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最強スキル【勝確BGM】で異世界ヒーローしますッ!  作者: かんでんち
第五話 ルミナスパレスリゾート編 2
27/34

正直、助かりました

 興味が警戒心に勝ったのか、シアに続いて皆が俺に近づいてくる。


「本当に、セーダイなんですの……?」


「身長、ポーリーンちゃんより少し高いくらいだね。たしかポーリーンちゃん160cmだっけ?」


 そんなに伸びてるの……。

 たしかに言われてみれば、皆との視線の高低差に不慣れな感覚がある。


「で、ですが、幾ら成長期だとしても、たった三時間で10cmも伸びるなんて……。お顔もその……」


「もしかして、顔も変わってます……?」


「うん、少し大人びた感じになったよ。……かっこいい」


 頬を染めながらシアが微笑む。


「声も少し低くなっていますね。益々、どう受け止めたらよいのか……」


 喉が渇いて声が枯れているだけかと思ったが、試しに発声してみるとたしかに声が低くなっている。


「あの、ステータスを見せて頂くことはできますか?」


 マズイぞ……俺のステータスには勝確BGMだの魔力無限だのがある……。どう考えても異常なヤツだ。


「えっと、それは……」


「ステータスは個人情報です。お気持ちは察しますが、証明にはそれが一番です」


 皆が混乱していると、様子を見ていたラヴィ先輩がエリア先輩に耳打ちする。お決まりの代返のようだ。


「え……、はい、なるほど……。――承知しました。シアさん、皆さん、今からラヴィ様がスキルを使用します。ラヴィ様のスキルは一時的に他者のスキルを借りるというスキルです。それでシアさんの魔眼をお借りしたいと仰っています」


 エリア先輩は『口外しないように』と付け加える。ラヴィ先輩は俺がセーダイ本人だという情報以外見ないと約束してくれた。


 他者のスキルを借りるスキルか。もしも制約がなければ俺と同じでチート性能だな。


「わかりました。それなら……」


 シアが俺を見て、同意を求める。

 俺は首肯し、指示に従ってラヴィ先輩と両手を繋ぐ――。


 ラヴィ先輩の体が淡く光ったと思うと……その姿がシアになっていた。


「し、シアさんが……二人いますわ……」


 まさか、姿まで……。

 シアとポーリーン先輩は驚いていたが、レニー先輩は既知の様子だった。


「それでは、セーダイ様のステータスを拝見させて頂きます」


 シアの姿になったラヴィ先輩はとても流暢に話していた。俺に向けられた瞳が一瞬、驚いてたように大きく開いた後、皆の方を振り返った。


「確認しました。この方はセーダイ・バツマル様で間違いありません」


 


 バーベキューグリルの横に座り、シアから厚めの肉、野菜、キノコの乗った紙皿を受け取る。


「ありがとう、シア。もうお腹ペコペコで……」


「まだ残ってるから、沢山食べてね」


 急に成長して体が栄養を欲しがっているのか、腹の減り方が尋常じゃない。成長した理由については、相棒が『スキルの性能に体が適応した結果』という言い訳で納得して貰うことができた。少々後付け臭いが、神様モドキのやったことをまともな言葉で説明できないしな……。


「しっかし、改めて見てみると……アレだね。セーダイ君、カッコよくなったよね」


「そうですね。少し頬がシュっとて肩幅も広くなって“男性”って感じがしますね」


 エリア先輩の身長は168cmなんだそうだ。今の状態でも届かない訳だが、これまでに感じていたお姉さん感が不思議と薄らいで、より親しみが増した気がする。


「疑ってしまったお詫びです。私が焼きますからドンドン召し上がってください」


 エリア先輩はエプロンを着用してトングを手にしている。


「そのカッコウ、なんか可愛いですね」


「――っ! ……か、可愛いなんて言われたの……初めて、です」


 何気ない一言にエリア先輩が顔を赤くする。俺がエリア先輩の意外な反応に驚いていると、シアがぷうっと頬を膨らませて俺の肩をポコポコ叩き出す。


 あれ痛くない……?


「わ、わたくしはセーダイの容姿などに初めから興味はありませんが、ま、まぁ、悪くないのではないかしらっ」


「でたー、ポーリーンちゃんのツンデレー! エリアも堕としてポーリーンちゃんも堕として、確実にハーレムの野望に近づいてるね!」


「は、はは、は、ハーレムぅ!? せ、セーダイ、貴方そんな野望を! 不潔ですわ! 淫獣ですわ! わたくしにどんなプレイを要求するつもりですの!?」


 淫獣の概念、異世界にもあるんだ……。

 シアの頬がリスみたいになって、ポコポコが普通に痛い。いつもと同じようなこと言っているのに、妙な反応が返って来て戸惑ってしまう。


「ラヴィ先輩もありがとうございました。助かりました」


「――っ!」


 俺が声を掛けると、ジュースを飲んでいたラヴィ先輩は顔を真っ赤にして首をブンブンと横に振る。やっぱり元の姿だと喋らない。


「まぁ冗談はさて置き、今日、セーダイ君はどこで寝ればいいのかな?」


 何故か一同がハっとした表情を浮かべている。


「なんで、皆、そんな顔をしてるんです? え……。まさか、一緒に寝る……とかじゃ、ないですよね?」


「ほ、他の班は男女でそれぞれにテントが用意されています……」


「じゃあ、うちは……? 俺にもテント、あるんですよね?」


「同じ……テント、です……」


 なんでぇッ!?

