プロローグ『殺されました! まだやりたい事いっぱいあったんですが!?』
新連載です!
これ一度言ってみたかったセリフなんです。知ったこっちゃないですよね。すみません……
書いてる小説2作品とも主人公死ぬんですが、誰かに殺されるという所が一緒で、虎落は主人公が他人に殺されるのが好きな様です。
始まりが同じ過ぎてびっくりです笑笑。
他の作品同様にこちらも愛して頂けたらありがたいです!
死んだなぁーまだやりたい事いっぱいあったのになぁー。
あっ、なんで死んだか聞きたい? 聞きたい? ……やっぱり聞きたいかぁーー。
では語ろう! 俺が何故死んだのか!
池田晴臣35歳、あの日は死にそうな程に暑い夏の日、最悪な事に土砂降りの雨が降っておりジメジメベタベタしていて最っ低の日だった。
どんなにどんよりとした気持ちでも、社会人なので会社に出社しなければならない。
社畜つら。
憂鬱な気持ちで湿気でベトベトした満員電車に乗り、パワハラ上司の説教を受けながら本日の業務をこなして、急な仕様書の変更で残業をし定時など疾うに過ぎた終電ギリギリの、自分と同じ社畜仲間数人がいる電車に乗り、早く風呂に入りたいと思いながら帰路についていた。
傘を差しながら早歩きで歩く俺の前に路地裏から、傘も差さずにずぶ濡れのガタイがいいのにどんよりとした顔のブランド物のスーツを見に纏ったイケメンの男が出て来た。
俺より頭一個分は高い身長に一瞬ビクついたが、その男は俺を一瞥する事もなくフラフラと橋の方向に歩いて行ってしまった。
俺はあのイケメン何だったんだろう、と疲れた頭で思いながら歩き出した。
しかし数分歩いたところで早歩きをしていた足を止める。
ブランド品を身に纏っていた営業職っぽい、明らかに疲れた顔の社畜が橋の方に怪しい足取りで向かって行った。
ガタイが良かったし、メンタルも強そうなイケイケの営業マンっぽい男が傘も差さずに。
俺はそんなこと考えない、そんなこと考え始めた時点で仕事なんて辞めている。
でも、あの男には辞められない理由があるのかも知れない。
絶対そうだなんて言い切れない、だって俺人の気持ちを正確に理解出来る頭ないし、思い違いだって何度もして来たし、何で理解できないのよって怒鳴られて振られたことあるし、俺の考えって基本的に当たらないし、大丈夫だろう、俺の感って全然当たんないんだよ。
そう、自分に言い聞かせながら俺は一歩踏み出した。
「あぁーーッ! 俺何で走り出しちゃってんだッ! 思い違いかもって考えたら普通追いかけないだろぉ!? 帰るだろ! 家に! そういうもんだろ人間って! 関わりたくないっしょ普通! 明日も朝から仕事あるのに! 何やってんだよ俺ーーッッ!!」
自分のまさかの行動が受け入れられずに大声で叫びながらそれでも、全力で走る俺がいた。
大学を卒業してから10年ほど、運動系のサークルに入っていた俺はそれなりに鍛えていた。
しかし! 今の社畜の俺は、全く鍛えることなく! アルコールを摂取しまくってだらしない体になっている!
正直! 大学卒業して以来まともに走ったことない! こんなに全力で走ったことないッ!
超死にそう! 超息苦しい!
でも、なぜか止まろうとは思わないんだよなあッ! これがッ!
頭の中でずっと自問自答して、ずっと叫んでいたが見覚えのある背中を視界に捉えた瞬間に図書館か? と言うくらい頭の中が静かになった。
フラフラと歩いている他人に俺はなんて声をかける?
傘を忘れて、買うのも面倒だからそのまま歩いてるだけかも。
そもそも本当に疲れた顔してたか?
