37 告白……だと!?
文化祭2日目の午後。
中庭のステージでは軽音楽部によるライブ演奏で大いに盛り上がっていた。吹き抜けから見ていた野木たち4人も例外ではない。
野木とあまねは音楽に合わせて腕を振り、その隣でさくらと晴大は小さく手拍子をしていた。
そんな中、野木は下から送られる強烈な視線に気がついた。
(あ、あいつら……!!)
それはバスケ部のチームメイト達だった。彼らはニヤニヤと揶揄うような笑みを浮かべてこちらを見ていた。
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文化祭1日目。
2年2組の演劇が無事に終わり、各々が自由に文化祭を楽しんでいた。
「んで、結局お前はいつ告白するんだ?」
突然投げかけられた言葉に、野木が思わず「はぁっ!?」と叫ぶ。
野木はバスケ部のチームメイト達と文化祭を回っていた。すると突然、同学年の男子が揶揄うように言ってきたのだ。
「い、いやいや何のことだよ!!」
野木が必死に誤魔化そうとするが、野木を取り囲むようにしてチームメイトは言う。
「あのなぁ、他の部員に新宮さんを紹介するときのお前の顔、マジでニヤついてるから。マジでおもろい」
「いや本当に。お前、俺の彼女ですって言わんばかりにアピってくるじゃん。けど毎回、俺のクラスメイトで中学から一緒のとかナントカカントカ言うの長いんだよ。もういっそ、彼女ですって言えよ」
そう言って詰め寄る部員達に、野木は「うぅ……」と縮こまる。
「だってさ、委員長は俺のこと、多分仲の良い友達ぐらいにしか思ってないしさ……」
「「「はぁぁぁぁぁ!!!???」」」
有り得ない、と言わんばかりの表情の部員達に、野木は思わず頬を膨らませる。
「いや違えんだよ、だってほら、委員長は優しいから、俺が一方的に喋っても応えてくれるけどさ、実際はほら、きっとウザいとか思ってんだよ!!」
野木の必死の形相に、部員達は吹き出した。
「馬鹿じゃねぇの、あれは絶対お前のこと好きだよ」
「本当にな、何なの? お前らピュアなの?可愛すぎん?」
そう話していると、3年生のキャプテンが威厳たっぷりの面構えでこう告げた。
「おい野木。お前、明日のライブに新宮さんを誘え。そんで、告白してしまえ」
「……え、え!?」
―――
――
―
そして現在。
相変わらず曲に合わせて盛り上がっているあまねをチラリと見て、野木は1人で顔を赤らめる。
(どうしろっていうんだ……!!)
野木は身体を横に揺らし、悶々としている。どうするべきか。
(この曲が終われば今日のライブは終わりだから、告白するとしたらそこだよな。いや、待て待て。告白?本当に? 告白!?)
もう少しで曲が終わる。クライマックスで場の盛り上がりは最高潮だ。そんな中、野木は1人唸っている。
それに気付いたあまねが、すかさず「大丈夫?」と声をかけた。
「えっ、あ、うん、大丈夫!!」
(どうする、どうする――)
―― 曲が終わった。
「……終わった」
野木が棒立ちで呟くと、隣のあまね達が不思議そうに首を傾げる。
「あんた、さっきから変よ。いつも変だけど。どうしたの?」
あまねの質問に、野木は生唾を飲む。
「……委員長」
突然の真剣な眼差しに、あまねは思わず構えた。
「何よ……」
その2人の様子を、興味津々にさくらと晴大は眺める。
「何だろう? ねぇ、もしかしてさ……」と言うさくらに、「うん、絶対そうだよ」と答える晴大。
「ちょっと野木、どうしたの」
すると突然、野木があまねの両手を掴んだ。
「ぎゃっ」
あまねの悲鳴と共に、周囲の視線も徐々に2人に集まってきた。
「……」
(本当に言うのか? いや、でもいい加減言わないとだよな)
そう考えていると、突然野木の頭にある懸念が浮かんだ。
(これって、俺がしたいからしてることなのか? アイツらに唆されてしてることじゃないのか?)
そう思い、チラリと下を覗く。相変わらず部員達はそこにいて、こちらを見上げている。ニヤニヤと笑いながら。
(……なんかヤダ。すっげぇ嫌だ。こんなの、委員長のことを見せ物にしてるみたいで、絶対嫌だ!)
「委員長、行こうぜ!!」
野木はそう言って、あまねの手を掴んだまま走り出した。
「ちょ、ちょっと野木!!」
2人は廊下を駆け抜けた。あまねは野木に引っ張られる形で走る。
野木が止まったところで、あまねも息を切らしながら止まった。
「体育館まで来ちゃったじゃない……なんで……はぁ、疲れた……はぁ」
「ご、ごめん。走らせちゃって」
2人は体育館が開いていることを確認し、中に忍び込んだ。そしてそのまま、壁にもたれながら座り込んだ。
「……こんなの、先生にバレたら終わりじゃない」
「本当だな」
「全部、野木のせいにする」
「まぁ、実際そうだしな」
2人は静かに笑った。
「んで? どうしたの。さっき、何か言おうとしてたでしょ」
「お?んーそうだな。忘れちゃった」
「そんなわけないでしょ。誤魔化すんじゃないわよ」
そう言ってあまねは、野木にデコピンを喰らわした。「いてっ」と小さく叫ぶ野木を見て、あまねはふっと笑う。
「結局私たち、体育館に縁があるのね」
「そうだな。出会ったのも体育館だし」
それから暫く、2人は静かな体育館の片隅で他愛も無い話で盛り上がった。
「さっき走ったので何キロ痩せたかしら」
「委員長、これ以上痩せたら骸骨だぞ」
「はぁっ!?」
ペロッといたずらっ子のように舌を出し、走って逃げる野木を、あまねは怒って追いかける。
だが、2人の顔には確かに柔らかな笑みが浮かんでいたのだった。
青春してんなぁ。




