1.
それは新年を迎えるカウントダウンパーティーでの出来事だった。
ずっと好きだった貴方に「好きだ。愛してる。」と言われて信じられない思いでいっぱいだったわ。
「シャーリーと間違えてるでしょう?」
嬉しかったけれど、本気にしてはいけないと思いながらもドキドキと高鳴る胸を抑えて震える声で聞いたの。
だけど貴方は言った。
「俺が惚れた女を間違える訳ないだろう。」って。
嬉しさのあまり泣き出してしまった私を貴方は優しく抱き締めてくれた。
カウントダウンが始まり、新年を迎えた喧騒の中にいるのにまるで世界に二人きりに思えたの。
そして、新年を迎えて騒ぐ友人達からコッソリ離れ二人でパーティーを抜け出して、会場の上階の貴方が予約していた部屋で結ばれた私達。
初めてだった私に優しく「好きだ。」「愛してる。」と何度も甘い言葉を囁いてくれたわ。
幸せすぎて怖かった。
でもそれ以上に嬉しくて幸せいっぱいだったのに。
「…愛している…シャーリー…。」
後ろから抱き締めて眠る貴方の腕の中、夢見心地で微睡む私。
そんな私の耳元で囁かれた貴方の言葉。
何も知らず幸せそうに眠る貴方は、私を一気に奈落の底まで叩き落とした。
私が声を殺して泣いていた事すら気付かずに…。
腕を解いてベッドの上に座り、貴方の寝顔を見ると憎らしくなるくらい幸せそうな顔で眠っている。
そんな貴方の顔を見た私は凄く惨めだったわ。
心が引き裂かれるように痛くて…息もできないほど辛かった。
この時の私はそれでもいいと思ったの。彼女の変わりでもいいと…。
日に日に辛さが増すなんて思わずに…。
バカよね。
私をそんな気持ちにさせておいて貴方は、度々私をデートに誘い体を重ねた。
その度に私の心が凍っていった。
凍り付いて…凍えて…心が寒くて…。
いっそこのまま氷漬けにされたら心は痛まなくなるの?
でも…そんな事は無くて…。
そんなある日、仕事帰りに偶々立ち寄ったカフェで貴方と友人達の会話を聞いてしまった。
「お前、ユリアと付き合ってるらしいな。」
「…まぁな…。」
「まさかシャーリーに振られたからユリアと…なんていう事は無いよな。ハハハハハ。」
「ばっ…!お前…!」
「やってる時に名前呼び間違えるなよ~。ギャハハハ。」
「でも、顔が同じだったらやっぱり体も…?」
「ブハッ!マジか?同じなのか?」
「知らねぇーよ!マジ殴るぞ!」
「ハハハ。そう怒んなよ冗談だろ。」
「でも一度お願いしてみたい気もするな。なんたってシャーリーと同じ顔なんだし。」
「いい加減にしろ!!」
「まぁまぁ、冗談なんだしそう怒るなよ~。」
「そうそう。」
カフェの奥まった席に座っていた私は彼等が座っている席からは見えない。
だからこのまま彼等が私に気付かずに一刻も早く店を出て行ってくれる事を祈った。
カタカタと震える体。
その震えを抑えようと両手で自分を抱き締めたけど効果は無く、嗚咽を堪えきれず掌を口に押し付け声を殺して泣いた。
しばらくして彼等は店から出て行ったが、三十分程度の時間なのに私には何時間にも感じられた。
その後、店を出てからどうやって家に帰り着いたかわからなかった。
気付けば電気も付けず真っ暗な部屋の中、呆然自失としたまま座り込んでいた。
この先どうしたらいいのか何も考えられない。
なのに涙だけは次から次へと溢れた。
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