File.23 忠犬の初めてのおつかい作戦<2>
炎と火の粉が舞う中を大祐は、地図で現在地を確認しながら沙紀へと続く最短ルートを選らんで走った。途中何度か炎に巻かれそうになったが、先ほどの女性が力を与えてくれたおかげか自分の体に触れる前に炎の勢いが弱まり通り抜けることが出来ている。
(加護っていってたけど、すごいな。本当に助けられている)
「沙紀さんがいるのは、入口近くのベンチか」
恐らく、結界を張る為に公園内に移動したのだろう。沙紀の時計のGPSの記録からそれが分かった。最初にいた歩道橋だと周辺の建物や道路を走行する車への被害が出ていたかもしれない。能力の暴走を抑えながらそこまで判断した沙紀に敬服する。
「さて、最短ルートはあの木立の道を抜けることなんだが。あー、燃え上がっているな」
それでもその道が最短ルートだ。多少の火傷は覚悟して走り抜けるしかあるまい。そう決意した大祐は一呼吸つくと走り出したその時だった。目の前に見えない壁が現れて軽くはじき飛ばされ、尻餅をつく。
(この馬鹿犬が! さっき私が言った言葉を覚えていないのか。そなたが消し炭になったらあの子が悲しむと言っただろうが!!)
「痛っ! でも、あの道が一番の最短ルートなんです!!」
(それで、たどり着く前に消し炭になったら意味がないであろうが!)
「でも、他の道だと駄目なんです! 俺の勘がそう言っているんです!」
大祐の頑な態度に女性は、大きく溜息をつく。確かにいくらあの子が生みだした炎だとしてもあまり長時間さらすのはまずい。色々な意味でも。ならばこの脳筋馬鹿犬にかけるしかないか。
(仕方ない。私があの炎の壁の中心に道を開いてやろう。だから、死ぬ気で走れ。あの腕輪もすぐに出せるようにしておけ。視界にあの子が目に入ったら大きい声で名を呼べ。その声に気づけばあの子がどうにかするだろう)
「ありがとうございます。助かります!」
(うーん、そなたのその性格は単純明快でとても良いが、他者を信じすぎてあの子に迷惑をかけるでないぞ)
「単純明快。いくら俺でもそう簡単に人を信用しませんよ。ただ、あなたの場合は本当に沙紀さんを大事に思っている。それが分かるからこそですよ」
(ふん、犬風情が生意気な。まぁ、良い。…………いざとなったら私が消せばいいだけだ)
「消せばいいって、本当に物騒な守護霊様ですね」
(さぁ、道を開くぞ。あの子の元まで駆け抜けてみせよ)
「はい!」
女性が炎へと向き直り、右手を振ると炎の中心に人一人分の道が出来上がった。道が出来上がったと同時に大祐は何も疑うことなくその道を駆け抜けていった。その迷いのない姿に女性は苦笑するとまた姿を消したのだった。




