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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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魔物にも紅茶はいかがですか?

※ちょっとタイトルいじりました。

 クー・シーは、妖精猫ケットシーの犬版みたいなものだ。

 確かCu sithという綴りだった。シーだからチャンネルCってわけじゃない。

 もちろんゲームで登場するクー・シーが前世のそれと同じような存在ではないだろう。外見とかも犬で緑なの以外は違うようだし。


 でもこのステータス画面は私にしか見えない。ということは、私の記憶や想像の範囲内で設定されると思う。

 ゆえに英語表記でもアリということで。


「すいっちおーん」


 精霊のささやきに、私はチャンネルCを押す。

 すると画面に会話が表示された。


《クー・シーA:なんかいい匂いするんだよね》


《クー・シーB:おいしそう?》


《クー・シーA:それよりいいもの。魔力の匂い》


《クー・シーB:やっぱりおいしそうなんじゃないの?》


 聞いてから二匹を見ると、ふんふんと嗅ぐような仕草をしている方と、牙をむいてみたり舌なめずりしている方と、反応が少し違う。

 たぶん、間違いない。


《クー・シーA:とりあえず捕まえよう》


《クー・シーB:よし捕まえて魔力を取り込もう》


 ひいっ! と悲鳴を上げそうになったけれど、次の言葉に目をまたたいた。


《クー・シーA:魔力を取り込めば、このおかしな魔法も壊せるものね》


 魔法を壊せるって、もしや魔物達が集まっているこの魔法のこと?


「待って待って!」


 慌てて制止すると、歩き出そうとしていたクー・シー二匹は驚いたように立ち止まった。


《クー・シーA:今人の声が》


《クー・シーB:エサの声がした!》


「あなた達、もしかして魔物を集める魔法を壊したいの? 邪魔なのよね?」


 私は声が届いて、しかも意味が通じているらしいのでさっそく話しかける。急いで話さないと襲われそうだから。


「ユラさん……?」


 当然、私の後ろにいるフレイさんがいぶかしんだけれど、今はそれどころじゃない。

 上手く行けば、本当にお茶で解決できる。


「魔物と話が通じるみたいなんです。どうにか話がつけられるかもしれないんで、少し見守っててください」


 私はフレイさんに小さな声でそう言うと、ステータス画面を睨む。


《クー・シーA:魔法は壊したい……》



《クー・シーB:邪魔に決まってるよ》


「魔力をあげれば解決できるのなら、わけてあげる」


 私の言葉に、二匹のクー・シーはやや悩むように頭を揺らした。


《クー・シーA:魔力? 沢山必要だけど人間が用意できる?》


《クー・シーB:魔力が食べられるならそれでいい。僕等もだいぶん吸われた。ムカつく、壊す》


「なら、この飛びトカゲを包囲するのを止めてもらえる? その後あなた方の頭上まで行って、問題のものを投げ落とすから、受け取って」


 クー・シーの一匹が長い尻尾を揺らす。


《クー・シーA:人がどうして、そこまでする?》


「壊してほしいから。それが叶えばいいの。代わりにお互いに手出しはなし」


《クー・シーA:とりあえずわかった。魔力くれるなら約束は守るよ》


 私は一度チャンネルを切った。


「フレイさん、団長様達に攻撃させないようにしてください。約束を守ってくれるなら、クー・シー達が包囲を解いてくれます」


「ユラさん……」


 戸惑いながらも、フレイさんは私がクー・シー達と会話をしていたらしいことを見ていたからだろう。団長様に手を出さないように、待ってくれと合図を送ってくれた。

 手の振り方で伝えられるみたい。そういう合図を決めているんだろうな。


 団長様達は隊列を組んで何かをしようとしていたけれど、クー・シー達に向かって移動するのを止めてくれる。

 やがてクー・シー達が森の樹を操ることを止めた。

 包囲網が解かれていくのを、フレイさんが信じられないような顔をして見ている。


「ユラさん、君は……」


「フレイさん、クー・シーの前へ移動してください。約束が守られないとわかったら、襲いかかってくるかもしれませんから」


「……わかった」


 危険ではあるけれど、今のところ私の言う通りに事態が進んでいる。だからフレイさんも言う通りにしてくれた。

 ややクー・シーから距離をとりながらになったけれど。

 そこで再び彼らに話しかける。


「これからお茶をばら撒きます。それを飲んでみてください」


《クー・シーA:お茶?》


「あったかい色水です」


 魔物にわかりやすいように言いかえる。色水と言うとなんか寂しいけれど、理解してもらえることを優先しなくちゃ。

 私は水筒を抱きしめ、中のお茶が温まることを想像しながら魔力をそそぐ。

 蓋を開けると、ほわんとした湯気が立つ。

 安全なものだと示すため、私は水筒に口をつけて飲んでみせた。うん、大丈夫。カップに注いだお茶はきらきらしてるし、ぬるいままだ。


「どっちか一匹、口を開けてください。そこに向かって落とします」


 そう言うと、二匹は顔を見せ合ってから、一匹が口を開ける

 私はフレイさんにもう少しだけ高度を下げてもらう。飛びトカゲがものすごく怯えていたけれど、それもフレイさんがなだめてくれた。

 そしてクー・シーの口に向かって水筒を傾けた。


 お茶が少し拡散しながら落下していく。

 でも高度を落としたおかげで、大半はちゃんと片方のクー・シーの口の中に入ったようだ。

 水筒を傾け終わると、飛びトカゲは高度を上げた。

 そして飲んだクー・シーは、


《クー・シーA:んま。ちゃんと魔力がある》


《クー・シーB:えええ、そうしたら僕もほしかった》


 片方のクー・シーはとても残念そうだ。


《クー・シーA:じゃあもらおうよ。二人じゃなきゃ壊すの難しそうだし》


《クー・シーB:だよね。僕にもほしいんだけど。そしたら約束通り壊してあげる》


 なんと、二人力を合わせないと壊せないみたい。とはいえ、もう水筒で持って来た分は使ってしまった。


「持ってきていたのは今ので全部なんです。明日、もう一度ここへ来て渡すので。それでいいですか?」


《クー・シーA:うーん明日ね。これだけ魔力がもらえるなら待つ》


《クー・シーB:いいなぁ、いいなぁ》


 飲めなかった一匹は、拗ねたように近くにいた魔物を前足で踏み、後ろ足で蹴り上げた。


「あの、フレイさん……」


 私はフレイさんを振り返った。フレイさんは実に微妙な表情をしていたけれど、言わねばなるまい。


「ご注文を受けました」

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