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グール鉄鬼  作者: 大麒麟
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第二十一話 目目連

 第20艦隊・真河豚にて。目の怪物騒動が起こっている最中、海太はまだあの倉庫にいた。

 彼は今寝ていた。あるゲームをぶっ通しでやり続け、少し疲れたと言うことで寝ていたのだ。彼がしていたゲームは、総時間300時間を超えたプレイヤーもいると言われる、やり込み型RPGである。


 あの箱にはこれ以外にも、進軍前に適当に中古屋を買い漁ったゲームソフトが50以上ある。

 その他、母が子供の頃からネットでやりまくった、フリーゲームのデータを大量に入れた記録媒体もある。

 個人製作のフリーゲームには、市販に勝るとも劣らない作品が無数にある。それらは現代においては、携帯ゲームにデータを写してプレイすることも可能だ。


 これならばしばらくここに閉じこもっていても飽きないと、引きこもり兆候的な発言をしていた。ブロックジャックのほうは、既に飽きていたのか、もう何も言わない。


 ルルルルルルルルルルルルッ!


 海太が持っていた無線機の着信音がなった。この音に一気に意識を覚醒させた海は、めんどくさがりながらも無線機を取る。


「誰だよいったい……艦長?」


 無線機のディスプレイには渡辺艦長の名前が載っていた。不思議に思って受け取ってみる。


『海太! すぐに艦長室に来てくれ! 緊急事態だ!』

「なっ、何です!? また一本だたらですか!?」


 艦長の切羽詰った表情が映されたことに、海太は瞬時に表情を曇らせる。本気で何か危険な事態が起こったのだろうか?


『目だ! 目がいっぱい艦内に出た! 良く判らんが、とにかく来てくれ!』

「はあ?」


 何だかよく判らない回答。目とは敵のことだろうか? するとずっと黙っていたブロックジャックが口を出してきた。


『多分コイツのことだと思うぞ?』

「うん?」


 ブロックジャックの機械触手が指し示す方向、そこには壁に張り付いている一個の瞳が、こちらをジッと見ていた。


「何だこいつは? これが敵? 何か被害でも?」

『いや、特に被害が出ていない……。私もどうすればいいか判らなくてな。霊体らしいが、こういうのに関われそうなのは、お前ぐらいしか思いつかなかった』

「俺、霊能力者じゃないですよ? ただのゾンビです」


 とりあえず艦長命令に逆らうわけにはいかないので、言うとおりに艦長室に行くことにした。そして無線機の通信を切る。


 ルルルルルルルルルルルルッ!


「えっ!?」


 無線機がまた鳴った。通話を切った直後だったから、ほぼ同時に来たのだろう。差出人を見ると、金野陽子と表示されていた。


「陽子?」


 今朝方別ればかりで、もう連絡が来るとは思わなかった。とりあえず受け取ってみる。


『海太、お願い助けて! 目がいっぱいで大変なの! いますぐ青鮫に来て!』


 まともな説明が全くない、さっきの渡辺艦長と似たような助けの言葉が飛んできた。まあ、すぐ近くでこっちを見ている目があるので、大体の理由がわかったが。


『おおう! お前モテるな! で、どっちをとるんだ?』

「悪いが俺じゃなくて、陽子がこっちに来てくれ。俺も艦長から呼び出し受けたばっかりだから。多分そっちの都合と同じだと思うから大丈夫だ」


 ブロックジャックの冷やかしを無視して、海太は陽子を逆に呼び出す応対をした。






 言われた通りに艦長室にやってきた海太・陽子・ブロックジャックの3人。

 艦長室には10にも及ぶ数の目が、壁に張り付いている。別にこの場所でなくても、途中で歩いてきた廊下の壁を見て、現状などほとんど判っていたが。


「見ての通り、何か変なのが艦内あちこちに出てきてな。他と連絡してみたら、艦隊の半分以上の艦にこいつは出てきているそうだ」

「……半分、300艦分か。大所帯ですね」


 一つの艦に、2000の目が出てきたと仮定すれば、艦隊は総勢30万人分の視線に晒されていることになる。これは落ち着かない。


「私もこいつらにお風呂を覗かれちゃって、すごい怖かったよ……」

「お前を覗き? 物好きだなこいつら」


 改めてこの目の怪物の姿を見る。目達はこっちをじっと見ているだけで何もしない。

 未だ物理的な被害届はどこの艦にも出ていない。せいぜいこれに驚いて、ずっこけて怪我をした兵士がいたくらいだ。


 霊感のない人間にも見えるぐらいだから、そこそこ高位の霊だろうが、物質化して物に触れるほどではない。

 もし物質化した霊が攻撃してきたならば、こっちも反撃すれば話は片付く。だがこれは物質化していないので、攻撃が効かない。それ以前に攻撃など何もしてこないから、こっちから手を出す大義名分がない。


