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悪魔が捧ぐオンライン  作者: ヒイロロ*ヒノキ
四章.???編

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8.異世界オンライン【章末-後編】

誤字脱字はお知らせください。泣いて喜びます。


***


「…姉ちゃんって『カナン』…王様だったのか」

「その名は好かんな、ヒテンジと称せ」


 マズい、頭ん中が漏れ出てる。まだ魅了の余韻ある。しっかりしろ俺。

 本で読んだ亜人連邦の『愚王』、呼ばれて良い気はしないだろ。

 

「明野は大穴の中に入った。…姉ちゃんはどうしてここに?」

「遣いの者を出すより、妾が首を持参した方が早かろう?」


 しれっとヤバい内容を事もなさげに言う。

 マラソン並みの距離を馬より速く来たのか…?

 何時間かかるとお思いで?心臓破裂するだろ普通。


「明野なら心配ない。ちゃんと帰る方法があった。っても別の手段で帰るらしいが」

「ならばベアル・ゼブルの(すべ)か、先ほど出現を悟った」


 やっぱり暴君の存在は知っている。

 素性を聞いた今なら、色々と腑に落ちた。

 明野との関係も突っ込まないあたり、既に面識は……あれ、何も知らなかったのって俺だけ?


「つまり魔鉱晶は未使用。ならば妾も使えるな」

「あの…何か企んで…ます?」

「無論だ」

 

 黄金色の目を細める姉ちゃん。

 茶目っ気を演じて、ニヤリと俺を見つめてきた。怖い。


「其方らが為、妾は国へ戻り駆け回った。これでは骨折り損であろう?」


 とはいえ否定はできない。

 俺たちが帰還を目指し、挙句の結果は"暴君"により、どんでん返し。

 戦争の膠着も、魔鉱晶の採取も、全ての問題は解決どころか粉砕。

 姉ちゃんの東奔西走は水の泡だ。


「それは恩に着るけど……」

「冗談だ、これを"貸し一つ"とするほど醜くはない」


 けどそんな徒労も呑み込んで、むしろ姉ちゃんは安堵さえ見せている。

 疲労も色濃く、体には無数の怪我。

 そりゃそうだ。文字通りに、国家転覆なんだろ?


 クーデター後なんて、まず他を優先したって文句は無い。身の周りを固めたり。

 しかもこの強行策だと、帝国との関係が後々厄介なことになるハズ。

 そんな無理をしてまで、第一に駆けつけた。

 

「だが、やはりこの名を呼ばれるのが恋しいのでな――」


 だからこそ、嫌な寒気が走った。

 (したた)かに笑うその顔は、なんだか心臓を掴まれたような気分になる。

 

 そして姉ちゃんは顔の布切れを外し…ってあれ、それ外したらヤバいやつ――

 

***


 黒で染められる視界。

 街灯の無い深夜を徘徊するが如く、岩を潜り、塊根を抜ける。


「てか陽太郎はいいんかな?」


 そんな中、ふと背後を振り返る沙多。不可解とばかりに表情に疑問が浮かんでいた。

 それもそのはず。

 先ほど彼と合流すれば、なんと帰還を先送りにする旨を告げられた。


――俺ぁぃいよ、さき帰っぇてくぇえ~


 それも酔っ払ったような、浮かれた様子。

 呂律が回っていなかった。

 その後は大きな魔鉱晶を採取。身の丈の半分ほどあるそれをインベントリに抱え、フラッと消えてしまった。


「ま、いっか」


 しかし心配は最低限。割とドライである。

 「本人がいいならもう帰っちゃお」と足を運ぶ。


――――――

――――

――


 やがて暗闇の中、最深部であろう場所に辿り着く。

 沙多が目を凝らす先、抜け穴らしき最奥には、魔法陣が光を発していた。

 その輝く紋様は、まさに陽太郎が図面にしたものと類似している。


「っあ、ワープ…ってなんか明るくない?…クラブ?」


 周囲には一際大きな魔鉱晶が散乱し、一帯はプリズムのように虹色に反射していた。

 深淵に染められた大穴。その想像に反し、目が痛くなるような空間だった。

 

「妹君よ、もはやここは無用ッ。『るしふぇる・おんらいん』なる場所に戻ろうぞッ」 


 早急に、遅れた分を取り返すようにゲームへの熱を見せるベアル。

 魔法陣を発動させるためか、力を蓄積させ、徐々に大気を揺るがしていく。


「――ねえ、アタシも特別ってどゆこと?」

 