 

「あー、その。えっとね、皆セーダイ君のこと、弟みたいに感じてたし、シアちゃんはセーダイ君と一緒に眠ることに何の抵抗もないっていうからさ……」


「い、いいい、今のセーダイと一緒に眠るなんて、在り得ませんわ! そ、そんなことになれば、朝には赤ちゃんがデキているに決まっていますわ!」


「私は……、いいよ?」


 シアの『いいよ』、は『一緒に寝てもいいよ』なんだろうな。卑猥に聞こえるのは頭の中がピンクなポーリーン先輩の所為だ。けど、思春期男子のリビドーの上をあっさり往かれたお陰で逆に冷静になった。


「はぁ……。なら、俺はホテルに戻りますよ」


 席を立ちあがった俺を皆が安心したような、ガッカリしたような表情で見ている。正直俺もエッチなことを考えたり、妄想したりしているが、俺のような非モテが過ちを犯すというのはエロイベントを通り越してタイーホフラグだからな、自重、自重……。


「すみません、セーダイ君」


「セーダイ……」


 俺はシアの頭を撫でてグランピングエリアを後にした。




 ホテルに直行せず、俺は昼間座禅を組まされていた砂浜に戻ってきていた。

 空を見上げると、そこには見事な星空が広がっていた。


「あれは本物の空を投影しているのかな? それとも映像?」


 空を眺めて気持ちを落ち着かせると体術の構えを取り、幾つかの型を試す。


「リーチが伸びるな……。身長が高いだけでここまで違うのか」


 少し複雑な動きも体再現してくれる。

 それにしても白い人は『頃合いを見て実行する』とか言っていた気がするが、なんで急に……。


「そういえば、は、たッ! 成長痛はなかったな……よ、ほッ! 泥のように眠っていたのもあるけど、このレベルの急激な成長だと、ふ――ッ! 体が千切れるくらいの激痛があってもいいような、気もするが……はッ! サービスか、白い人?」


 大分今の体の感覚に慣れてきた。

 次は力を抜いて、目を閉じ精神を集中する。


「エリア先輩がやって見せた、魔力の放出……できるかな……」


 集中……。

 集中……。

 集中……。


 すると、自分の中に温度のない、しかし熱だとわかる何かがあることに気が付く。

 周囲の木々が突風が吹き抜けたかのように騒めく音を聞いた――。

 眩しさに目を開けると、自分の体から光が立ち昇っている。


「おぉ、これは……。ハハハッ、カッコイイな……。漫画のイメージは正解だったみたいだ」

 

 そのまま体を動かすと、明らかに身体能力に変化があることを実感した。


「ちょっと確認……と。ステータスオープン」



セーダイ・バツマル

称号:ヒーロー(異世界転生者)


HP  350(+570)

MP  45

力  34(+150)

守り 21(+124)

速さ 10(+80)

魔力 ∞


スキル:勝確BGM、魔力無限

習得:勝利武装Lv.2、魔力のオーラLv.1



「おぉ、確実に強くなってる! 素のステータス値上昇は体が大きくなった所為か。『魔力のオーラLv.1』というのはグラハム先生のシゴキの成果で……、後は……なるほど、括弧の意味はオーラを纏ったこの状態を意味しているのかもな」


 試しにオーラを解いてみると、素のステータスに戻った。

 変身して決闘する訳にはいかないもんな。これは便利だ。オーラを纏えば怪我をせず負けることもできそうだ。


「よし、次にグラハム先生が見せたあれを試してみるか」


 打ち込む岩もないので、海に向かって構える。


「打ち込む一瞬に力を籠める感じだったな」


 腰を落と、目を閉じて深く息を吐く。そして……。



 破――ッ!!!



 ドーンという破裂音が辺り一帯に響き渡り……海が抉れた。


「これ……人に向けて、使っちゃダメなやつじゃない……?」




 ホテルに戻るって鏡を見ると本当に顔まで変わっていた。ブサイクがギリギリブサイクくらいの変化だったが。それからステナビに送られてきた皆の下着姿の画像には完全にノックアウトされた。メール文には『おわび♥』とか書かれていて、ちょっとエッチな……いや、かなりエッチなポーズまでしている。こんなことをするのはレニー先輩だろうな。


 ……正直、助かりました。有難うございます。



 同時刻――。

 ガスマスクを付けた一団が巨大な鉄の扉の前に集まっていた。


「あと三つ通過したら、ラジアル・クラウン直下のエレベーターシャフトだ。セキュリティロボに気を付けろ」


「たしかにオートマトンは厄介ですが、対魔物調整ですからね……。上のヤツらときたら、相変わらず危機感ゼロで助かりますよ」


「機械任せで、もう下に降りることすらねぇんじゃねぇの?」


「お陰様でこちとらやりたい放題なんだ。俺としちゃこのままでいて欲しいぜ」


「そんなことよりさぁ、一人くらい攫っちまってもいいんだよなぁ? また壊れるまで犯してぇよ」


「ターゲット以外は好きにしろ。だが気を抜いて下手をこくなよ? 今回の相手はただの市民じゃないんだ」


 コンソールを操作する男がクリアの合図を送ると、鉄を引きずる音を立てながら扉が開いた。

 リーダーらしき男のハンドサインに従って一団は行軍を再開する――。


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