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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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ソラを召喚するために

 翌朝、体調は復活していた。

 長引かなくて良かった……。

 いつもの時間に起き、いつものように朝の支度をする。

 オルヴェ先生の所にお水を持っていきがてら、ご挨拶とお詫びをした。


「気にするな。それより熱は下がったのか?」


 聞きながら先生が、額と耳の下に触れて熱の有無を確認する。


「ま、いいようだな。それでも無理しないように」


「ありがとうございます」


 オルヴェ先生にもお墨付きをもらえてほっとした。よし、今日は開店だ。

 いつも通りにメイア嬢とも会話し、今日はいそいそと喫茶店へ。


「今日はお店やってるのかい?」


 外を移動していると、通りすがりの騎士さんに声をかけられた。


「はい! 今日は営業していますので、どうぞご利用ください!」


「あの甘くないクッキーはまだあるのかい?」


「作りますので、午後にはお出しできます。よろしく!」


 喫茶店に来てくれているお客さん達だ。声をかけられてとても嬉しい。だって開店を待ち望んでもらえているのだろうし、味にもそれなりに満足してもらえているということだろうから。


 よしがんばるぞ、と喫茶店の台所で腕まくりする。

 開店時間から来るお客さんのために、お茶の準備を整えて、足りないクッキーを作るのだ。

 午前中は、お店を開けてすぐにフレイさんがやってきた。


「おはようユラさん。昨日は体調が良くなかったってオルヴェ先生に聞いたんだけど」


 にこやかに挨拶してくれたフレイさんの方は、朝から疲れた様子がうかがえて私はぎょっとした。


「おはようございます。私はちょっと疲れてただけでしたが、フレイさんこそ大丈夫ですか?」


「え? ああ、たぶん少し寝不足だったからだと思うな……。ごめんね、むしろ心配させたみたいで」


「いいえ。どうぞお茶を飲んで行ってください。気力が少しでも回復したら、すっきりすると思いますし」


 私はクッキーを成形したものをオーブンに入れておき、普通の紅茶を淹れてフレイさんに出した。

 お茶を飲んだフレイさんは、ほっと息をつく。


「本当に、ユラさんのお茶は不思議だね。効果があるとわかっているからか、回復する分よりも効いている気がするよ」


「そう言っていただけて嬉しいです。フレイさんは今日はお休みなんですか?」


「連続で出た後だからね、午前中は休ませてもらうことにしてる」


 休みだからだったのか、と私は納得した。フレイさん、いつもきっちりと服を着こんでいるのに、今日はコートも羽織らずにいるので、不思議に思っていたのだ。


「そうしたら、お昼まで少しお休みになったらいいですよ」


 まだ二時間ぐらいは、昼食時まで休めるはずだ。部屋に帰った方がいいと勧めると、フレイさんはうなずいた。


「そうだね。ユラさんの無事な様子も確認したから、大人しく休んで来よう」


 お茶を飲み干すと、フレイさんは私の肩を叩いて喫茶店を出た。

 ユラ係のフレイさんとしては、自分の体調の悪さを押しても様子を確認したかったのだろうか。


「昨日、疲れて早々に眠っちゃったって聞いたせいだろうな」


 返す返すも、昨日寝過ぎたことが悔やまれる。おかげで全快したけれど。


「目覚まし時計があったら、こんなことにならないんだけど。どこかにそんな魔術道具売ってないかな……」


 今度探してみようと思いながら、クッキーの様子を見る。

 よしよし、順調に焼けている。

 そして二段にしているうちの一段は、ゴブリン姿の精霊がふーふーと全体に行きをふきかけていた。


 あ、ゴブリン精霊の衣装がなんか変わってる……。

 前のもこもこ衣装から、人間の服みたいな茶色いチュニックと白いズボンにベルトをしているような格好。小人っぽい。

 精霊にもある程度影響があったらしい……。


 とにかくこれでクッキーは数を揃えられるだろう。

 人間用も、精霊用も。


 でも今回はそれだけじゃない。


「新しいおやつを……作る!」


 昨日ゆっくり眠ったからか、今朝ふっと思い出したのだ。

 お茶の材料が予測できるのなら、おやつの材料も予測できないだろうか? と。

 そうすればソラを呼ぶのに、クッキーの量がインフレしていくことはない。はず。


 私は作った《精霊のおやつ》をステータス画面で見る。名前が表示されたところで、文字の横に【!】のボタンが出た。


「やった!」


 さっそく押すと、ポップアップが出る。


《もっとふわふわっとしたものを作ろう!》


「ふわふわ?」


 すごい曖昧なヒント……。とにかくクッキー以外のものを作れと言うのはわかった。


「ふわふわ……」


 唸って考えた末に、私は楽に作れるものを試作してみた。

 小麦粉、ふくらし粉、卵、牛乳、砂糖少々。おおよそのものはクッキーと同じ材料だ。分量が違うそれを混ぜてとろりとしたところで、すりつぶした紅茶の葉を混ぜる。

 そしてフライパンにバターをひいた上に、流しこむ。


 少しずつふくらんでいくそれに、ゴブリン精霊がかまどから現れて、手に持った白い煙をふっと吹いてかけた。

 煙はすぐに消えてなくなったし、フライパンの上のものに変化はない。

 出来上がったのは……。


「あ、けっこう良い香り。紅茶パンケーキ、これでどうかな?」


 簡単に作れることを優先してみたんだけど、ソラを呼べるといいな。

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