表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/259

クー・シーにお茶の出前です!

 団長様から本を買ってもらえることが決まった。

 やった。どうやってフレイさんの目を盗んで、こっそり買いそろえようかと思っていたんだ。


 買ったのを知られたらこの上なくフレイさんに警戒されそうで……。

 戦闘に混ざる気なんですかとか(その通り)、こっそり単独行動するつもりですか(精霊が絡んだらそうなります)と問い詰められて、答えられない私の姿が目に見える……。


 なにせ魔女としての力集め、これがいつまで続くかわからない。

 たぶん今回だけで終わりではないと思う。だってまだ魔女のレベル15だし。レベル設定的にまだ初歩の初歩だ。


「なのになぜ、40レベル帯のクー・シーと関わっているのか……」


 謎だけど、ゲーム通りに上手くいかないことはわかっているので、諦めた。

 というわけで、朝からお茶づくりをしなくちゃいけない。

 でも朝はヘルガさん達は街から来ていないので、メイア嬢のお世話もしなくては。

 幸い、それを加味して出発時間は余裕を見てもらっている。


「おはようございます、メイア様」


 ノックして部屋に入ると、貴族の家の召使いになった気分が味わえる。

 元のままのユラだったら、どんなに食い詰める状態でもそんな真似はできなかっただろう。大人しくひっそりと、家の奥で飢え死にを選んだかもしれない。


 中にいたメイア嬢は、既に起き上って衣服を変えていた。今日は薄紅色のドレスだ。可憐なメイア嬢にはとてもよく似合っている。


「お顔を洗うお水はここに置きますね。朝食は今持って来ますから」


「ええ、ありがとうユラさん。あの……」


 メイア嬢は何かを聞こうとしたけれど、その時は「いいえなんでもないわ」と笑っていた。

 けれど朝食を持って行った時、ぽつりと聞かれた。


「ユラさんも、何かの事件に巻き込まれて騎士団に来たのだと聞いたわ。あなたの方は、体は大丈夫なの?」


 どうやら、私が昏睡状態で騎士団の城に運ばれたこと、それから居候になったことを誰かが話したみたいだ。

 似たような状況だと知って、気にしてくれたんだろう。


「もう、だいぶ前のことですから。体は良くなってますので心配いりませんよ。でなければ仕事もしていられませんから。あ、そうでした。下膳はヘルガさんが来た時にしてもらいますので、私が来なくてもそのままにしてくださいね」


「それでは」


 と私は言って、早々にメイア嬢の部屋を出る。

 そのまま一階で、今度はお茶の準備だ。

 お湯を沸かす時間が少しかかるけれど水筒に詰めるだけなので、導きの樹の精霊のために、一樽分用意した時よりもずっと楽だ。


 水筒を準備したら、それを持って自分の部屋へ。

 竜に乗るためにきちんと上着を着て、スカートの下にもズボンをはき、ブーツを履いて水筒を入れた鞄を斜め掛けにしたら準備完了。一応、万が一の場合を考えて、精霊のおやつになるクッキーと、お金も少々ポケットに入れておく。

 森で遭難しそうになっても、強い魔物に遭遇しなければこれで助かるはず、のセットだ。


 準備を終えて私は外へ出る。

 団長の部下だという騎士さんが、私を待っていてくれた。

 連れられて広い中庭へ行くと、既に竜や飛びトカゲと、騎乗する騎士達が待機している。


「ユラ、おいで」


 言われて、私は団長様の元へ駆け寄った。


「宜しくお願いします」


「それはこちらの台詞だ。乗せるぞ」


 と言って、団長様は私を小脇に抱えて竜に飛び乗る。

 そして一行は空へ飛び立った。

 向かう先は森の東。魔物が集まる地点だ。


「これで解決するといいんですが……。導きの樹の時と同じことになったらどうしましょう」


 問題は、クー・シー達が魔法陣を壊した後だ。溜まった魔力がどうなるのか不安だ。また竜巻みたいになって、みんなに襲いかかったら困る。


「あの時と同じようなことになった場合は、一度地上に降りる。その方がお前も飛び降りなくて済むだろうし、隠すにも弾くにも、対応しやすい。念のため、クー・シーは魔物が集まる地点から少し離れたところに誘導して、茶を与えてもらいたい」


「わかりました。その方が皆さんも安全ですよね」


 そんな話をしているうちに、目的地に到着してしまう。

 近くには、既にクー・シー二匹がいて、近くに来た魔物を背中から羽のように生えて伸びる蔓で締め上げ、お食事なさっていた……。ごはんの時間でしたか。

 彼らはすぐに私達に気づく。


《クー・シーB:あ、飲み物きた》


《クー・シーA:人間、こっちだ》


「お茶、お届けにまいりました」


 相手が人間で建物の中だったら、レストランみたいな受け答えなんだけどなと思いつつ、私は団長様に、クー・シーから少し離れたここで滞空してもらった。

 クー・シーに近づいてもらうことで、現場から少し離れることができた。


「今日は竜に乗ってますが、近づいても驚かないでくださいね」


《クー・シーA:大丈夫。昨日と同じお茶っていうのと同じ匂いする》


《クー・シーB:早く早く》


 クー・シーBはあーんと口を開けて上を見た。

 なんだか大きな犬を飼い慣らした気分になるけれど、相手は魔物だ。緊張感よ戻ってこい。

 一度自分の頬をつねってから、予め魔力を込めておいたお茶を開け、クー・シーBの口に向かってお茶を注ぐ。


 竜はさすがにクー・シーを怖がらないようで「おう、また会ったな」ぐらいの視線を向けつつ、かなり近くまで降りてくれていた。おかげで前回よりも、水筒を気楽に傾けられる。

 クー・シーBはごっくんと、体に比べてささやかすぎる量のお茶を飲むと、ぶるぶると体を震わせた。水を飛ばす犬みたいだ。

 団長様が竜を離れさせる。


《クー・シーB:んんー! これいい! あのめんどうな魔法にとられた魔力が戻って来た。魔物食べるより効率いいね!》


《クー・シーA:じゃあちょっと、あの邪魔なの壊しちゃおう》


「団長様、クー・シー達が魔物が集まる魔法を壊しに行くみたいです」


「約束通りか、良かったな。全員、騎乗したままそこで待機!」


 団長様も竜をフレイさん達の側に寄せるようにして高度を上げ、クー・シー達の様子を見守った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