その1 祖父の戦争体験談・聞き書き
もうひとりの祖父、その戦争・戦後体験談です。
私の家系はどうも長生きが多いようで、じじばば連中軒並み90歳を超えて来るのですが、この祖父だけは早くに(70代で)亡くなりました。
そうしたわけで、ほんの子供のころの記憶しかありません。
枯木のような人でした。
痩せてもいましたが、「下から上まで中心に、ぽっかり穴が開いている」。
そんな印象だったもので。
朝から日本酒飲んでいる。
焼酎を割るということを知らない。
酔って機嫌が良くなることもなければ、怒鳴ることもない。
そうして一日を過ごしていました。
死因は膵臓がんでした。
若いころはもう少し活発だったそうです。
人並みには笑い、暴れ、溝に転がり落ちたまま眠っては雪に降り積もられ、祖母に怒鳴られる。
酔ったまま川に出て、釣った魚を炉端で炙ってもう一杯。
時おり震えていたそうです。
南洋でマラリア背負ってきたからと。
釣りのついでにヒルを拾って帰り、戦傷にあてがっては血を吸わせていたとか。
それでもう一度南洋に向かうはずが、輸送船を沈められ海に投げ出されたと。
板切れにつかまって浮かぶこと一夜、拾われて帰って来たところで終戦を迎えたそうです。
船が沈められてなかったら帰ってないだろうな。
昼だったら陽射しで体力もたなかったろうな。
そんなことを言っていたと。
話を聞いたのは亡くなった後のことです。
私には祖父が枯木に見えていました。
ヒルを用いた瀉血、民間療法だそうです。
マラリアを抑える効果はないとのこと。




