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そうだ、お酒を飲みに行こう!〜お酒大好きアクティブ令嬢と偽り身分の王子様〜  作者: 雪月花


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 強化練習は順調に続いているようで、シモンも泣き言を言わず頑張っているようだ。

 あれからシモンの友人や、Cクラスの他の剣術が強くなりたい男の子が参加してるらしく、今ではちょっとした人数になっていた。


「いよいよ明日ですね」

「そうだね」

 ルーナとテオ様は、今日も2人でまったりベンチトークだ。

 だいぶ肌寒い季節になってきた。


「シモンは、いい線いきそうですか?」

「うん。なかなか筋はいいよ」

「じゃぁ後は応援ですね!」

 ルーナはぐっと手を握った。




「シモン、明日の模擬戦で使う剣を貸してくれる??」

 授業が始まる前、強化練習から帰ってきたシモンに、ルーナは声をかけた。


「?? 何で?」

「ふふふ、放課後にとっておきの秘策を授けます」

 ルーナは不敵に笑った。


「加護魔法を剣にかけるんだよ。まぁちょっとした応援になるぐらいだけどね」

「魔法をかけるのはルールに反しないか?」

 シモンが眉をひそめてルーナを見た。

「あのね……加護魔法だけは禁止されてなくて……」

 ルーナは今回の作戦を伝えた。



 

 そして秋麗(しゅうれい)祭当日、澄み渡る秋晴れの中、模擬戦が開催された。

 アカデミーには闘技場があり、その周りには、すり鉢状に観客席がある。

 

 なんとなくクラスごとに塊が出来ており、ルーナたちもCクラスのみんなと席に座っていた。

 

 ルーナの隣には、ちゃっかりテオ様が座っており、その隣にはレオン様だ。


「僕らは強いからシード枠だしね」

 準備は無いの?と聞くと、テオ様がさらりと答えた。

 シード枠だから、初戦の開催時間は暇らしい。


「次はいよいよシモンだね!」

 ルーナがチラリとBクラスを見ると、シモンの婚約者のルクアも応援に来ていた。




 ーーーーーー


「勝者! Cクラス、シモン・レナウザー!!」

「「「わぁー!!!」」」

 場内に歓声があがる。


 そんな中、抗議の声があがった。

「ちょっと待ってくれないか。Cクラスの生徒の剣には、何か魔術がかかっているのでは? 私は魔術の心得があってね」

 帝国学のサイラス先生が声をあげた。


 Aクラス贔屓(ひいき)の年配の男性だ。

 シモンはさっきAクラスの男の子と戦って勝ったのだ。


 ルーナは舌打ちしそうになった。

 魔法判定をするロベルト先生は、言いくるめて味方にしているのだが、サイラス先生の方が年上だ。

 強く出れない状況で不利だった。

 

 ルーナは、魔法の不正利用をしていないか審査するために、審査員席に座っているロベルト先生をチラリと見た。

 ロベルト先生は、眉を下げて困った顔をしている。

 誰か生徒から苦情があがると思っていたけれど、まさか先生から上がるとは……

 

 ルーナは意を決して、緩い三つ編みを解き、メガネを外した。

 ステルスモード解除だ。


「それは〝加護〟です。校則に書いておりました。 〝秋麗(しゅうれい)祭の模擬戦では、ポルンフォスの戦いになぞらえ、加護以外の魔法を禁止する〟と。 伴侶である春の女神アリオンヌが、英雄シルファーに加護を授けた。の一節ですね」

 

 ルーナが立ち上がり、凛とした声を張り上げた。

 校則には書いているが、誰もが忘れ去っていることだった。

 ルーナは校則の隙間をつけるように、全ての校則に(くま)なく目を通していた。

 校則に抵触せずお酒が飲みたい一心で。


「君は?」

 サイラス先生が尋ねた。

 ルーナはサイラス先生の授業は受けてないので、面識がなかった。

「マクシミリア。……ルーナ・マクシミリアです」

 ルーナは澄んだ緑の瞳で、相手をみぬいた。


「……ロベルト先生、本当ですか?」

 サイラス先生が、魔法判定員のロベルト先生に聞いた。

「はい。マクシミリアさんの言うことは本当です。加護のみ使用可能です」

 ロベルト先生は答えながら視線を動かす。


「……ですよね、学園長」

 そしてロベルト先生は、判断を学園長に投げた。

 学園長も審査員席に座っている。

 白髪でおしゃれなスーツを着こなした、ダンディなお爺さまだ。


「……加護をかけたのは、マクシミリアさんですか?」

 学園長は口を開いた。

「いいえっ」

「わ、私です!」

 ルーナの返事に被せるように、Bクラスから声が上がった。

 

