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「地下へ逃げよう。私達の知っている事件では、地上に居た人の犠牲者より地下に居た人の犠牲者の方が少なかった。人々を避難させるのも重要だけど、まず自分の身を守らなくちゃ話にならないでしょ?」

 実果さんの提案により、俺達はエレベーターから地下に下りた。

 幸い、このビルの地下は地下鉄やデパ地下に通じる通路がある。

 この時間なら、人は少ないはずだ。

 ここを制圧するにはまだ時間があるだろう。

 人々を避難させる時間はある。

 どこへ避難させても絶対に殺されない訳ではないのだが。

 二人とも最新の技術をふんだんに使った高性能のアンドロイドだ。

 ほとんどのことはこの二人に任せて大丈夫だろう。


 警戒しながらしばらく歩くが、人どころかネズミ一匹居やしない。

 俺達の足音がうるさいぐらいだ。

「どうしたんでしょうか。いくら、人の少ない時間とはいえ、こんなにも静まりかえっているのは可笑しいです」

 ナナも疑問なようだ。

 ここの道はよく知っているが、こんなにも人が居ないのは今までにない。

 あまりにも可笑しい。

 少しすると「わああああああああああ」と棒読みの機械の声が聞こえた。

 ビクッと体を震わせたが、この時代じゃ聞き覚えのある声だ。

 通路は右へ曲がる。

「ちょっと様子を見てくる」

 実果さんはコツコツと靴を鳴らせ、歩いて行った。

 が、すぐに立ち止まった。

「……遅かった」

「どうした?」

 俺とナナは小走りに近づく。

「……ッ!」

 目の前に折り重なる死体。

 ピチャッと水溜まりを踏む感触。

 俺の足元が濡れている。血だ。

 右へ曲がった先は死体だらけだ。

「うっ……」

 男、女、子供、見境なく全員殺されている。

「殺されていますね」

 ナナは動じない。流石AIといったところか。

 しかしあまりにショッキングだ。

 目をそむける他ない。

「危険です。危険です。人間は直に滅びます。うわああああああああ」

 四方八方ぐるぐるぐるぐる。荒ぶっている。

 この声の正体は、胸元にタッチパネルのついた某携帯ショップに置いてあるAIだ。


「人類は滅亡します」


 そいつの胸元のタッチパネルにはそう書かれている。

「あのAIが殺した訳じゃなさそうね」

 実果さんはそう言うが、俺はそれどころじゃない。

 胃の中のものをすべて吐いてしまいそうだ。

「操作を停止させるわ」

 実果さんが言うとすぐにそのAIは止まった。


「ママ、パパ……」

 まだ幼い少年が涙で顔を濡らしながら必死に両親に語りかけている。

「第一生存者発見ですね」

 まさか、生存者が居たなんて。

「この状況下で生存しているなんてすごいな、この坊主」

「……突っ込んでくださいよ」

「何を?」

「第一村人発見……」

「ナナちゃんこの状況でよくボケられるね」

 どこでそんなこと教えられたのか。

「そんなことより、早く避難させましょうよ。君、お名前は?」


*


 玄関扉に穴が開いた。

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