43.君の名は
ペガサスに乗った俺達はゴルゴーンの里へと向かっていた。彼に乗るのは二回目だがやはり空を飛ぶのは緊張する。あとさ、アスが降り落とされないためとはいえ、ぎゅっと抱き着いてくるからちょっとドキドキしてしまう。なんで女の子ってこんなにいい匂いがするんだろうね?
『はぁー、このエロ童貞は……ここは、ペガサスに乗れるという名誉を楽しむところだろうが』
「うるさいな、馬刺しにしてもらうぞ!」
「ん……何か言った……?」
心を読まれるのはマジで不愉快だなぁと思いながら、くだらない事をいうペガサスを蹴飛ばす。アスが疑問の声を上げたので誤魔化すように質問をする。彼女は俺を幼馴染として、家族の様に思ってくれているのに、変に意識していたことを知ったら申し訳ないからね。
『マジか、貴様、マジか? ちょっと鈍感すぎないか? もはや、病気だぞ。ちょっとこの猟奇女が可哀想になってきたぞ』
「それでアス、エウリュアレさんは大丈夫なのか?」
「問題ない……出血が多くて衰弱してるだけ……傷も癒したから、栄養のあるものをたくさんあげて寝かせればいい……」
「命に別状はないってさ、良かったね。ペガサス」
『ふむ、感謝するぞ、下等なる人間よ』
こいつ本当に感謝してんのか? と思いつつも俺は安堵の吐息をもらす。ペガサスも同様なようで、鼻をいななかせて、足を上げるものだから、振り落とされまいと、アスがぴったりと抱き着いてきたおかげで、さっきより、彼女の柔らかい感触を感じてしまう。ちなみにエウリュアレさんは俺が抱きかかえるような形で支えている。なぜかアスが嫌そうな顔をしていたけど、アスじゃあ、支えられないんだよね。エウリュアレさんもかなり美人なんだけど、この人も、他のゴルゴーン同様に、多分ネズミを生きたまま食べるんだなって思うと、冷静になれるよね。
「そういえば……ペガサスって種族名だよね……名前がないと呼びにくくない……?」
「確かにそうだね、お前、名前とかあるの?」
『いや特にはないな……意思疎通できる相手は限られていたからな。だが、我が自分で考えていた名前はあるぞ。シュナイゼル=フランソワ=ル=ブレイズ3世とかどうだろうか? 中々かっこいいと思うのだが……』
満足そうに鼻を鳴らすペガサス。てか、くっそ長いうえに呼びにくいんだけど……面倒だからアスに決めてもらおう。
「名前ないからアスに決めてほしいってさ」
『おい、貴様!! 我の名前は……』
「うーん……じゃあ、馬刺しとかどうかな……」
『は? それは貴様が食べたいものであろう。いってやれ、シオン。我の名前はシュナイゼル=フランソワ=ル=ブレイズ3世であると!!』
俺は笑顔で答えてやった。
「馬刺しもその名前で気に入ってるって。よろしく、馬刺し」
「そう……よかった……よろしくね……馬刺し」
『おい、だから、我の名前は……ひぃ!? だから我を触りながら馬刺しの事を考えるなといってやってくれぇぇ!』
そう騒ぎながら里の上空に戻ってきた俺達は異常事態に気づく。そこらかしこで戦闘音が聞こえるのだ。でもさ、おかしくない? 俺達の方は数が少ないのになんでそこらかしこで戦う音が聞こえるんだよ!?
「何が起きているんだ? 俺が出た時は膠着状態だったのに……」
「ゴルゴーン達の様子がおかしい……」
様子を見る限りメデューサの説得は失敗に終わったのだろう。ゴルゴーン達とシュバイン達が斬り合っている。それはわかる。でも食糧庫に引きこもっていたゴルゴーン同士も殺し合っているのだ。なにがおきているんだ? 俺達は急いでメデューサ達のところへと向かった。
「おい、みんな大丈夫か?」
「シオンか、姉様を連れて帰ってきてくれたんだね!!」
『帰ったか、シオン!! 悪いがこいつらに手加減はあんまりできないぞ』
メデューサの周りにはシュバインにトロルドとその仲間のトロルたちがゴルゴーン達と戦っている。なぜか身体能力が上がっているゴルゴーン達に苦戦を強いられているようだ。
「一体何があったんだ? あきらかにおかしいんだけど」
「とりあえずいったん引くぞ。彼女たちはどうやら近くの者たちに襲い掛かるようだ」
今ならこちらに向かっているゴルゴーン達は少ない。何とか撤退できるだろう。俺達は追ってきたゴルゴーン達を振り払って距離をとることに成功した。
そして里の開けたところで話し合いをすることにした。
ペガサスの名前はこれで確定です。リゼロのパトラッシュみたいなノリですね。
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