 手をあげたルクアが、緊張した面持ちで立ち上がる。

「シモン様の婚約者です。ルクア・アーナキーです。どうしてもシモン様の応援をしたくて」

 ルクアは赤くなりながら(うつむ)いた。

 舞台上のシモンも赤くなって照れていた。

 

 実は加護をかけたのが、誰かまではシモンに教えておらず、後からルクアから種明かしをしてもらう予定だった。

 シモンはルクアに言われるまで、ルーナにかけられたと思っていたことだろう。


「ふむ。〝伴侶である春の女神アリオンヌが、英雄シルファーに加護を授けた〟の一節をなぞらえてるんですね。婚約者の想い、いいでしょう! 校則にあるように、加護はオーケーしましょう。ただし誰からかけてもらったか、申請するように。加護をかけるのは女生徒のみ、その女生徒が加護をかけれる男生徒は1名のみで」


「「わぁー!!!」」

 ルクアがいるBクラスと、シモンがいるCクラスの生徒から歓声が上がった。

 騒ぎに乗じて、学園長がルーナに向かってウィンクをした。


 ルーナはヘナヘナと座り込んだ。

「大丈夫?」

 ヨロっとしているルーナを横からテオ様が支える。

「良かった……」

 ルーナはつぶやいた。




**===========**


「え、学園長にも手を回していたの?」

 サッシャが驚いて言った。

 テオ様とレオン様は、準備に向かっていなかった。


「人聞き悪いなぁ。学園長の大好物である白ワインを、事あるごとに送っていただけよ。でかでかと名前付きで」

 ルーナはいそいそとメガネをかけて、髪を三つ編みにしていた。

 周りは模擬戦に熱狂しており、ルーナに注目していない隙にだった。


「それでマクシミリアを強調したのと、マクシミリア家の特徴である緑の目を見せたのね」

 エマが納得して頷いた。


「あー目立っちゃったし、学園長というコツコツ根回ししていたカードを使っちゃったなぁ」

「ルーナも根回しって言ってるじゃない」

 サッシャが呆れながら言った。


「これで、シャーロット様とカトリーヌ様に目をつけられたらどうするの?」

 エマが心配そうに聞く。

「まだ初戦だからか、その2人は来てなくて、取り巻きたちが数名来てるだけだから、まぁ大丈夫じゃないかな? もしダメだったら、シモンのとこの領に大きな港があるから、海外逃亡の手助けをしてもらう手筈よ!」

 ルーナはキリッと格好をつけて言った。


「でも、そんな危険をおかしてまで、何でルクアの加護をシモンの剣にかけたの?」

 サッシャが首をかしげる。

「だって、好きな人からの応援が1番励みになるでしょ? シモンとルクアが、絶対いい感じになる作戦だったし。案の定、盛り上がってるでしょ」

 ルーナはニシシッと笑った。

 せっかくの人生で一度の学園生活だ。

 恋して悩んで、存分に青春を謳歌(おうか)して欲しい。

 


 

 加護はオーケーになったことで、模擬戦の裏舞台が大騒ぎになった。

 ちょっとでも有利にしたくて、加護がかけれる女生徒を探す者や、この機会に意中の人に「加護をかけて?」と頼む者が現れ始めた。

 そして、ルーナの元に、簡単な加護のレクチャーを頼む者。


 加護は、幸運がプラスされるぐらいの弱い魔法なので、比較的簡単に扱う事が出来る。

 Cクラスの女の子たちが、キャッキャッしながら加護の練習をしていた。

 

 バレンタインのイベントみたいになってきたなぁとルーナは心の中でつぶやいた。




「ルーナ、ちょっとおいで」

 レクチャーもひと段落して、休憩がてら観客席でくつろいでいると、模擬戦の服に着替えたテオ様に手招きされた。

 

 ついていくと、選手控え室の前の大きなホールに通された。

 そこに模擬戦用の刃を潰した剣が、数本置かれていた。


「これがいいかなぁ〜」

 テオ様はその中から一本選ぶと、ビュンビュン素振りする。

 そしてルーナに剣を差し出した。


「これに加護かけてくれる?」

 テオ様はニッと笑った。

「いいですよ」

 ルーナはテオ様が持っている剣に向かって、両手をかざす。

 そして古代語の詠唱を始めた。

 

 ルーナの口から紡がれる言葉が輝いているのか、時々ルーナと剣の間の空気の一筋がシルバーに輝く。

 詠唱が終わると、柔らかい螺旋状の風がテオ様の周囲に起こり、頭上へと駆け抜けていった。


「ルーナ、これって本当に加護?」

 テオ様は、刀身が薄っすら黒く輝いているのを指差した。

「加護です。今、作りまし……間違えました。今、思い出した古い加護です」

 ルーナはそう言いながら目をそらした。


「ふーん。まぁいいけど」

 テオ様は案外気に入ったのか、楽しそうに剣を振った。




 

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