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MOZA-CHAN -モザちゃん-  作者: モザの者
第二章 ~蒼き世界アオタン~
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第七話 "暗雲、裏で手繰るもの"

「あら、案外早く気づかれてしまったのね」


後ろから、あの青い着物を着た女性が近づいてくる。その姿は、紛れもなく…


「あ、あなたは…アオ…さん…!?なんで今、ここに……」


「アオ…君は…………」


「ふふふ、つまり、()()()()ことよ」


突如となかわ達の目の前に現れたアオが、妖しく目を光らせる。

同時に、となかわ達の周囲を蒼い糸のようなものが取り囲み始めた。


「な、何ですか、これっ…!?」


「…!!“蒼糸”か…!!」


「そうよ。君達にはここでじっとしていてもらうわ」


「……これ、斬れ…ないっ…!!アオさん!!いったい私たちに何を…!!」


「ふふ、ちょっと閉じ込めておくだけよ。残念ながら、“蒼糸”の素材は異世界の素材から作られている。この世界の()()では壊すことはできないわ。となかわ、あなたの“滅びの力”もまた然りよ」


とんでもない、変貌ぶりだ。まさに邪悪そのもの。依然妖しく(ひか)る眼。俄然猛りだす負の闘気(オーラ)。一転、窮地に立たされてしまった。


「まずい…何をする気かわからないけど、私、このまま黙ってみてることしかできないの…!?」


「……それはどうかな?」


静かに呟くと、となかわが二本の剣を取り出す。

そして、目の前に小さく魔方陣を描き———


<“(ルヴァ)融合転剣(・フュージェネリック)”>


「む…………!」


となかわと二本の剣を中心に、辺りが光に包まれた。アオも思わず目を細める。


< “ 鳳 凰 律 剣 ド ル ・ エ グ ジ ル ” >


「律剣ドルボロスと鳳凰剣エグジル・プロミダーゼ…この二つの剣を融合させたのさ。すまないが、ここでじっとしてるわけにもいかないからね。」


「…確かにとてつもない力を感じるが…!“蒼糸”は破れまい!」


「破れるさ、僕たちならね。…モザちゃん!!」


「はいっっ!!!!」


モザちゃんは深く集中し、真打“村雨”に金喪斬刀を発現させた。

そして———


「「 <“滅聖(ジルヴァ・)双龍王斬(ニヴラゴ・ドルガロア)”> っっっ!!!!!!!!!!」」


蒼糸でできた籠の中で、一対の龍が()()()()()と駆け巡る。二人の剣戟は幾層もの螺旋を描き、ついに蒼糸を()()()落とした。


「な……!!!!」


「異世界のモノを打ち砕けるのは、理に外れた者か、“神”のみ。この鳳凰律剣は、本当に焔神(セラブォラ)を封じ込めているんだよ。」


となかわが、その輝きのままに、一歩前進する。


「加えて、“金喪斬刀”の光の力。理を超えたこの力は、有象無象すべてを打ち砕く。」


そして、モザちゃんもまた一歩踏み出す。


「そして、僕たちにとっては異世界のモノの相手なんて()()()()ものさ。僕たちは単独でも理から外れた力を持っている。そんな僕とモザちゃんを封じ込めようとしたのが運の尽きだったね」


