような、そんなイメージが私の中に広がる。


「でもそうか。キイチゴに紅茶混ぜたクッキーにしたら、おやつになるんだ」


 紅茶を混ぜることを忘れなければ、すべてに魔法の力が付与されるわけで。


「どうして私、紅茶なんだろうな」


 紅茶師なんてスキル名がついてるけれど、たぶんこれ、魔女の力のせいか、精霊融合のせいで使えるようになったんだろうなと思う。


「最初に何かを作りたいと願うと、自動的にそういうスキルを創り出しちゃうシステムなのかな。精霊に近いから……そういうことが起こったとか?」


 いつかソラは、全てを教えてくれるんだろうか。

 考え事をしつつ、キイチゴを摘んでいる間、どこからか飛び出して来た大ネズミがぶつかってきたけれど、風の盾でぽよーんと弾かれてどこかへ飛んで行ってしまった。……大丈夫だろうか。


 キイチゴを摘み終わったら、さらに町の近くへ向かって進んで行く。

 その間も注意して歩いていると、途中で蛇と出くわした。蛇は、静かにしていれば遠ざかって行ったので危険はなかった。


 問題だったのは次だ。

 十分採取は終わったので森から街道へ出る。

 でも街道には、何かに追いかけられている馬車がいた。


「だ、誰か!」


 御者台にいたおじさんは、助けてくれと言おうとしたのだろう。

 でも見当たる人間が、小柄な私しかいない。だめだ。助けを求めてはいけないと思ったのだろう。


「そこのお嬢さん、逃げなさいぃぃぃ!」


 そう言った御者台のおじさんは、幌のない馬車の後方を見る。

 追いかけてきているのは、どうも大ネズミどころではない巨大な、人ほどの大きさのネズミ型の魔物ムーリスだったようだ。

 やけに楽しそうに荷台を追いかけては、ちょいっと手を出して叩いているので、何か好物が積んであったのかもしれない。


 私は馬車に向かって中級魔法の風の盾を使用。

 馬車に近づいたネズミ型の魔物は、弾かれるように後ろにごろんと転がった。

 馬車が通り過ぎて距離が空いたところで、私は攻撃魔法を使う。


「氷槍をぽちっと」


 どんな感じになるかな。ゲームと同じ氷の槍の映像が出るかなーと思ったのだけど。

 白と青が混ざった、冷気を漂わせる槍が一本、二本、三……。


「わ、早く魔物にぶつかって!」


 おかしい。LV1なのに多すぎる! これは良くないと焦ったところで、五本の氷の槍は魔物にぶつかってたちどころに凍らせ、一気に崩れて魔物の姿は消失した。

 御者のおじさんに目撃されてしまっただろうか。振り返った私は、ようやく馬車が止まって、こちらを見たおじさんが、笑みを浮かべるところで目が合った。


「おお、お嬢さんはもしかして討伐者かい? もう倒してくれたのか! 助かったよ!」


 止めた馬車から降りたおじさんは、駆け寄ってきて私の手を握り、喜びでぶん回す。


「いやぁ、あの程度の魔物を追い払えるアイテムがあったんだが、使用回数が尽きかけていたのを忘れていてね。逃げるしかなくて困っていたんだよ。良ければお礼をしたいんだが、先にシグル騎士団の城に行った後で、ぜひ食事なりとおごらせてもらえると嬉しい!」


 お、シグル騎士団にご用事ですか。

 それなら私が欲しいお礼は一つだ。


「でしたら、騎士団の城まで乗せて行って下さいませんか? 私もちょうどそちらへ行くので」


 帰りはてくてく歩いて行く予定だったのだけど、これで足ができた。

 移動が楽になったと喜ぶ私に、商人は「そんなことでいいのかい?」と言いつつも、了承してくれたのだった。

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