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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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File.23 忠犬の初めてのおつかい作戦<1>

 「うわっ!!」


 田丸に蹴り飛ばされた大祐は、扉を通り抜けて結界の内側へと転がり込んだ。中に入るとむわっとした熱気が体にまとわりつく。空気も熱く呼吸に支障が出かねないので装備品のポーチから特別性のバンダナを口の周りに巻く。


 (少しはましか。沙紀さんの場所はここから100メートルくらいの場所か。にしてもヤバいな)


 都心にある緑あふれる総合運動公園。普通なら憩いの場所になるが、今回はそれが仇になっている。そもそもこの公園はいくつかの出口があり、沙紀がいる場所は木が多くここからそこへ行くにはちょっとした木立が広がる道である。


 「とにかく走るしかないか」


 大祐は覚悟を決めると地図で最短ルートを確認すると駆け出した。その後ろ姿が消える頃、誰もいないはずのその場所に男女の姿がスッと現れた。


 「あれは大丈夫なのか?」


 「さぁ? 能力的には駄目だろう。だが、あの子に必要なのはそういう人間ではない」


 「では、若造のフォローは私が引き受けよう。火の始末はお前に任せた」


 現れた時と同じように女は姿を消す。面倒な事を自分に押し付けた相方にやれやれと首を振ると男は燃え盛る火の中へと姿を消していった。


 沙紀がいる場所に近づくに連れて、周囲の景色が変わってくる。それまでメラメラと燃え上がっていた赤い炎がだんだんと見慣れた青い炎へと変化していく。赤い火の粉が舞う場所を駆け抜ける時は、何か所かいつもの危険を知らせるシグナルが体を走ったが、いつも通り勘に従ったせいか特に危険なことはなく、青い火の粉が舞う空間に入ってからはそれはなくなった。


(ふむ、本当に勘だけは良い若造だな)


 「誰だ!!」


 突然響いた女性の声に大祐は警戒して周囲の確認を行う。しかし、誰もいない。


 (上だ、上)


 自分をからかうような声音にムッとしつつ、上を見上げると頭上に足を組んで座り浮かぶ女性の姿がぼんやりと見えた。黒髪の女性で純白の着物に紅い袴を身に着けている、但しその姿はぼんやりとしており実態ではない。


 「透けてる? もしかして、幽霊?」


 (まったく、能力者のくせに怯えるでないよ。私は、そうだな…………あの子の守護霊とでも思えばよい)


 「あの子って、沙紀さんですか?」


 (そうだ。ここまではそなたの勘でどうにかなるが、ここから先はあの子の警戒区域に入るからな。そなたが無鉄砲に走り回るとあの子を刺激しかねない。その結果、そなたが消し炭になったら悲しむのはあの子だからな。私としてはそなたの命などどうでもいいが、あの子が悲しむような結果にはなってほしくないのでな)


 にっこりと微笑みながら語る女性の言葉に大祐は全身から冷や汗が流れる。この女性は本当に自分のことはどうでもいいのだということが、その言葉と態度からひしひしと伝わってくるからだ。


 (そなたの守り石をよこせ。私が力を加えてやろう)


 「まっ、守り石とはこのことでしょうか?」


 装備品として支給された能力補助の石を首元から取り出して見せると、女性は大きく頷いた。そして右腕をこちらへと伸ばし、手のひらを大祐に向ける。その手へ置けということだろうが、渡すことをためらってしまう。


 (この人を信用してもいいものだろうか。それにこの人はきっと人であったものではない。じゃあ、何なんだ)


 大祐が内心どうしようか葛藤していると、さっさと渡してこない大祐にいら立った女性が業を煮やして常に身に着ける為に通していた鎖を引きちぎって持っていってしまった。


 (遅い! あの子の犬風情が疑問を持つでない!)


 「いてぇ! 何するんですか?」


 大祐の叫びを無視して女性は、石を握りこむとそこに紅い炎が燃え上がる。そしてその炎がなくなると石の色が紅く変わっていた。そして、満足したのか頷くと石を大祐にめがけて投げつけてくる。


 (一時だが、私の加護を加えておいた。あの子の元へたどり着くまでぐらいは、その身が焼けることはあるまい。急げよ。忠犬とされるか駄犬とされるか、そなたの頑張り次第だ)


 そう言うと女性は現れた時と同じように姿を消して去っていった。


 「何だよ、今の! でも、暖かい。悪い存在ではないのか? あー、もう今はとにかく沙紀さんだ」


 大祐はもう一度石を身に着けると気合を入れなおして再び走り出した。


  



 

 

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