表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腹ペコ異世界帰還者、S級モンスターを食材としか見ていなくて話が合わない  作者: フーツラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/9

第9話 オーク肉でカツカレーを作ると決めた男

 日が暮れ、夜が深まり、出歩く人が少なくなった頃。


 俺はするりと実家を抜け出し、上野駅から山手線に乗った。


 車内では酔い潰れたサラリーマンが股を大きく開いて座り、酒臭い寝息を吐いていた。


 異世界であれば身ぐるみ剥がされた上に、男色家にケツを掘られているだろう。無防備すぎる。


 日本でよかったな、と心の中で呟き、少し離れた席に座る。そして、新宿へ。


 山手線は定常通りの速度で進み、空腹で気持ちの逸る俺の期待には応えてくれない。


 腹が鳴る。


 母親の作った夕食を食べはしたものの、やはり、腹は膨れない。


 俺を満たすには魔力を含んだ食材が必要だ。


 空腹は情緒を著しく乱す。


 酔っ払いの酒気を含んだ息が鼻に届く。


 俄かに湧き起こる殺意。


 慌てて抑える。


 落ち着け……。俺は今からカツカレーを食べるんだ……。


 カツカレーを食べる前に、無意味な殺生を働くやつがあるか。


 ふっと息を吐いて立ち上がり、隣の車両へと移動する。


 移動した先では、まるまると太ったTシャツ姿の男がヘッドホンをして、スマホの画面を真剣にみていた。


 一瞬、オークと見紛い、無意識に拳に力を込めた。


 違う違う。ただ、怠惰な人間だ。あれはオークではない。


 息を吐き、少し離れた席に座る。あまりの空腹に幻覚まで見え始めている。


 急にカツカレーの準備が不安になり、俺は膝の上のリュックを漁った。


【カツカレーの材料】

 ・市販のカレーのルー

 ・玉ねぎ:一個

 ・にんじん:一本

 ・じゃがいも:一個

 ・水のペットボトル

 ・塩・こしょう:少々

 ・小麦粉:適量

 ・卵:一個

 ・パン粉:適量

 ・揚げ油:ボトル一本


 完璧だ。


 これに白米の詰まったタッパーと、異世界のアイテムボックス内に収納してある調理器具を合わせれば、完璧な布陣である。


 あとは、オーク肉を第五階層以降で手に入れるだけだ。


 ちらりと、車内の案内表示を見る。まだ巣鴨だ。


 巣鴨らしく、隣の席に老翁が座った。


 その手の爪に違和感がある。まさか、年老いた男がマニキュアか……!? 二十年の間に、爪を飾る文化が老人にも……!? と注視する。


 ……違った。内出血だ。老翁は手をドアにでも挟んだのだろう。


 俺は心を落ち着けて、一駅一駅丁寧に止まり、遅々として進まない山手線の案内表示を見つめていた。



#



 新宿駅へと向かう人々に逆らうように歩き、ダンジョンへと。


 初日よりも時間が早いせいか、ダンジョンの近くになってもたまに人とすれ違う。


 スキル【感知】を発動させ、人の気配を探り、避けるように路地に入った。


 そしてリュックから鉄仮面を取り出し、装着。


 これでよし。


 ドローンカメラで撮られようと、身元は割れない。安心して、食糧調達に集中出来る。


 路地から駆け出し、そのまま鉄の壁を越える。そして、ぽっかりと空いた新宿ダンジョンの入り口に滑り込んだ。


「真っ直ぐいって、左」


 日中、調べたダンジョンのルートを脳内に描く。


 有り難いことに、新宿ダンジョンの情報はネット上のwikiにまとめられていた。


 二股を行った先はゴブリンルート? とか呼ばれていて、延々とゴブリンが出てくるらしい。


 一方、先に進む意味での正解ルートは左。


 俺は二股を左に進む。

 少しいくと、神秘的な空気に満ちた部屋があった。


 ここは、【転移の間】と呼ばれている。過去に到達した階層に転移出来る便利施設だ。


 異世界のダンジョンにはこんな部屋はなかった。異世界の冒険者が【転移の間】の話を聞けば、「ズルい! 」と非難してくるに違いない。


 そんなことを思いながら、【転移の間】の横を通り抜ける。


 次回からすぐに第五階層に行けるように、今日は効率を重視して進む。


「よし……! 」


 俺は一段ギアを上げ、走り出した。


 トップスピードに乗った俺の背後で、追尾してきた監視ドローンが規格外の速度に追いつけず、まるでその脚力に驚愕しているかのようにウィィィンとモーター音を悲鳴のように上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