 しかし、ポツリと吐かれた沙多の問いに中断。


「アタシは別に"妹君"ってやつでも無いし、お姉ちゃんみたくゲームの関係者ってわけでも無かったよ?」

「そこは要点であるまい。ウヌは()()()()()のだ。この世界にて吾は確信したッ」

「ふぇ?」


 淡々と事実であるように強まる語気。だが漠然とした内容だった。

 意味が分からず、相槌が崩れる沙多。 


「アタシ求められた?なして分かんの」

「ウヌを呼ぶ声が響いていようぞ」


 それは人外の呻き。

 岩や天蓋に反響するそれを、同じくベアルも聞き届けていた。

――刹那、物陰から何かが飛び出した。 


「うわっ、人外ッ?」


 彼の発言を肯定するように接敵した黒い影。

 ドンッとぶつかり、後ずさること数歩。沙多は咄嗟に臨戦態勢へ移る。


 だが、相手は全く意に返していない。

 むしろ衝突すら認知していないようにフラフラと徘徊していた。


「形成されたばかりの個体であるな、人の形とは稀有である」

「えっ赤ちゃんなんッ!?」


 例えるならば新生児らしく、生まれたて。脅威にすらならないと言う。

 先ほどの命のやり取りが表情を険しくさせるも、やがて困惑へと変わる。


「その多くは吾が主君に影響された存在。自我を持たぬ内は、ル・シファル様の残滓そのものである」

「残滓…じゃ戦おうとしてないのも、ル・シファルって人の気持ちが出てんの?」


 自分と同等かそれ以上の等身、ポンポンとその頭を撫でるも反応は無し。

 そんな無垢な存在が、ル・シファルの残滓。写し身であり代弁者という。


「ならこの子から色々聞けば、何考えてるか分かんじゃ…」


 繰り返すが、それは生まれたて。まともな意思疎通は不可能。

 唯一、呻きとして上げる声も、名前を呼ぶばかりでそれ以外はない。


 「あ~赤ちゃんなんだった」と、ジロリ見つめる沙多。

 人外は微動だにせず、ポツリと佇んでいた。


「――えいっ」


 だからこそ、沙多は()()()()()()()


「何をしているのだ?」

「なんか寂しそうだったし。アタシが求められてんなら、何か反応(リアクション)あっても良くない?」


 だから直接確かめる。

 ベアルの怪訝な目も構わず、ギュウッと体温を分け与えた。

 肌が触れ合うゼロ距離。優しい抱擁にて包み込む。


――すると人外は、同じく抱擁を返した。

 無機質な、冷たい腕が徐々に動き、沙多の背中に触れる。


「わっ見てこれ!一旦仲良し、平和条約ッ!」


 能天気に、初の友好関係を作った一幕。

 興奮を隠さず、沙多は顔を輝かせる。


「ってヤバイッ成仏してくッ!」


 しかしそれは泡沫と帰していった。

 戦闘を経る事もなく、満たされたように消えていく。

 突如の人外乱入も、白昼夢のように片付き、辺りに残すは魔法陣のみとなった。


「フム、主君が求めたものはそれか」

「…あれがしたかった事?ハグなんていくらでもしたげるのに」

「否、ウヌの存在そのものを欲したのだ。『げぇむ』なる世界へ誘う為に」


 振り向きざま、沙多を真っ直ぐ見つめるベアル。

 幾多の色彩に照らされたその姿は、なんとも荘厳で、それだけで説得力が生まれてしまいそうだった。


「特別な存在に求められたならば、それもまた特別よ」

「…ぅん?ル・シファルとお姉ちゃんのゲームにアタシが必要で…?だからハグしてくれて…?――あぁもうッ全っ然意味不ッ!」


 沙多はいつも通りに思考が停滞。頭を抱えて難しい話はパスと、(ゴール)へ向かう。


――ただ、この世界の意味はボンヤリと理解した。


 "ゲームであった古代言語だぜ!?"

 "レアエネミーとか天恵は存在してなくてな"

 "どうも天恵と似てねえか!?というかまんま同じだろ?"

 

 起因は陽太郎。彼の言葉が記憶に残る。

 異世界とVRの世界。この二つには多くの共通点があった。

 前者をベースに、後者(ゲーム)を作ったのだろうと納得できる。


「…ベル、帰ろ。ワープお願いしていい?」

「承ったぞ妹君よッ」


 だが『ルシフェル・オンライン』を作った理由は分からない。

 なにより、姉が介入する余地が無い。

 何時知り合ったのか、どうして共にいるのか、二人の関係性がまるで未知数。


「――帰ったらベルの話、色々聞かせて。もちろんル・シファルって人の話もね?」


 だからこそ魔法陣の上に立てば、そんな言葉を投げかける。

 ベアルを背後に、従者の如く引き連れて魔王さながら。

 しかし対等に、素性を知る絶好の機会と、その顔を真っ直ぐ見据えた。

 

「クハハハハッ良かろう!千夜を通してウヌに追想を授けようぞッ」

「え…うん、やっぱもうちょいしてから聞こうかな」


 しかし冗談に聞こえない時間の長さ。

 悪魔なら比喩抜きで語り明かす恐怖があったので、沙多は及び腰になりながら一歩下がる。


 そうして次の瞬間、ベアルが奔流させた魔力に包まれ魔法が起動。

 ただ静かに、黒い霧のような渦に呑まれていった。


陽太郎だけ異世界で誕生日ルート続行です。かわいそ

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