歩いてるだけなら大丈夫なんじゃ。
このまま声を掛けたらどう考えても不審者だろ。
橋を渡り切るまで見送るだけでいいのでは。
などなど、本当にさまざまな考えがよぎり急に尻込みをしてしまった。
そりゃそうだよ、イケイケのサークルになんて入ってなかった。そう言う人たちと関わった事無かった。
だからこういう時、どうしたらいいのか分からない。
てか、イケイケの人達ですらこういう時どうしたらいいか分からないんじゃね。
とか変な事を考えていると男が急に立ち止まって、そのまま橋の手すりに手を置いて勢い良く足を上げた。
「おいッ! 何やってんだお前ッ!」
俺の怒鳴り声に一瞬驚いた顔をこちらに向けたが、すぐに興味を失った様ですぐに前を向いて飛び込みを再開した。
「……ッッ! にッやってんだって! 聞いてんだよこの大馬鹿野郎ッ!」
男はノロノロとした亀の様な動きで手すりを乗り越えようとしていたので、引っ掴むのは案外簡単にできた。
しかしそれからが問題で体格が違い過ぎる為に、こちら側に引っ張る事が出来なかった。
「……離してくれ…………もう死にたいんだ。死なせてくれ」
「それは無理な相談だ、俺はお前を見てしまったんだ。掴んちゃったんだよ、ここまで来たらガッツリ首突っ込ませてもらう!」
俺の遠慮のない言葉に男は正気のない顔で振り返る。
「……本当に余計なお世話だ。あんたのそれは偽善でしかないだろ……。俺の事を何も知らないんだから放っておいてくれれば良いのに……どいつもこいつも……どうして見て見ぬふりして死なせてくれないんだ」
「そんなもん知らんッでも、偽善なんて綺麗なものではないと伝えておく。すれ違った人間に違和感を抱えたが、他人だし見て見ぬふりをしました。それで近くの川で全く背格好の同じ人間が死んだとニュースを見て、もしかしたら……と想像してしまうのが俺は嫌なんだよ! だからお前を止めに来た! お前を救わなきゃとか、そんな大層な理由じゃない! お前が死んだら、俺がッ! 目覚め悪いからッ! お前を止めんだよ!」
俺の自己中すぎる言葉の数々に男は正気を失っていた顔を変え、驚きの表情を見せて言葉を紡ぐ。
「そんな、自己中な理由で俺の覚悟を無かった事にするのか……」
「覚悟とか知らん! 死ぬ覚悟なんて反吐が出る! そんな覚悟するなよ、お前に家族とか友達とかいないのか。そいつらがお前の死ぬ覚悟知ったらどう思う……辛いって、打ち明けてくれる存在ではないとお前が死んだ時に思い知らされる人間がいるって、死ぬ事を覚悟する前に、思い出してくれよッ」
「……あんた、誰かを亡くしているのか……?」
「そんな奴いない!」
「……今、いる感じの口調だったよな? ……いないのに俺を止めるのか?」
「いないからなんだよ、いなかったら自殺止めちゃいけねぇのかよ。いなかったら人に説教しちゃいけねぇのかよ。いなかったら何か問題でもあんのか?辛い事なんてないに越した事ないだろ。俺が辛い事ないんだから、ある奴に普通の日常を分けてやるでもいいだろ。偉そうって言葉は受付ねぇぞ、俺はコミ障なんだよ他に言葉が思いつかねぇ」
「…………コミ障は、自殺をこんなに必死に止めない……と思う」
「……それは偏見だろ、多分」
俺のコミ障という言葉に正気を取り戻したのか、男の動きが一旦止まった。
そのまま畳み掛けてしまおうと思う。
「俺がコミ障かどうかは今どうでもいいんだよ。思い出せたかよ、お前を大切に思う誰か」
「……あぁ、……おれのこといつも支えてくれて、心配してくれる父親が……」
「なら、父親に全部ぶち撒ければ良い……今までの事も今日のことも全部ッ」
父親を思い出して決意が揺らいだのか、男は手すりから身を離して歩道の方に降りて来た。
「……あんたに言われた通り……話してみるよ、父親に、周りの人達に……」
「言った手前あれだけど、無理せずな。言えないと思ったら直接じゃなくても電話でも、メールでも良いし、手紙とかでも良いんだ。それでも無理なら今は言わないでも良い………俺は早めに言ったほうがいいと思ってるけど、それはお前の自由だから……ただ死ぬのは無しな」
「……ありがとう……ふふ、あんたの自己中な考えを聞いてちょっと気が楽になったよ」
「あーーー、ごめん必死すぎて脳直で喋ってた」
「……いや、それが良かった。面白かった」
「なら、良かった……のか……?」
興奮し過ぎてだいぶ乱暴な言葉を使ってしまったが、それがこいつには良かったらしい。
今更畏まるのも恥ずかしいし、このままの口調で話し続けよう。
「あーくまったな」
「……くまった?」
「あ、………これは、そのなんて…言うか姪っ子が困ったって言えなくって、それが移ったと言うか……困った、をくまったと言って、でも時々出るだけっていうか、普段から言ってるわけでは…………悪かったな! 良い歳のおっさんが可愛い子ぶった言い方して! キモイなら言え!」
「……あはは、全然キモくない。何にくまってるんだ?」
「おい、速攻イジってくるじゃねぇか。良い性格してやがる」