二人、足並みをそろえ、輝く剣をアオに突き立てる。


「…!!」


「とりあえず、来てもらいますよ。正直に目的を話してくれれば、悪いようにはしませんから」


二人がアオを拘束しようと近づいた、その時、

ピチュン、と鋭いレーザーのような光が二人に放たれた。


二人は寸前で躱した。…油断していれば、やられていた。


「私は救助します。アオ。あなたはここで捕まってはいけません」


「ありがとう、よく来てくれたわね」


となかわとモザちゃんは突然の攻撃に驚いて後ろに退き、追撃を警戒する。


「…!!よく回避(よけ)られたね、モザちゃん」


「はい…。絶体絶命のはずのアオさんが、()()()()焦っていないように見えて…何か最後の手段でもあるのかなと警戒をしてて…」


肝を冷やしながら、レーザー弾の元を見据える。

となかわは、モザちゃんの安否を確認したあと、すべてを察したような顔で見つめる。


「やはり…君は…。間違いない。さっきの攻撃然り…。君が、こいかわだったんだな。“アオドロイド”。」


「私は回答を拒否します。その質問にお答えすることはできません」


「ああ、となかわ。すべてお見通しだったわけね。そう、この人造人間こそがこいかわよ。バレないと思ていたけれど、案外バレるものね」


「な……あ、あの人造人間が、こいかわさん…!?」


「ふふ、バレてしまっては仕方ないわ。そしてモザちゃんといったね。さっき、あなたは私が『そこまで焦ってないように見えた』って言ったけれど、焦っていないのは、別にこの子がいたからじゃないのよ?」


そういうと、先程まで纏っていた負の闘気が一気に、桁違いに膨れ上がった。


「だって、こぉんなに強くなったんですもの」


ズズズズズズ ズ ズ  ズ   ズ    ズ


屋敷全体が震えだす。青い着物の内から、紅色の龍脈のような模様が顕れる。空に浮かび、煌々と負のオーラを醸し出した。


「な……!!こ、これは…“モツモツ”の力…!!アオ、君は…!!」


「モツモツ…ですか…!?これが・・!?」


「モツモツは…憑りついた者の悪意を増幅させる。強い意志や他の者の手で追い払えばそこで終わりなんだが、ずっと追い払われずにいると、悪意は際限なしに増幅し、モツモツ自体の力がどんどんと増す。…憑りついた人の“魂”と引き換えにね。ここまで増幅したのは、僕も見たことがないよ…。きっと、アオの魂はもうボロボロのはずだ。」


「フ…ふふふふフ…………フはハハハはハハはッ!!!!」


“魂”には、“光の力”の源泉であることだけでなく、前世と来世の()()()をも司っている。つまり、魂を()()()()()やり方で酷使すると、遥か未来、輪廻転生先の生での精神にも影響が及ぶ可能性があり、アオという存在そのものが消滅してしまう恐れがあるのだ。


「やはり…おかしな点はあったんだ。僕はあの時、“モツモツ”について君に訊いたな。そして、『そんな魔物聞いたことない』って言っていたな…!()()()()()()()()()()()()()()()()ね。それに、他にもいくつか不審な点はあった。」


アオの魔力がさらに増幅する。その魂は荒れ狂い、完全に暴走している。にもかかわらず、となかわは臆さず、そのまま、話し続ける。


「実は、あの人造人間に初めて会ったとき、これがこいかわだって()()()()気づいてたんだ。だけど、どうしてわざわざ僕たちの前に姿を見せたのか、変わり果てたこの姿で、なぜここに置いておく必要があったのか、分からなかった。」


アオの魂の荒ぶりに共鳴するように生み出された蒼い凶弾が、となかわとモザちゃんに襲い掛かる。


「呑気に…話なんてする気はないよッッ!!!!!!」


となかわとモザちゃんはそれを斬りつけると、蒼い弾は爆散する。周囲に舞う塵に隠れるように、アオ本体が突撃してきた。


「とっとなかわさん…!!話している場合じゃないですっ、すぐに避難か、迎撃を…!!」


「……そうだね。僕はそれよりも、こいかわが心配だ。ボクはこいかわを()()()。アオの相手は任せたよ!!」


「えっ、ええっ!!??…分かりました…!!!!」



……………………………………



「ふ、ふははははは、()()()か。やはり、貴様が裏で糸を引いていたのだな」


「誰かと思えば、君か。(わらわ)がここに居ることに、よく気づいたの」


「“冷徹の女王”壱號・O(オレ)・ニヤ…“氷の魔女”壱號・O(オレ)・ニヤ…“天使専門の殺し屋(エンゼルバスター)”壱號・O(オレ)・ニヤ…“背反する命(バログレア)”壱號・O(オレ)・ニヤ…調べたぜ、貴様の数々の異名」


