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見ている世界はそれぞれ違う。
目線もそうだが、心情でも変わってくる。
正しいとか正しくないとか、
見る方向が違えばそれもひっくり返る。
正しいってなんだろう。
正しくないってなんだろう。
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空港から外に出ると、刺すような強い光と共に湿り気のある熱気が肌にまとわりついてくる。自動ドアの前に立っているから辛うじて背中に当たる冷気が気持ちいい。動きたくない。いや、動いて空港の中に戻りたい。
でもそれは、源の少し先で待っている二人の鋭い視線が許してくれない。少しでもこの不快な汗から解放されるために、源は上着を脱ぎ、腕捲りをした。まったく解放はされない、マシとも思わない。
なんでこんな真夏に、こんな暑いスーツを着なければいけないのか。目印だとかトレードマークとか狸塚は言っていたけど、殺しにかかってるとしか思えない。もっと、現場の声を拾って欲しいと思う。
ちなみにこの言葉は別の職員が、なんか偉い人に言っていた言葉。たぶん、こういう時に使うんだと思って使ってみた。
狸塚でさえ、額にうっすらと汗をかき、細い目が珍しく下がっている。顔は今にも溶けてしまいそう。慈鳥は上着を腕にかけ、腕捲りをしているが汗をかいている様子はなかった。
源、慈鳥、狸塚が今いる場所は九州のとある空港。旅行客らが楽しげにキャリーケースを引いて歩く姿を、タンクトップや半袖を着ている姿を、じっと凝視する。そそくさと目の前を過ぎ去る客たちをただ見つめていたが、狸塚の手にある日傘で頬を押された。
「周りを威嚇するのはやめなさい。」
押されたまま狸塚を見る。
「旅行だと思ったのに。」
そう恨めしい目と声で呟くとため息を吐かれた。さすがの狸塚も暑くてお説教をする気は削がれているらしい。
◾️
事の始まりは一週間前。
いつものように慈鳥に泣き言を言いながら画面に向き合っているとキーボードに影が落ちた。なんだと思い顔を上げると、狸塚がこちらを見下ろしている。
瞼は薄らと開かれ、口角が上がっている。不気味としか言いようがない、いや不気味じゃなくて気味が悪い、いや、一緒か?とにかく、なんか嫌な気持ちになった。
「九州へ行きませんか?」
その言葉にさっきの気持ちがどこかへ吹っ飛んだ。勢いよく立ち上がると狸塚に顔をぐいっと近づけたが、気圧されたのか狸塚が僅かに背中を反ったが分かった。
「行く!行きたいっす!」
元気よく返事をすれば狸塚は源の肩を掴み、椅子に座らせられた。狸塚はスーツを整えるように襟を軽く引っ張って、詐欺師みたいな顔で微笑んだ。
「手配は全てこちらで行いますので。」
「おい、狸塚、それって。」
狸塚は慈鳥に向かって唇に指を当てた。慈鳥は手で顔を覆い俯いている。源はそんな二人の様子が気になったが、それより旅行に行ける嬉しさが優ってどうでもよかった。
◾️
九州のどこに行くかは知らないが、何があってもいいようにキャリーケースに服だけではなく水着を詰め込んで、みんなで遊べるようにトランプも入れた。海かな?山かな?浮かれ気分でどんどんと詰めていく。
そんな感じで一週間過ごしていると対霊事象管理機構の敷地内にある寮にいきなり狸塚が来た。キッチリと仕事用のスーツを着て。
「さぁさぁ、行きますよ。」
急かすように手を叩くと、あれよあれよと言う間にスーツに着替えさせられ、あれよあれよと言う間にキャリーケースと共に車に乗せられた。助手席には慈鳥もいる。
いつの間にか空港に着き、いつの間にか飛行機の座席に座る。離陸直前、横に座っている狸塚を見た。
「え?」
そういうと狸塚はウィンクをした。
「サプライズですよ。」
そんなサプライズはいらない。




