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奥様は聖女様――契約妻になったらどういう訳か聖女にされました  作者: 赤城ハルナ
【第一章】契約妻になったら外界が阿鼻叫喚になりました

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6/21

第一回目~二回目契約更新 契約妻、変態を成敗

今回で【第一章】ノアSide奥様部屋立てこもり編はおしまいです。

 慌ただしかった結婚式からもう五、六日たったかな。

 お店を閉めようとしていた夕方、オール電化部屋からわたしのスマートキーに緊急信号が届いた。


(侵入者か!?)


「緊急の連絡が入ったわ。あとを頼んでいい?」

「はい、オーナー。おまかせください」


 わたしは大至急お店から奥様部屋に移転した。そこには窓ガラスを破壊した侵入者がいた。


(しまった~、窓は弱っちい単板ガラスだった!)


『め、目が目が~!!』という情けない声をあげてうずくまる不届き者。

 息が荒く額から汗も出ている。


 へ、変態だ~っっ!!


 よく見ると、ひょろ長くて茶髪天パの丸眼鏡男――ええと、誰だっけ?

 あぁそうだった、結婚式にしか会ったことがない旦那様だった!


「旦那様、わたしの部屋へは(危険だから)入ってはいけません!」

「!?」

 知られてはいけない物があるので旦那様に忠告した。厄介なことにならなければいいんだけど。

「それから、破壊された窓の修理は(中を見られたくないので)必ずわたしに立ち会わせて下さい、それまでは放っておいて下さい!」

「??」

「さぁさぁ、ここから出て行って下さい!」


 秘密が漏れないように、わたしは取り乱している旦那様をさくっと扉から追い出した。まさか旦那様が侵入者とは思わなかった。

 クレイジー頭だし変態だから用心しなければ。


 改めて旦那様の顔を見たら、結構彫りが深かった。何というか、愛想の悪い邪悪な学者顔?


 割れた窓から隙間風がびょーっと入り込む。秋になったばかりでも、夜は結構寒いんですけど。

 これではエアコンは使えない。仕方なくコタツを呼び出し、丸くなって眠った。


 ――いくら何でも酷い。わたしとうとう虐げられた契約妻になったんだ。


 翌朝扉の隙間にメモが挟まっていた。

「なになに?『衣食はどうしている? ちゃんと生活しているのか?』」

 旦那様、わたしを一応気にしてたのか〜。虐げられたわけじゃなかった。頭のネジが完全に外れているわけではなかったのね、変態だけど。


『霞を食べて生きていけるので気になさらずとも大丈夫です』


 セキュリティーをかけるだけではダメなことが分かったので、念のため扉と窓には電気牧柵を張り巡らせることにした。


 完璧籠城。


 夜半に感電音と叫び声と人間が倒れる音が聞こえるけれど、気にしない、関わらない。





 奥様部屋とお店とテリア家を移転する毎日が続く、平凡で楽しい日々。


 食事ですか?

 朝は首都のコーヒーハウスでモーニング、昼は屋台で買うサンドイッチやパイ、夜はお店近くの食堂かテリア家。

 電気ケトルがあるからいつでも紅茶とハーブティー、ベリーティーが飲める。


「お帰りなさい、ノア。今日はあなたの好きな『オヤコドゥン?』を用意したのよ。鳥肉と卵は裏庭の地鶏から。お米は首都から取り寄せたわ。テレンスも好物だったわね」

「うん、ノア姉様の好物はぼくも大好きだよ」

「可愛い~、テレンスちゃん」

「エヘヘ」

「ノアのおかげでテリア家はだいぶ持ち直したよ。また首都へ行って観劇や音楽会に顔を出している。次の王宮開催舞踏会へは参加できそうだ。もう没落貴族とは言わせない」

「どういたしまして、お義父様」

「早く帰って来て、ノア姉様」

「二年間なんて、すぐよ」


 さて。もうひとつ何かが足りない。

 そうだ、娯楽がほしいかも。配信音楽だけではつまらないもの。


 よし、85インチ◯ニーのブラ◯ア設置!

 広い部屋だから何でも置ける。

 配信で映画を観よう。何がいいかな?

