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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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123/259

団長様とお茶を淹れてみた

※H28.12.7一部記載漏れがありましたので修正しました。

 そのようなわけで、私はその日、珍しくお客さんが団長様一人だった時間があったので、その辺りのことを聞いてみた。


「団長様、お願いしたいことがあるのですが」


「また何か変なことを思いついたのか?」


 さほど高級でもない白のカップも、団長様が持つと見栄えがするアイテムになるのだからすごいなと思いつつ、私は用件を切り出した。


「いえ、お茶の研究についてなんです」


 たぶん変なことではないと思う。お茶自体が変と言われてしまえばそれまでだけど。


「お茶の作り方を研究してですね、もっと大量生産したいんですよ。で、そのためにはヘデルとドゥルケの採取をしたいのです。沢山。そのために一人で森へ入る許可を頂きたいと思いまして」


「一人でか?」


 団長様はさすがに良い顔をしなかった。


「大丈夫です。無事に魔法も上級まで覚えることができました。魔力もかなり無尽蔵ですし、盾の魔法をかけたまま採取して歩いて、魔物が出たら氷槍とかの魔法で仕留めて歩けば、いけると思うんですよね」


「…………」


 団長様は自分の額を押さえる。


「理論的には可能だろうな。お前の魔力もバカみたいにあることだし。むしろそうなると、フレイを連れて行くと不審がられそうだ」


「そうなんですよね……」


 初級魔法ぐらいならいい。

 討伐者になって、魔力があるのなら、初級魔法ぐらいは使えるようになってもおかしくない。

 でもこの短い期間で、上級魔法まで修めましたと言ったら……さすがに怪しい。一体何のスキルがあればそんなことが可能なのかという話になる。


「城下の町の人が、採取しに行く場所ってありますよね? そういう所へ出かけるのなら、問題ないように思うのですが」


 魔法も使えない人だって市井には多い。そういった人達や子供でも採取をできる場所というのがある。

 周囲を魔物避けの処置をしている場所だ。ある一定の線を越えなければ、まず襲われることはない。たぶんこの周辺なら、騎士団の警戒ラインの内側にあるだろう。


「そうだな」


 団長様もうなずいてくれる。


「あとそのお茶をですね、余ったら売ったりしたいと思いまして。もっといろんな人に、お茶の良さを広めたいんです!」


 ぐっと拳をにぎって主張してみる。不審に思われないようにと思ったそれは功を奏したようだけど。



「広めるのはいいが……。気力の回復だけができる茶として売るつもりだろう。だがお前の茶の場合は、普通の人間が何かを混ぜても平気だという検証をしてからだな」


「あ、そうですね」


 お茶を煎ったりして作ることそのものは、私しかできないのはわかっている。

 でも出来上がった、私の魔力で変化したお茶が、誰かが好きなものを混ぜても変質しないというか、変な魔法効果がでないことは確認するべきだろう。


「急ぐのだろうから、今のうちに確認してもいい」


「え、団長様が?」


 自ら実験に協力してくれるんですかと言えば、立ち上がった団長様に頭をこづかれる。


「飼い主だからな。ペットが何をしていいのかを確認する義務があるだろう」


「……ありがとうございます」


「それにフレイにやらせるわけにはいかないからな」


「? だめなんですか?」


 前に私以外に紅茶を作れないのかを確認した時には、フレイさんがやってくれたので大丈夫かと思ったのだけれど。


「私では不服か?」


「めっそうもありません!」


 団長様がやってくれるなら、それで十分というか畏れ多い。

 でもやると言うので、さっそく団長様と連れだって、台所のある部屋へ移動する。


「ではお茶に好きなものを混ぜて、淹れてみましょう。何になさいますか?」


「そういえば、これを持ってきていた」


 団長様が四角い缶を差し出す。そう言えば今日は物を持ち歩いているんだなと、珍しく思っていたんだった。


「お前にやろう。私が持っていても、イーヴァルに預けて茶を淹れてもらうしかないからな」


「お茶なんですか?」


 開けてみると、ふわっと香り立つ甘く高貴で重厚な香り……。


「薔薇ですね! すごく良い香り……」


 思わずすんすんと香りを嗅いでしまう。ふわふわとした気分になる香りだ。ものすごく高級なお店に来ているような気分になれる。


「昨日のバルカウス伯爵の者が、あいさつ代わりにに持って来たものだ。量があまりないからな。お前が私用で使う分しかないだろうが」


「よろしければ、団長様にご注文いただければお出ししますよ」


「といっても、お前が淹れると他の効果が出るんじゃないのか? それも確かめないとな」


「そうでした……」


 微妙にこの能力、面倒だな。と初めて思った。

 ミルクティーとか飲みにくいし。あ、でも魔力でポーション状態にしているんだから、魔力を抜けばいいんじゃないかな。そうしたら魔法の効果って無くなりそうな気がする。


 まずは団長様に、薔薇の紅茶を淹れてもらう。

 横で私も同時に薔薇を混ぜた茶葉を入れたポットに、お湯を注いだ。

 だけど隣が気になって仕方ない。団長様がお茶を淹れているとか、なんか休日の団長様の姿を目撃したような気分だ。

 そうしてカップに注いで確認。

 もちろんわたしのお茶にはばっちり効果がついた。


《ローズティー。効果:盾の香気、防御に+50。スキル練度+30》


「…………」


 ふくいくとしたローズティーが、武装のポーションになった。いいのかどうか判断がつかないけれど、+30あればかなりいいんじゃないかな?

 そして団長様のローズティーは。


《紅茶。効果:気力の回復+10》


「あ、団長様のは元のまま、気力回復だけです。良かった……」


「お前の紅茶はどうなった?」


「えっと、防御力がアップします。盾の魔法より強いかもです」


「あいかわらず非常識だな」


 そう言われましても、私の魔法はそういうものですので仕方ないです。うん。もっとおかしな効果じゃなくて良かった。

 そのままいくつか実験し、ミルクティーにしても団長様が作る分には気力の回復しかしないことを確認した。

 結果として何杯ものお茶を生産してしまったわけだけど、全部は飲むわけにはいかなかったので。


「え……団長、の?」


「特に怪しい効果はない」


 やってきた五人の騎士さんに、どれを選んでもタダと言って配ってみた。

 真面目な顔で怪しくはないと団長様に言われて、騎士さん達はおそるおそるお茶を引き取って行った。

 あとで美味しかったと言われて、やや満足げだった団長様が、ちょっとかわいと思ったのは内緒だ。

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