EP-3 エイル
彼は当然のように、夜になっても帰る気配もなくテレビを見ている。
「ねえ、あんた、帰らなくていいの?」
「家の人が心配してないの?」
「僕、エイル」
突然、私の言葉にむくれたように返してきた。
「僕は魂導天使」
「天へ帰る魂を導く天使だよ」
再びエイルは嬉しそうに話した。
「……。」
なるほど。
中二病をこじらせた少年か……。
綺麗な顔をして質が悪いわね。
そもそも何で私なんだ?
三日で死ぬ?
この前の会社の人間ドックでも何の異常も無かったのに。
ちょっと真実味の無い設定ね。
クンクンッ
エイルは少し部屋の匂いを嗅ぎながら口を開いた。
「この部屋、眞琴さんの良い匂いがいっぱいだね」
こういうところは少し苦手かもしれない。
赤い顔をしているのが自分でも分かる。
「でも、それ以外の人の匂いがしない」
「この部屋には誰も来ないの?」
その言葉に妙にイラッとした。
「それの何が悪いの!」
私は少し強めに言ってしまった。
「ううん」
エイルは少し瞳を伏せて目を逸らした。
私は今年で三十二。
年齢イコール恋人いない歴。
勿論、恋をしたことは何度もある。
でも、その度にフラれる……。
ぱっとしない女。
それが私。
エイルの言葉は、認識したくない事実を言い当てられたように聞こえた。
でも私は知らなかった。
エイルがずっと前から私を見ていたことに。