 通常こういう霊が、軍に迷惑をかけるケースは想定されていない。当然霊専門の対策案などもない。ある意味実体のある敵よりも、やりにくい相手である。


「しかしさあ~。さっきも言ったけど俺は別に霊能者じゃないし、こんなことに呼び出されても……」


 試しに手で目を触れみる。眼球に触れるというのは、普通はやりにくいものだが、相手は霊体と判っているので、特に抵抗はない。


「!?」


 何もないと思っての行動だったが、意外な反応が出た。目に触れた瞬間、海太の頭の中に何かが流れ込んできたのだ。


《………お前は人ではないな?》


 それは明確に、こちらにも理解できる人の言葉であった。


「うわあっ!?」


 予想外すぎる出来事に、海太は思わず手を離した。この挙動に他の3人も驚く。


「ちょっと!? どうしたの、海太?」

「触ったら声が聞こえた・・・・・・」

「声? マジか?」


 艦長が試しに目に触れてみる。陽子もそれに続く。そしてしばらくジッとしたが・・・・・・


「いや、何も聞こえないぞ? 金野はどうだ?」

「私も何も・・・・・・本当に聞こえたの?」

「ああ、本当だよ・・・・・・お前は人ではないとか・・・・・・」


 同じように触手の先を当てていた、ブロックジャックが話しかけてきた。


『グールになった影響で、霊体への感応率が上がったのかもな。海太、もう一回触ってみろ』


 言われた通りに再び手を当てる海太。するとさっきと同じように、頭にどこからか言葉が流れ込んできた。


《グールとは屍人のことか? どっちにしろ珍しいな》


 確かに知性を持った人の声だ。しかもグールという単語を口にしている。

 これが目の怪物の言葉だとしたら、相手は人の声がちゃんと聞こえているということになる。


 海太は頭の中に念じるような形で、相手に自分の意思を届けることを試してみた。


(お前達は何だ? 艦隊に何のようだ?)

《我々は目目連(もくもくれん)。目的は人間を見ること》


 目の怪物=目目連は、渋い男性の声に聞こえる思念語で答えてくる。


(見る? 見てどうするんだ?)

《どうもしない。ただ見るだけが我々の存在意義》

(存在意義って・・・・・・どうしてそんなものに?)

《判らない。我らが自分という存在を認識したときには、既にそうなっていた。いつからこうしているのかは、よく思い出せない。あなたの仲間達を怯えさせたことは詫びる》


 海太は目のついた壁に手をついたまま、(他人が見た限りでは)何もせずジッとしている。この様子に、陽子は少し心配げに声をかけてきた。


「ねえ、海太。大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。今会話中だ」


 そして3分ほどして。ようやく海太は壁から手を離した。それと同時に、部屋中にいた目目連が、蝋燭の火のごとく、フッと掻き消える。


「交渉成功したぞ。今度からは少しずつ、一日10隻ぐらいの度合いで見に来るそうだ」

「『「はあっ?」』」




 その後その言葉通りに、目目連達は一日10隻の割合で出没した。

 600隻いるから、60日の範囲で周回することになる。結局彼らには実害がないとして、司令部がこれの駆除を検討することなく。

 当選してしまった艦は、各々一日だけ、視線と格闘する義務を背負うことになった・・・・・・







 ちょっとしたおまけ話。第2艦隊のある艦にて。


 先程目目連相手に授業をしていたイエロー・ワシントン伍長。深夜になると何故か目目連は姿を消し、艦に平和が訪れた。

 彼女はもうやることがなく、寮室に戻って睡眠に入ろうとするが・・・・・・


【これは?】


 3段ベッドの2段目。自分の寝床の枕元に、何やら手紙のような物が置いてある。その手紙の表紙には“レポート”と書かれていた。


(そういえばさっき目達に、レポートを書けとか行ったな・・・・・・まさかね・・・・・・)


 試しにその手紙の中身を見てみる。内部には日本語と英語の2種類の文章で、それぞれこう書かれていた。


《先生の説は半分正解。早く帰らないと、みんな食べられちゃいますよ by 鶯》


目目連:本当は障子限定に出てくる妖怪。本作の都合で、こちらは壁ならばどこにでも出てこれる設定。

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