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※王子視点
「次、Bクラス。テオ・アルザイック!」
テオの番が来て舞台にあがる。
「なんとまぁ、すごい加護ですね」
加護かどうかの判定のために、毎回判定しなくてはいけなくなって、ちょっと疲れているロベルト先生が言った。
「……どなたに、かけてもらいましたか?」
ロベルト先生は分かっていたが、定型文を口にした。
「ルーナ・マクシミリア嬢です!」
テオはわざと大きめな声で発言した。
ルーナに加護をかけてもらえたのは、自分だという周りへの威嚇だ。
「ちょっと鑑定させて下さいね……これはすごい複雑だなぁ。うーん、これは加護? 呪い?」
ロベルト先生が苦笑した。
「僕の可愛い恋人が頑張ってかけたんで、批判しないで下さい」
テオは不貞腐れた表情で、舞台上の人に聞こえるボリュームで言った。
「うん。上手く加護に仕上げてますね。ルーナさんらしい。君には一切物理攻撃は効かないでしょう。ケガをしない様にですね。他は何も変わらずです。あ、ただし君が万が一、瀕死にでもなった場合、全て相手に跳ね返るようになっています」
「ふーん……」
テオは黒い剣を見た。
実戦用の剣にも、かけてもらおうかな。
「逆を言えば、相手は多少君に当たってもいいように、全力が出せますね」
ロベルト先生がそう言うと、最初は禍々しい剣に驚いていた対戦相手も、大丈夫だとやる気を出した。
「では勝負を開始するので位置について下さい」
審判が場をしきる。
テオは大人しく位置についた。
ーーーーーー
「「「…………」」」
勝負はテオの圧勝だった。
初戦回が終わり、観客も増えてきた闘技場が静まりかえる。
軽やかな動きと、黒い剣のダイナミックな動き。
どう見ても生徒のレベルを超えていた。
サッシャが前を向いたまま呟いた。
「魔王降臨……」
「……ふふっ」
「「あははははは!!」」
ルーナとエマが大声で笑った。
他のCクラスの人も笑ってる。
その後もテオは、黒い剣でバッサバッサと薙ぎ倒していった。
「魔王様がんばれー」
「マオ様いけー」
Cクラスのみんなが応援する。
Bクラスも、テオに関わりがあった人や、同じクラスだからといった生徒が応援していた。
テオは本当に強かった。
あっという間に決勝だ。
シモンは大奮闘して8位に。
レオンは4位だった。
ちなみにレオンは複数の女の子に、加護をかけてもらっていた。
「ルールは守ってるでしょ?」
ロベルト先生に爽やかスマイルで言っていた。
決勝はテオとAクラスのジークだ。
2人は闘技場の定位置についた。
「君は加護の発言をし出した、ルーナという生徒に加護をかけてもらったんだろ?」
ジークがテオに話しかけた。
周りの熱狂的な観客には、2人の声は届かない。
「……それが?」
テオはルーナの話題を振られて、嫌な予感しかしないので、不機嫌な顔になった。
「とても美しい女性だったね。Cクラスにあんな高貴な女性がいたんだ。君みたいな奴じゃなくて、僕の恋人になって欲しいな」
あきらかな揺さぶりだった。
ジークの方が、身分を偽ったテオよりは地位の高い貴族だった。
自分より高位貴族からの恋人にする宣言は、本当に取られてしまうことのある行為だ。
実は王族なので、地位的に取られる危機感はテオに全く無かったが、眉をひそめてあからさまに嫌悪感を示した。
「……ルーナは渡さない」
〝はじめ!〟という合図があったので、テオが思いっきり打ち込む。
ジークも決勝まで残っただけあって、簡単に受け止めて耐えた。
テオは、ルーナが素の姿を大勢の前に現してしまったから、焦っていた。
Aクラスのやつらが、ルーナの存在に気づいたのだ。
ルーナは、シャーロットとカトリーヌに存在がバレるのを恐れているが、テオは高位貴族の男の子にバレるのを恐れていた。
ルーナの貴族としての身分は申し分ないし、成績上位者として名前が知れ渡っている。
おまけに今日の出来事で、可愛らしさとクラスメートを守る責任感のある凛とした姿を見られてしまった。
ルーナとテオが恋人同士であるという噂があったとしても、Aクラスの男の子からしたらテオは格下の貴族。
恋人がいても、狙ってくる可能性はある。
テオは一旦相手との距離をとり、呼吸を整えた。
「だから、強さを周りに示すために、勝たせてもらうよ」
テオはそっと呟いてから、相手に向かっていった。
「勝者、Bクラス、テオ・アルザイック!!」
「「「 わぁー!!!!!!! 」」」
闘技場が割れんばかりの歓声に包まれた。
「テオ様、おめでとー!! いえーい! 放課後は優勝パーティーだ!」
ルーナは頭の中で、速攻パーティの算段を立てていた。




