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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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レベルアップは少しだけ?

「魔石が、消えたんですか?」


 団長様がうなずく。


「ある程度魔物の掃討が終わった後に、フレイが確認した。その時には、あったはずの場所は小さく陥没した跡だけになって、魔石は見当たらなかったそうだ」


 フレイさんは、私と一緒に魔石の場所を確認している。だから間違うはずがない。

 だとしたらどこに……。


「魔法が壊れてしまったら、魔石も消えるような魔法陣だったんでしょうか」


「それなら納得できそうだが……あまりそれも考えにくいな。魔石が消えることはまずない。魔法が破られてその核である魔石に影響が及ぶとしたら、魔石が壊れているはずだ。イーヴァルが破片もないと言っていたから……」


 そこで団長様が一度言葉を止め、少し考える時間を置いてから言った。


「持ち去られたのか、万が一の場合のために、魔石を転移させる魔法も組み込んでいたのか」


「転移の方が、ありそうですね」


「そうだな……」


 でなければ、騎士団の誰かがこっそりと持ち去ったことになってしまう。

 ……団長様もその可能性を考えたんだと思う。

 だから言うかどうか迷って、少し間が開いたんじゃないかな。できれば身内を疑いたくない。けど、団長様の心の中では、一応その可能性も消えてはいないから。

 最終的に、私を不安がらせないような内容のものを選んだのだと思う。


「お前の方はどうだ? 魔力を吸収して、何か変化はあったか?」


「あ、実はまだ……」


 休むことに集中していて、すっかり確認を忘れていた。

 団長様も言った後でそのことに気づいたようで、少しばつの悪い表情になった。


「そうだな、休む方が先だった。明日以降、体調が回復したら知らせるようにな」


 団長様はそう言って、部屋から出て行った。


「魔石がない……」


 誰かが奪ったにせよ、魔法を使った主が自分の手元に来るようにしていたにせよ、それでは私、魔力をあまり取り込めていないんじゃないだろうか。

 完全な魔女になる道は遠ざかった気がするけれど、せっかく決意したのに、ちょっと拍子抜けだ。

 とりあえず眠る前より寒気も和らいでいるので、食事をして、ステータス画面を開いてみた。


 ユラ・セーヴェル/紅茶師

 生命力(HP)/魔力(MP)……700/100000


 攻撃力………5  魔法攻撃力………… 650

 筋力…………5   魔法スキル練度…… 750

 速さ…………9   剣技スキル練度……   0

 物理防御……6   魔法適性…………10000

 魔法防御……500 精霊適性…………10000


 取得能力

 紅茶師……スキルレベル14

 魔女 ……スキルレベル20


「あ、でもちょっと上がってる」


 魔女のレベルも20になった。それなりに魔力を吸収することで、変化はあったみたいだ。

 紅茶師のチャンネルは増えていないけれど、精霊操作はLV2に、精霊召喚がLV6になっている。


「今まで変化の幅が大きかったから、小さい違いしかないのが気になるけど……」


 それとも、やはり魔石分の魔力を手に入れられなかったからだろうか。


「ソラに聞くしかないか」


 別れ際に泣いちゃったのが、今思えばたいへんに気まずい。けど、聞ける相手はソラしかいないので、いたしかたない。

 ステータス画面を閉じると、ふとお茶が飲みたい気がした。

 体調もそれほど悪くはないので、食器を下げるついでに階下に降りてお茶を淹れることにする。


 予想より夜遅い時間だったようで、オルヴェ先生達の食器は既にいつものところにあった。

 明日になったら謝っておかなければ。


「団長様にも心配かけちゃったな」


 オルヴェ先生に教えてもらって、様子を見に来てくれたんだろう。まるで家族みたいに気遣ってくれて、とても嬉しいなと思う。

 何かお礼を考えよう。

 そう考えながら台所の扉を開けようとしたところで、私はふっと洗濯場の窓の外が気になった。

 何か白い影が見えたような。


「……でも、この世界で幽霊ってアレだもんね?」


 魔物のゴーストとして、立派に倒せる相手である。対処法があると、あまり怖いという気持ちが起きない。外見さえグロくなければ、だけど。

 だから人がいるのだろう。

 私はなんとなく、自分の持っている明かりを隠して、窓に近づいた。

 そうして見えたのは、建物の外に立っているメイア嬢の姿だった。


「……」


 誰かと話しているようだ。口が動いているから。

 表情ははっきりと見えないけれど、月光でうっすらと見える体型も金の長い髪も、間違いなく彼女だろう。

 相手は近くにいるみたいだけど、壁に背をくっつけるようにしているのか、全く見えない。でもメイア嬢は、騎士団に知り合いがいただろうか……と考えて、思いついたのが団長様の姿だった。

 イーヴァルさんも知っているようだった。


「どっちか……かな」


 その二人なら、人目を忍んでメイア嬢に会うのも理由はわかる。

 もしメイア嬢が引き取られた公爵家に関係する人がいたら、交流する姿を見られると、面倒なことになってしまうから。夜なのも、万が一に見つかってもごまかせると考えてのことかもしれない。


 やがてメイア嬢は話が終わったのか、建物の中へ戻って行く。

 扉を開ける音、そして階段を登る軽い足音がしたので、間違いない。


 一体誰が相手だったのか……きになったが、結局相手の姿は見えなかったのだった。

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