俺のキモイ口癖を笑って受け流し、速攻イジってくるあたりさては相当コミュ力高いな。
「で、何にくまってた?」
「……はぁー、これやるよ」
「え、」
「お前、折り畳み傘な」
大雨の中俺の傘一本を成人男性2人で使うのは流石に厳しいし、コイツを家まで送るとか面倒なので、予備で持っていた折り畳み傘を男に差し出した。
「お前にはちっこいかもしんないけど、我慢して使えよ」
「……いいのか?」
「このままずぶ濡れで帰すわけにはいかないだろ。俺のデカい傘をやるほど俺は優しくないし」
「……あんたってどういう基準で生きてんの? 自殺しようとしてる人間助けといて、傘一つで優しくない人間って自分で言う?」
「助けたのも俺の為だ、優しくはないだろう」
「……十分、優しいよ」
優しくないだろ、新品の大きいビニール傘を渡さずに使い古された折り畳みを渡したんだからな。
「もう俺は疲れた、お前も疲れただろ。その傘差してとっとと帰れ……帰り道に死のうとするなよ?俺は明日も仕事があるんだ、お前を家まで送る余裕はないからな」
「流石にもう死ぬ気ないから大丈夫。……いつかちゃんとお礼をする。話す覚悟が出来るまで、出来ても話すまでに時間が掛かると思う……………それまでお守りとしてこの傘持っててもいい?」
「……別にいいが安物の草臥れた傘だぞ?」
「……これが良い………。あんたの物を持ってると、なんだか……安心出来る……気がする」
「良く分かんないけど、安心するなら好きなだけ持っとけ」
そんな会話をし、イケ男は小さな傘を差してゆっくりとした足取りで歩いて行く。
イケ男が何度も何度も不安そうにこちらを見てくるから、俺はなかなかその場から離れられずに結局イケ男の姿が見えなくなるまで見送った。
さて自分も帰るかと来た道を引き返す為に振り返った時、ドンッと人にぶつかってしまった。
今もまだ大雨は続いている、そんな中橋の歩道の真ん中で突っ立っていたのだ……他人が気付かずにぶつかってしまうのは、まぁしょうがないことだろう。
申し訳ないと端に避け、謝罪をしようとしたが腹が妙に熱いことに気が付いた。
そっと腹に手を当てるとぬるっとした感覚が手に付いたので、変な物が付いたと嫌な思いをしながら自分の手に付いた何かをゆっくり見ると、手には血がベットリと付いていた。
その瞬間グラリと視界が歪んだ。
クラクラする頭に目の前の人間の声が、クリアに聞こえてくる。
「後、もうちょっとだったのに……私が助けるはずだったの……何で邪魔するのよ。……あの人がいけないのよ? 私がせっかく付き合ってあげるって言ってあげたのに、断ったから……だから居場所をなくしてやったの…………お前がいなければ、全部うまく行ったのにッ……これからもあの人側をウロチョロされると困るの、だから死んでね?」
そう言うと女は足早に去って行き、残ったのは刺されて力の抜けた俺だけだった。
何あの女、マジで怖いんですけど……居場所無くしてやったって何?何やったのあの人、こわ。
あいつが病んでた理由もしかしてあの女?
あーー、現実逃避しすぎて救急車呼ぶ余裕なかった。
夜中の大雨の中外出してる人間なんていないだろう……俺、もしかして死ぬ?
あいつに生きろとか散々言ったけど、俺が先に死ぬんかい。
なんかあいつのストーカーぽかったし…………俺が殺されたって知ったら、あいつ自分を責めるかも……せっかく助けたのに、せっかく生きる事を少し考えてくれたのに……俺の事にまで悩ませるの可哀想だよな……しょうがない……頑張って、救急車、呼ぶか。
朦朧とする意識の中、救急車を呼ぼうとズボンのポケットから携帯を取り出す。
「でん……わ……で……んわ……」
電話……。
…………しないと。
救急車って、何番だったけ……?
「119番消防です。火事ですか? 救急ですか?」
「きゅ、う……きゅう」
「救急ですね、どうされましたか?」
「だれか、に……は、らささ、れて」
「ッ! 直ぐに救急車を向かわせますので、そちらの住所教えてくださいッ」
「……じゅ、うし、?…………」
だめだ、意識が朦朧として……救急の人が何を言っているのか理解出来ない……。
でもこれだけ伝えて欲しい。
俺が死んでも伝えて、お願いだ。
「……つた、え……わるくない……おまえは……わるく……ない…………」
「悪くない……? もしもし? 聞こえていますかッ! もしもし! 大丈夫ですか! へんじ……ッ…………ッ!」
ごめんな名も知らないイケ男、もう限界だわおれ。
何も見えないし、聞こえない。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
面白い、楽しい!
続きが気になる!
と思って頂けたら、
広告下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援を頂けたら嬉しいです!
ブックマークや返信は出来ませんが、感想なども頂けたら本当に嬉しいです!
何卒宜しくお願いします!m(_ _)m




