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源はソファに座りながら全面ガラス窓の外を何も考えずただぼんやりと眺めている。今日の狸塚の態度や慈鳥の体調のこと。あと、あの得体の知れないような感覚。考えることが沢山あるが頭が働かない。何か二人の間で共有されていることがあるのは薄々気がついている。そして二人も源が気がついている事も分かっている。でも、打ち明けようとはしない。知りたい様な知りたくない様な、でも知らなきゃいけないことだと思う。なんとなくだけど。
考えているようなぼんやりしているようなそんな感じで寛いでいると「あのぉ」と女の人の声が背後から聞こえた。振り返るとフロントにいたお姉さんが困ったような笑みを浮かべながらこちらを見ている。
「恐れ入りますが他のお客様もおりますので長時間のご利用はご遠慮していただきたく。」
その言葉に左を見て右を見て、お姉さんを見る。源の周りだけ人がいない。遠巻きにされている事に気がついて、慌てて立ち上がった。
「すぐにどくっす。」
キャリーケースの柄を掴み、エレベーターホールへと向かおうと歩き出したがピタリと足を止めて振り返った。
「近くにコンビニとかないっすか?」
へらりと気の抜けた笑みを浮かべながら後頭部を掻く。バスの中で食べたきり何も食べていない。忘れていたが源はお腹が空いていたのだ。
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どっさりとコンビニの袋をデスクに置くとそのまま大の字でベッドに倒れ込む。天井に埋め込まれている等間隔に配置された照明を見つめた。
コンビニが割と近くにあって良かった。田舎は都会みたいにコンビニは沢山ないから途方もない距離を歩くかなと覚悟はしていた。けど、森や車がたくさんある割には結構都会なのかもしれない。駐車場の面積がコンビニの三倍以上あったけど。
『君、そんな皺くちゃな格好で仕事する気ですか?』
体を勢いよく起こすと辺りをキョロキョロと見回した。誰もいない。しばらくベッドに腰掛けたまま頭の中の記憶をぐるぐると辿っていく。
あぁ、思い出した。この前、狸塚に言われた言葉だ。スーツのまま寝て、そのままの格好で出社したら汚物を見るような目で言われた。
いけない、いけない。問題を起こしたら怒られる。いや、これは問題なのか?でも怒られるのは分かりきったことだから、いそいそと上着とスラックスを脱いでベッドに投げた。ワイシャツにパンツ、だらしない格好に頭の中の狸塚がぶつくさ言っている気はする。が、今は源しかいないのだから無視する。クローゼットらしきところからハンガーを取り出して、スラックスを吊るす。上着も一緒に掛けてクローゼットにしまった。
そしてコンビニ袋を手に持ち、ベッドの中央に座ると戦利品を並べていく。カツ丼に唐揚げにポテチにカップラーメン。あとはおにぎり三つ。少な過ぎたか?まあ、足りなかったらまた買いに行けばいい。ニヤニヤしながら唐揚げを摘むと肉汁がジュワッと口の中いっぱいに広がって美味しい。ウキウキしながら、洗面所でケトルに水を入れるとスイッチを押した。お湯が沸くまでの間、カツ丼を食べる。
出汁に浸かってくたっとしたカツと口いっぱいに白米を詰め込む。なんで冷めててもカツ丼って美味しいんだろうか。一口、また一口と食べれば食べるほどさらにお腹が減ってくる。最後の一口を口に含むとタイミングよくお湯が沸いた。カップラーメンのフィルムを剥ぎ取ると蓋を半分まで開けるとお湯を注ぎ込む。湯気がもくもくと立ちのぼり、三分経つまでの間におにぎりを頬張る。味は鶏そぼろ。二個食べ終わる頃には三分経っていて、急いでラーメンを啜る。
全部お腹に収めると頬を緩めながらベッドに倒れ込んだ。コンビニ飯はやっぱり美味しい。慈鳥は野菜も食べろと怒るが、野菜は力にならない。やっぱり肉が一番だ。
ふぅっと息を吐くと再び天井を見つめるとどんどんと視界が霞んでいく。瞼も重くなっていく。満腹で満足したら眠くなるもんだよな、そう思いながらゆっくりと目を閉じた。
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「あ、駒がおる!」
コマ?回すやつ?こまって何?
「ほんとたい!」
あれ?俺の声、聞こえてない?これは夢?
「駒は尻尾ん形でわかるたい。」
尻尾?こまってペット?
「綺麗な尾じゃもんね。」
なんの尻尾なんだろう。
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どんどんどんどん、とドアを叩く音で目が覚めた。照明はつけっぱなし、カーテンは開けっ放し。そして窓の外は明るかった。
「源くん!九時過ぎてますよ!」
狸塚のくぐもった声がドア越しから聞こえてくる。あぁ、問題を起こしてしまった。