 リモコンで日本語入力。

『2001年宇宙のナンチャラ』『インター○テラー』『バイオハザ○ド』


 なぜかあらゆる配信が見放題、聴き放題なのだ。


(うは〜っ、最大級ブラ◯アで見る宇宙のナンチャラ、窓の外まで光を飛ばすよ。まぶしぃ〜!)


 誰が利用料を払っているのか、電波基地局はどこなのか、未だに謎だ。


 それからしばらくして、騒々しかった屋敷が急に静かになった。ヒステリックで甲高い女性の声が消えたのだ。電気牧柵の威力が分かったのか、奥様部屋に突撃してくる猛者もいなくなった。


 ウ~ン、いい傾向。

 この屋敷、悪い意味で騒々しかったものね。

 貴族家なのに礼儀がなっていないというか、不気味な屋敷というか。

 ホント、変な所。五芒星ごぼうせいの意味は?


 さて、わたしのライフクオリティをもう少し上げようかな。





 何も考えずにズルズルと過ごしたら、二年間という期間が迫っているのをウッカリ忘れていた。

 アチラさんからも何の連絡もないし、同様に忘れているみたいだから、このまま伯爵家に居座ってもいいのかな。だって、お部屋が広いから電化製品をたくさん置けるんだもの。家賃を払わなくていいマンション暮らしだものね。

 ありがたや〜。


 それとも独立しようかな。

 お店の売上を元手にすれば、長屋みたいなタウンハウスくらいは買えそうだし。

 男爵家に相談しよう。


「ノア、伯爵様には大切にしてもらっているの?」

「たぶん?」

「ならいいんだけど、税金を払うためにノアを嫁に出してしまって、心苦しいの」

「お義母様、気にしないで。もうすぐ契約期間が切れるから、わたしこのまま独立しようかな」

「だめだよノア姉様、ここへ帰って来て。またみんなで楽しく暮らそうよ!」

「遠慮なく帰ってくればいい。まだ十九歳なんだし、ここはノアの家なんだから。再婚先はテリア家が用意しよう。家格が合って気楽な家がいいかな。私の甥とかどうだろう」

「何言ってるの、お父様。ノア姉様はぼくのお嫁さんになるんだよ」

「それもいいかもしれないわね」

「みんなぁ……グスッ……シャンデリアはまだ光ってる? お湯はまだ出る?」


 テリア男爵家って、ポンコツだけど居心地がいいのよね。みんな優しいし。税金問題は解決したから、贅沢さえしなければ貴族家としてそれなりに存続できるはず。


 ウ~ン、これからどうしようか悩む。

 自立か、出戻りか?


 そういえば、札束ビンタしてきたクソ旦那様って、普段何をしているんだろう。





 あっという間に二年が過ぎ、契約終了日になった。事前に何の連絡もなかった。


「契約更新……」


 扉の向こうから旦那様の低い声がした。


「了解!」


 オートロックを外し、扉をギィーッと開けて……札束ビンタ旦那様が心変わりしないうちにサクッと契約書にサインっと。


 サラサラ〜。


 あっ、契約内容見るの忘れちゃった。どうせ変わってないよね。

 ということは、あと二年かな?


 テリア男爵家の皆様、わたしはもう少しここに居座ります。





 そして一年後……なぜか旦那様から契約更新を言い渡された。

 二年じゃなかったの?


「……さて、契約内容は次の通りでいいかな。

・毎朝寺院で祈りを捧げる

・高級チョコレートを毎日

・寺院で週一の豪華アフタヌーンティー

・契約は年一回の更新、更新日は結婚記念日

 では、新しい契約書に署名をお願いします、()()()


「は?」


 扉を開けると、正装をして花束を持った旦那様がいた。


「お手をどうぞ、奥様」

「えっ?」


 出された手にウッカリ自分の手を乗せたら、グイッと引っ張られて大きな肩に担がれた。


 奥様部屋は明け放たれたのだった。


 な、なんでだ〜!!!

☞何がどうなってこんなことになってしまったのかは、次回からのヴァシリウスのお屋敷改革編をご覧ください。奥様部屋の外で起きた意外な出来事が明らかになっていきますが、ノアは一切知りませんでした。

☞来週月曜日(4月27日)からの投稿になります。

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