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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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パンケーキでソラを呼び出し

 この日の夜、団長様は来ないようだった。

 喫茶店に顔を出して様子を確認したから、もう一度話をしなくても大丈夫だと思ったのだろう。

 万が一のためと思って、いつもの時間を過ぎてもじっと待ってみたのだけれど、大丈夫だったようだ。


「よっし、三枚ね」


 私はホットケーキを作り始める。

 もしも団長様が途中で来た時のため、ごまかし用に五枚焼くことにした。団長様が顔を出したら「味見してください」と言って食べるために私に一枚、団長様に一枚出す換算だ。

 来なかったら明日の私の朝食後のおやつにする。


 五枚をじっくり焼いても、団長様は現れない。

 もう絶対に来ないだろう時間になったので、私はソラを呼び出すことにした。


「まずは精霊召喚……」


 ステータス画面を出し、召喚の項目を出してポップアップを表示。


《召喚しますか?:要おやつ一個 Y/N》


 おやつの必要個数は変わらないようだ、1LVアップしてもあまり変わらないのかな?

 ボタンを押すと、ぽんとゴブリン姿の精霊が卓上に現れた。

 ……2体。


「あ、レベル上がった分……呼べる精霊の数が増えるんだ」


 なるほど……と思う私の前で、ゴブリン精霊二匹はテーブルの上に座って、クッキーを仲良くはんぶんこして食べ始める。


「お願いなーに?」


 まだクッキーを食べてる途中で、精霊の片方が聞いてくれた。あ、口の端にクッキーの粉ついてる。

 指先でちょいちょいと払ってやりながら、私はお願いする。


「ソラを呼んで欲しいの。あともう一人の子は質問が」


「わかったー」


「なにー?」


 私に尋ねられた、膝を曲げてぺたんこ座りをした紫の花のリースをした精霊が言う。これ、何の精霊なんだろう。よくわかんないな。


「ソラのことを王様って読んでるじゃない? ソラは……何の精霊の王様なの?」


 ちらっと疑問には思っていた。けれど次から次へと問題が起きて行ったりして、他のことが気になって尋ねずにいたのだ。

 だけど前回のことで、ソラがどういう存在なのか気になってたまらなくなった。


 ……私と同じように、この先のことを知っているソラは何者?

 破壊される未来のことを知っているのに、私を魔女にしようとするのはなぜ?

 魔女になれれば、色々なことを私の手で解決できるだろうし、ゲームの状況が改変されていても、騎士団の人達を守ることができる。だからもうそこは異存はないんだけど。

 ソラの目的が知りたかった。


 紫のリースをした精霊は「んー」と顎に人差し指をあてて答えた。


「からの王様?」


「から?」


 からっぽの「から」だろうか。ん、だから空……「ソラ」って名乗ったのかな?


「じゃあソラは、誰かの王様ではないの?」


「みんなの王様だよー」


 そして精霊ははいっと手を出す。おそらく続きを聞きたいのなら、クッキーを課金してくださいということだろう。……なんかニュースサイトの購読か、占いの購読みたいなシステムを思い出す。

 クッキーを渡すと、また仲良く二体で分けて食べ始めた。実にかわいい。

 これ、レベルが上がって一度に三体とか呼べるようになったら、三体で分けるのだろうか。綺麗にクッキー割るのが大変そうだ。


「ということは、みんなソラに従って動いているのよね?」


「まーねー。僕達はね」


 んん? 僕達は?


「僕達ってどこまでの範囲?」


「んっとね……」


 答えようとした精霊の口を、横の緑のリースの精霊が塞ぐ。首を横に振られた精霊は、しゅんとして私に言った。


「内緒なの」


 なんとゴブリン姿の精霊にも秘密があるらしい……というか、なんとなく言わなくても察したぞ私。たぶん、ゴブリン姿の精霊だけってことじゃないのかな、僕達って。

 なにせ他に区別する方法が思いつけない。

 しかし課金しても答えられない質問があるとは思わなかった。なんでだろう? ソラだったら全部を答えられるのだろうか。


「……ソラを呼んでもらえる?」


「わかったー」


 精霊二体は一緒に手を上げて答えると、お皿に重ねた三枚のパンケーキに駆け寄る。

 そしてパンパンと手を叩く。


「おやつだよ、みんなおいでー」


 二体がそう言うなり、ぽぽぽぽんと一気に精霊が現れる。


「えっと、いち、にい、さん……」


 思わず数えてしまうぐらい沢山だ。20体はいた。

 色んな色のリースを首にかけた精霊達は、パンケーキをぐるりと囲むように立つと、


「えいっ!」


 とパンケーキに触れる。

 すると一番上のパンケーキが一枚が消え、精霊も光に変わり、気づいたらテーブルの前に少年ほどの大きさの人物が立っていた。

 ゴブリンな外見は変わらず、大きさも前回と同じ。だけど服は、他の精霊と同じように変化していた。ただちょっと、精霊教会の司祭にちょっと似てる服かも?

 雰囲気的にはゴブリンプリーストだ。


 そして私は、なんて言おうかと思った。前回はソラの話を聞いて泣くという、醜態を晒したばかりだ。


「あの、この間はごめ……」


 謝るよりも先に、ソラが口を開く。


「気にしないで。また呼んでくれてよかった、ユラ」


 ソラはそう言って微笑んでくれた。

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