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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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魔女かどうか確認をとろう

 翌日も、私は朝晩だけメイア嬢のお世話をして、昼は喫茶店のお仕事をする。


 メイア嬢の体調は特に問題ないようだ。

 なにせ相手はお嬢様なので、どんな話題を振っていいのかもわからない。

 ので、メイア嬢の話を聞くか、質問を受けるのが主になってしまう。


 メイア嬢は、貴族令嬢に何かあってはいけないので、オルヴェ先生が付き添える時だけ外へ散歩に出るくらいで、特にやることがないらしい。

 昨日、ヘルガさんから刺繍の道具を手に入れたらしく「これで少しは退屈がまぎれます」と微笑んでいた。


 あとはメイア嬢が尋ねるまま、紅茶のことや、騎士団のお城の中で働いていることを口にする。

 まぁ、どうして紅茶が作れるようになったのかとか、そういうことは全て曖昧に誤魔化す。おかげで不思議と好みのお茶だけ作れる、すごく地味な魔法使いということで、メイア嬢の中でイメージが固まってくれた。

 よかったよかった。


「それでは、お城の中で喫茶店をするために、討伐者の登録をなさったのですか?」


「そのようなものです」


 現状、そうとしか言えない状況になってます。

 だって実験の被害者だって言えないから……。

 貴族令嬢(もしくは王族)のメイア嬢なら、研究所行きを免除してもらえるだろうから、彼女の方は被害にあったと普通に話しても問題ないのだ。


「わたくしも喫茶店にお邪魔したいですわ」


 きらきらと光が散りそうな微笑みを浮かべたメイア嬢。この美しい人が喫茶店に来たら、一体どんな混乱が起こるのだろう。

 普通にお茶を飲みに来た騎士さん達が、びっくりした後で、メイア嬢に目が釘付けになる様を観察してみたい気もする。


「オルヴェ先生が許可してくださるといいですね。でも、あまり貴族のお嬢様に来ていただけるような、綺麗さではありませんから……」


 喫茶店の壁は、お城の石組むき出しの灰色。庶民の飲食店なら問題ない、温かみがあるけれど簡素な木の机に椅子。

 ティーマットなんかは私のお手製で、丁寧には作ったけれど、売り物として褒めてもらえるような出来かどうかは自信がない。

 というわけで、やっぱり曖昧な返事になってしまうのだった。



 そんな日々を過ごし始めて二日後のこと。

 ようやく人の目を盗める時間を得た。

 フレイさん達が魔物の発生を受けて出動したからだ。イーヴァルさんは、喫茶店に常駐するわけではないので、今こそソラを呼び出しやすいだろう。


 そもそも、最近は毎日のように団長様が夜やってくるので、夜のうちにこっそり呼び出して……ということができないのだ。


「まぁ、ペット的に信用ないというか、一日一度は様子を確認してくれてるんだろうし」


 ありがたいけれども、こそこそできないのだ。

 ソラに魔女のことを聞く時に、前世の知識まじりで尋ねてしまったらね……、またそこも説明しないといけなくなるし。そうしたらまた怒られるだろうし……。


「さすがに荒唐無稽だって言われるよね」


 信じてくれなくて、色々面倒そうな気がするのだ。というわけで、一人でソラを呼び出したい。

 まずはクッキーをおなじみかまどの精霊さんに与えてみる。


「食べませんか? ……っと」


 ステータス画面を開いてクッキーを選択。するとでてくる「使用する/しない」のボタンを押す。

 トカゲ姿の炎の精霊は、炎の中からひょこっと出て来て、クッキーを受け取った。

 ぺこっとお辞儀をしたトカゲ姿の炎の精霊は、クッキーを抱きしめたまま炎の中に引っ込んで、姿を消してしまった。


「え、あれれ?」


 クッキーをその場で食べることもない上、消えちゃった!


「まさかゴブリン姿の精霊限定……?」


 私の謎の紅茶魔法と同じで、ゴブリン姿の精霊限定のものなのだろうか。

 とすると、どうにかしてゴブリン姿の精霊を探さなくてはならない。


「…………」


 私は紅茶のストックを作ろうかと考えた。

 あれを作っていると、どこからともなくゴブリン姿の精霊が出てくるのだ。召喚方法がよくわからない以上、これが一番手っ取り早い。


「でも召喚LV5ってあるんだから、何か魔法でぱっと呼び出せたらいいのになぁ」


 もしかすると方法があるのかもしれない。

 一応、ステータス画面で魔女スキルの技の詳細を開いて見る。

 ぺいっと召喚と書いてある文字を押せば、


「おおおおお」


 ポップアップで表示が出た。


《召喚しますか?:要おやつ一個 Y/N》


「しますとも!」


 Yを押す。すると、ぽんとゴブリン姿の精霊が、目の前の卓上に現れた。


「呼べた! すごい私!」


 ばんざーいとしていると、ゴブリン精霊もばんざーいと両手を上に挙げる。ノリがよくて嬉しい。

 急いでクッキーをあげると、彼は「おねがいなーに?」と聞いてくれる。


「ソラを呼んでくれる? おやつならここにあるから」


 クッキー10枚を盛った皿を精霊の方に少し押してやると、


「ひーふーみー……うーん。王様を呼ぶには20枚いるよー?」


「え、値上がり!? 毎回呼ぶごとに枚数増えて行くの?」


 衝撃の倍額要求に驚いて言えば、精霊は「んーん」と首を横に振る。


「ユラがあたらしい力、もった。だから王様つよくなった。だから」


 てことは……私の能力が増えると、ソラもランクアップして呼び出すのに料金がかかるようになるってことかな?

 それなら、しばらくは20枚のままってこと? 何かクエストクリアしない限り。

 でも、と思いながらクッキーの皿を見る。

 お皿の上に10枚。予備に作っておいたのが5枚。全部足しても足りない。


「今日は無理か……」


 ということで予定を変更。


「メイア様が魔女かどうかわかる?」


 直球でゴブリン精霊に尋ねた。


「んー、まだだとおもうー」


「なるほど」


 実験は受けたけれど、魔女ではないと。

 ほっとした私は、それを団長様に報告しようと考えたのだった。

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