18.シュバインとトロル
『ふ、お前やるじゃねえか、俺の故郷のダンジョンにもお前レベルのやつは数人しかいなかったぜ。元リーダーとパーティーのカサンドラくらいか』
『お前強い……お前、俺のライバル……また、戦おう……』
言葉が通じないようはずなのに、なぜかわかり合って、握手をしている二匹の魔物がそこにはいた。オークにしては小柄なシュバインと、体が大きいトロルが握手している姿は中々異常だった。いや、こいつただのトロルじゃないな。トロルウォーリアーじゃん。
トロルウォーリアーとは通常のトロルに比べて、身体能力が高いうえに、武器を使う程度の知能を持つトロルの上位種である。強さはBランクの中堅くらいか。そんなことはいいんだよ!!
「あほかぁぁぁぁ!! 静かにしとけっていっただろ!! 村の人にお前を討伐してくれとか言われたらどうすんだよ!!」
俺はなにやら強者同士で、分かり合うみたいな感じのやり取りをしているシュバインにつっこみを入れるがあっさりと回避された。そして彼は豪快に笑いながら答える。
『おお、シオンか!! 悪い悪い。つい強そうなやつがいたんでな……それにその時は、カサンドラと戦えるんだろ? 悪くない。ある程度戦ったら、適当な理由をつけて俺を仲間にしたとかシオンが言えば解決じゃないか』
「確かに、最近模擬戦ばっかりだったものね。あなたも強くなったかもしれないけど、私も腕をあげているのよ」
『お前ら……仲間……? というかお前の言葉わかる……なんで?」
人と魔物が親しげに会話をしているのに怪訝な顔をするトロルウォーリアー。
というか、なんかカサンドラもシュバインよりの考えなの? ちょっとショックなんだけど。 それにしてもアスやカサンドラと言い、喧嘩すると仲良くなるものなのだろうか? どうでもいいけど、トロルの喋り方がアスとかぶるし、小柄だけど身体能力の高いっていうのが、カサンドラとシュバインでかぶっているな……案外似たもの同士なのかな。
「シオン、今失礼な事を考えていない?」
「いや、何のことかな?」
睨みつけてくるカサンドラから俺は目を逸らす。それはいいとしてこのトロルウォーリアーどうしよう? なんかあんまり敵って感じがしないんだが……敵意もないようだし、話を聞いてみるとしよう。
「癒せ!! ライムはシュバインの方を頼む」
『了解!! やっと僕の出番だね』
『おお……傷が癒える……人間……なんで俺を癒す?』
困惑しているトロルウォーリアーに俺は笑顔を浮かべて答える。
「喋れるのは俺のギフトだよ。傷を癒したのはうちの仲間が迷惑をかけたみたいだからね。あとは情報が欲しくてさ。最近変わったことってなかったかな?」
『カサンドラ!! トロルの戦い方はすごかったぞ!! お前のスキルならばあれをマネできると思う!! ちょっとやってみてくれ』
「へえー、面白そうじゃない。仲間と技を考えるとか憧れてたのよね」
情報収集をしている俺の背後で、シュバインとカサンドラが新技で盛り上がっている。あの二人なんだかんだ気があうんだよなぁと思いながら俺は会話を進める。
『変わったこと……ゴルゴーンの里が騒がしい……俺たちの仲間が何人か捕らわれた……あと、人とゴルゴーンがよく一緒にいるのを見る……』
「へぇー、ゴルゴーンの里で何かあったのかな? あと、若い男とゴルゴーンがいるのはツンデレとドMがいちゃついてるだけだから気にしなくていいよ」
なんだかんだメデューサとペルセウスのやつしょっちゅういちゃいるんだなぁと思っているとトロルウォーリアーは首を振った。
「ゴルゴーンの里は何かを警戒している……あと、一緒にいたのは若い雄と雌じゃない……老人と、フードをかぶったゴルゴーン……なんか話してた……」
「若い男女じゃない……?」
俺はトロルウォーリアーの話を整理する。老人と言うのは村人の誰かだろう。フードをかぶったゴルゴーン……確か行商人もフードをかぶってるって言ってたよね。
「なあ、君たちは、もしかしてゴルゴーンか人間かって外見でわかったりするのものなの?」
『当たり前……匂いが全然違う……』
「ありがとう、参考になったよ」
『頼む……人間……何か分かったら教えてほしい……あいつら大事な仲間……」
そういうとトロルウォーリアーは俺に頭を下げる。俺は彼の行動に、驚きを隠せない。トロルウォーリアーは通常のトロルより頭はいいが、人に頭を下げるなどという行動をするとは思っていなかったからだ。俺が今まで戦ってきたトロルは食う事と寝る事しか考えてなかったからね。でも、こいつは違う。俺を対等な存在としてみて、頭を下げたのだ。ならば俺もそれ相応の対応をすべきだろう。
「任せてくれ、トロルをみつけたら君に教えるよ、俺の名前はシオンだ、よかったら名前を教えてくれないか?」
『俺の名前は……トロルド……。この周辺に住む……トロルの長をしている……といっても……十体くらいしかいないが……』
「そうか、色々情報をありがとう、トロルド。もしかしたら君たちの力を借りるかもしれない。その時は頼む」
俺がお礼を言って会話を切り上げると背後で一回爆音が鳴った。え? 何の音? なにがおきたの? 音がした方をみるとカサンドラとシュバインが何やら騒いでいる。
『さすがカサンドラだな!! また強くなったぞ』
「ふふ、新必殺技ってテンション上がるわね」
「え、お前ら何やってんの?」
俺の言葉に彼女は得意げに胸をそらしていった。そして刀を構えて得意気に言った。
「新必殺技を編み出しのよ、見てなさい。二連斬<フランベルジュ>」
するとカサンドラは、刀を振り下ろすと同時にスキルで刀身の先が爆発してすぐさま切り上がる。振りあげる時の隙がなくなるので、乱戦では役に立つし、意表もつけるだろう。
でもさ、確かにすごいけどさ。今やることじゃなくない? 俺必死に情報集めてたんだけど……
「フフ、シオンががんばってるから、私も得意分野で頑張ろうと思って……パーティーは役割分担が大事だしね!」
『いいなぁ、俺も新必殺技欲しいなぁ、それにしてもトロルの超筋肉による技を爆発でマネするとはさすがだな。本当にできるとは思わなかったぞ!!』
「ああ、おめでとう……カサンドラ……」
無茶苦茶嬉しそうに俺を見つめてくるカサンドラに俺は文句をいうことはできなかった。ていうか薄々思っていたけど、カサンドラってシュバインに負けないくらいのバトルマニアだよね……とりあえず、俺は帰宅してからアスとペルセウスとも今後について、相談をすることにしたのだった。
なんか仲間になりそうなやつがごついキャラばかりですね……異種族レビュアーズみてちょっと勉強してきます。
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