第1章 第1項 Sランクパーティー『金獅子の牙』からの無慈悲な追放宣告と、暗闇の底へ突き落とされた荷物持ちの絶望
第1章 奈落の乾杯と毛玉
第1項 Sランクパーティー『金獅子の牙』からの無慈悲な追放宣告と、暗闇の底へ突き落とされた荷物持ちの絶望
「おい、クロード。お前はここでクビだ」
その言葉は、ダンジョンの湿った空気よりも重く、冷たく俺の耳に響いた。
場所は世界最難関ダンジョン『アビス・ゲート』の第九十九階層。ボス部屋である『嘆きの門』の巨大な扉の前だった。
俺、クロードは、自分の身長よりも巨大なバックパックを背負ったまま、呆然とリーダーのレオンを見上げた。
「ク、クビって……こんな場所でですか? 冗談ですよね、レオンさん」
「冗談でこんな深層まで役立たずを連れてくるかよ。いいか、これからのボス戦、ポーションの備蓄がカツカツなんだよ。お前のそのデカい荷物袋の中身、全部置いていけ」
レオンは黄金に輝く剣の柄を叩きながら、蔑むような目で俺を見た。後ろに控える聖女や魔導師の仲間たちも、誰一人として俺を擁護しようとはしない。むしろ、厄介払いができて清々したという顔だ。
俺はSランクパーティー『金獅子の牙』の荷物持ちだ。戦闘スキルは皆無だが、重い荷物を持って歩き続ける体力と、どんな環境でも酒を美味く飲むための『悪酔い耐性』、そして微弱な『魔力感知』だけが取り柄だった。
「荷物を置いていけって……俺の食料も、帰りの転移石も入ってるんですよ!?」
「知ったことか。今まで俺たちの活躍のおこぼれで飯を食ってきたんだ。最後くらい役に立て」
レオンが目配せをすると、前衛の戦士が俺の腹を蹴り上げた。
「ぐえっ……!」
息が詰まる。よろめいた拍子に、背負っていたバックパックのベルトを切断された。ドサリと重い音がして、俺の唯一の命綱が奪われる。
「さて、ボス部屋の門が開くには、生体エネルギーの捧げ物が必要らしいんだわ」
聖女がクスクスと笑いながら言った。
嫌な予感が背筋を駆け上がる。俺は後ずさろうとしたが、足元はすでに断崖絶壁だった。九十九階層のさらに下、未踏破領域である百階層へと続く、底なしの亀裂。
「囮になって魔物を引きつけてくれよ。その間に俺たちは栄光の百階層へ一番乗りだ」
「や、やめろ! やめてくれ!」
「あばよ、雑用係!」
レオンの嘲笑と共に、強烈な衝撃が胸に走った。突き飛ばされたのだ。
視界が反転する。遠ざかる仲間たちの顔が、歪んで見えた。
俺の体は重力に引かれ、光の届かない漆黒の闇へと吸い込まれていく。
「ああああああああああッ!」
叫び声は誰にも届かない。風切り音だけが耳をつんざく。
これが、俺の人生の結末か。
安月給でこき使われ、ポーション一本の価値もないと切り捨てられ、最後はゴミのように捨てられる。
悔しい。怖い。死にたくない。
強烈な絶望が、落下する俺の心を塗りつぶしていった。




