四月、君と出会う
真新しい制服はまだ少し固くて、でもこの先私の体に馴染んでいくのだろう。玄関で、ローファーを履き、トントンとつま先を床に打ちつける。鏡を見るとまだ、制服に着られてる気がする。でも、この制服がどうしても着たくて、家からちょっと遠いけど、この高校に進学することを決めた。
「帆乃花ー、車で送ってかなくていいの?」
「ん大丈夫。今出ればまだ電車空いてるし」
「そっか、気をつけてね」
「うんお姉ちゃんも仕事頑張って」
お姉ちゃんへの宣言通り、電車は空いていた。
入学して2日目といえど、あまりに早く学校に着きすぎてしまったので、校内を探検してみる。本館の扉を開けると、新館までの道のりは外になっていて自販機が何台か置いてある。その中に自分の好きなミルクティーのブランドがあるのを見つけて口角があがる。
私の表情筋はあまり上手く機能しなく、加えて人見知りなこともあり、感情があまり顔に出ないね、とよく言われる。でも、ミルクティーは嬉しい。やった、今度買いに来よう。
途端、風が大きく吹いて、思わず目をつぶる。再び目を開くと桜の花びらが私の視界一面にひらひらと風に舞っている。
自販機の近くには桜の木があるみたいだ。木の近くまで寄ると、また風が吹いて桜のシャワーみたいに、私の頭上から花を降らす。まるで歓迎されているみたいで嬉しい。
もくもくと遊び心が顔を出してきて、舞っている桜の花びらを掴みたくなる。おりゃ、と必死に手を伸ばして…よし、掴めた!
花びらを太陽に透かしてみると、キレイなピンク色で、心が浮き足立つ。持って帰ろうかなとも思ったけどやめて、私はもう一度花びらを手のひらの中に戻し、ふっと息を吹きかける。一度は私に捕まえられた花びらは自由になり、再び風に舞って飛んでいった。
ついつい花びらを目で追っていると、後ろからクスッと笑い声が聞こえて慌ててその場を去る。
一体いつから見られてたんだろう、変な子だと思われたかな、後ろを確認する間もなく退散したから、見られたのが先生か生徒なのか、女子なのか男子なのかも分からない。顔に熱がカーッと集まり、早足で教室に戻る。もう忘れよ、私の顔なんて見てなかったかもしれないし。何より恥ずかしすぎる。
教室内には、もうだいぶ人が集まっていて、そろそろ学年集会が始まる時間になっていた。
***
講堂に集められた私たち新入生。学年集会ではこれからの心構えをとか、注意事項とか、なかなか終わりそうにない長いお話に居眠りをし始める新入生もちらほら。
私もついつい眠くなって、あとどれくらいかな、とふと時計の方を目をやると、一瞬周りの音が聞こえなくなって世界に私とその男子しかいなくなったような、私はある男子生徒に目が離せなくなった。
その永遠にも感じる一瞬にひどく狼狽えて、顔を下に背ける。え、なにこれ、なにこれ。もしかして知り合いとか、いや知り合いだったら絶対覚えてる。だってあんなかっこいい人見たことないし。えこれって一目惚れなの。今までちゃんとした恋したことない私が?信じられなくてもう一度その男子に目をやると、私の心臓が恐ろしい速さでドクンドクンと脈打つのを感じた。やばい、心臓が口から出てきちゃいそう。指先まで脈打ってるのを感じる。
ああ、これを人は『一目惚れ』と呼ぶに違いない。