「ほ、妾もなかなか有名になったもんじゃのう」


「“モツモツ”を含む、ニヤを襲撃する多くの魔物の創生主は、壱號・O(オレ)・ニヤ、貴様だったのだな。だから、()()()()な理由をつけて魔界への進行を延期(ひきのば)し、ここで少しずつモツモツを増やしていたのだな。貴様の計画のために」


「もはや隠す必要もないの。概ねそなたのいう通りじゃ。じゃが、ここで待っていたのは、モツモツの増殖ではないぞよ」


「アオ…奴への侵蝕か」


「ほ、知っておったのか。急がねばならぬのではないかの?今や、アオはとてつもない力を手に入れておるぞ。そなたでも与しがたいほどのな。お仲間が、やられてしまうかもしれんぞ?」


優しげなその声色(トーン)とは裏腹に、壱號・O(オレ)・ニヤは邪悪に口角を釣り上げている。


「ははは、何を言い出すかと思えば。舐めるなよ、俺の親友と愛弟子を。あいつらがそう簡単にやられるようなタマかよ。…だから、俺がここでやることはたった一つだけさ」


「妾を殺す気か?そうじゃな、妾にはもう力はほとんど残っていない。そこらの下級魔物すら倒せるか怪しいくらいじゃ。」


「殺さねえよ。第一、お前がここに居ることすらおかしい。ニヤでおとなしくしていればよかったのにな。だが、裏をかいてここに居るとすれば…それでも、俺はそれすらがブラフに思えてくる」


「ふむ」


「この世界での魔法は多い。“棲魔法王国サトクン”でとめどなく開発されている魔法や、異世界の魔法を含めると、まだ俺たちの知らぬ魔法も無限にある。それならば、貴様が『自らが死ぬことによって発動する』厄介な魔法を仕込んでいる可能性も考え出せる。その手法ならば、力の失った今の貴様でも行使できるゆえに、発動を巧妙に隠せる」


「ほほう、それならば、妾を殺さぬつもりなのじゃな」


「いいや、殺す。裏の裏の裏は、裏だ。俺はお前を殺す」


そういうと、目にもとまらぬ迅さで剣を抜き、壱號の首元に剣を突きつけた。剣先には既に、その闘気(オーラ)が駆け巡っている。


「———!!!」


「—と見せかけて、殺さない、と。」


何もせず、すぐに剣を下ろし、半歩後ろに下がった。


「……ほ、さすがの妾も肝を冷やしたぞ。本気の殺気が見えたが」


「そうだな。死の危険を感じたときに発動する魔法や、もしくはこの様子を見ているお前の仲間やらが助けに来るか、試してみたが、そうではないみたいだ。つまらないな」


「……そうか。妾が完全に死滅したときや、魂の消滅と同時に発動する魔法、という線も考えられるが?」


「そんなもの、()()()()()()()()()だろう。そんな確証もないものでズバズバと殺していたら、命がいくつあっても足りねえ。甦生魔法はそこまで得意じゃないしな」


「ふぅむ、そなたは、何とまた…。」


「くはは、怒るなって。それじゃあなんだ。やつらの戦いの顛末でも鑑賞してみるか」


ごちかわがパチンと指を鳴らすと、目の前に大きな鏡が出てきた。そこには、アオ、となかわ、モザちゃんの様子が映っている。


「サトクンで近年開発されたできたて()()()()の魔法、<“遠隔通態鏡(ロフトゥールミラー)”>だ。これで証明してやろう。こんな、()()()()のものに、俺が手を貸すまでもない、ということを」


ついに正体を顕したアオ。となかわとモザちゃんの運命や、いかに。


そして、イチゴオレ・ニヤは一体──。

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