最終話
ようやく終わります
前書きウゼェ。と思った方は本編に進んで結構です
PCで見ている方はなるべく部屋を明るく、ケータイで見ている方は光源下にて、外で閲覧している方はそのままでくれぐれも目の疲れに十分注意して読んで下さい
ベッドの上で寝転がりながら小説を読んだり、電灯が全く付いてない部屋でのケータイいじりは私のように目を悪くしますので
あと今回は結構長いです
更新に随分と遅れて申し訳ありませんでした
錆びた包丁を片手に握り締めた母さんは僕の方向へ向かって駆けてくる
僕を殺すために
暗闇の中で母さんの目が見えた
その目は獣のように貪欲で獲物を仕留める為には手段を全く選ばない狩人の光を宿している
迫ってくるヒトの影が獣の眼光を湛え、その視線は僕を捉えて放さない
鋭い眼光を受けた体は金縛りに遭ったかのようにピクリとも動けなかった
僕は完全に母さんの気迫に圧倒され、瞬き以外は何もできなかった
しかし、刃が体に接触する寸前に渾身の気力を振り絞り凶刃から僅かに身を捩らせることだけはかろうじて許された
僕に向かって突き出される刺突を本能的に前に突き出した果物ナイフで防ぎ弾いたが、勢いを完全に殺すことは叶わず、頭部を狙っていた凶刃は僅かに逸れ、ざくりと僕の頬を深く抉った
そこから少なくない量の血がダラリと垂れ、今の一撃が嘘でも冗談でも無く、本気で僕の命を奪う為の一撃だった事をようやく理解した
手の甲で拭った血を見て、母さんに対して畏怖を覚えた
それは子供のころの虐待の記憶すらも凌駕する命の危険を感じての事よりも、
死んだ息子の為に、今生きているもう一人の息子である筈の僕を殺そうと本気で行動に出ている自分の母親に対しての恐怖だった
「ひっ!、、、う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
駆けた、母さんの居る車と逆方向の方角へと、体力の続く限り全速力で走る
息もすっかり上がり、からからに渇いてしまった喉がおかしくなったかのようにヒュウヒュウと変な音を鳴らし始めた
肉体を休息を要求させる余裕を持つ状況では無かったので、疲労のせいでがくがくと踊り出す脚を強引に酷使する
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
あちこちに生えた丈の長い雑草をかき分け復讐者が追い付いて僕の命を刈り取らんと迫ってくる
背後から死が追ってきている
意味不明
理解不能
何故?母さんがこんな山奥に居るのか
なんで?母さんが車のドアを開けられたか
疾走している間に頭の中で浮上する疑問を全て遮断し、余計な酸素を食い潰す脳の働きをシャットアウト、そして大気中から取り入れた酸素全てを逃亡の為に注ぎこむ
しかし、僕の逃亡劇もそこまでだった
「………ッ!」地面を這う樹木の巨根に疲労でふらついた足が躓いてしまったのだ
気の幹を支えにして急いで立ち上がろうとする、が
それは左脹ら脛に包丁を突き立てた母さんによって阻止された
急な鋭い痛みに蝕まれた僕は包丁が刺さりっぱなしの足を押さえて呻いた
「う……あああ……」
本当はもっと大きな声で叫んで痛みを和らげたかった
しかし、足の反対側までに貫通する程、包丁で差し貫かれた傷を蝕む激痛は、喉の機能まで麻痺させてしまったかのようにか細い呻き声を挙げさせる事しか出来なかった
「!」
そして、いきなり包丁が刺さった脹ら脛を鷲掴みにされる
その手に鷲掴みにされ足の動きを封じられた後、ぐりぐりと無造作かつ乱暴に僕の足から包丁が引き抜かれた
あまりの激痛に喉の麻痺すら忘れ自分の口から出たとは思えないくらい大きな悲鳴を挙げる
「うっ!うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」
先程と比べものにならない激痛に書き換えられ、僕の口から痛みが苦悶の叫びへと変換され、外界にと解き放たれた
先程まで深々と包丁が刺さっていた傷口から先刻に頬を切りつけられた時以上に多くの血を流れている
痛みに悶え体を足を押さえて出血を止めようとしている内に視界に母さんが入った
木製の柄まで血に染まった包丁を握ったその人はやっぱり僕を追ってきた母さんだった
母さん僕を見下ろし皺だらけの顔を歪めて楽しそうに笑っていた
そしてそれは昔、僕をいたぶる前にも見せたあの笑顔にそっくりだった
「信二。お前は本当にいけない子だね」
昔の綺麗な声とは程遠い年老いたかすれ声が聞こえる
「お前は産まれた時から存在そのもの間違っていた。父さんの血を受け継ぎながら容姿は醜くて、知恵も回らないし、人付き合い要領も悪い上に、あなたの周りにはだーれも友達なんて居なかった
絵に描いたような頭の悪い馬鹿だね」
やせ細った身を震わせゲラゲラとさぞかし可笑しそうに母さんは僕を嘲笑う
そして、母さんの目に一瞬だけ昔を懐かしむかのような光がよぎるのを感じた
「その点、哲也は優秀だった。いつも人の中心に居て、指導力も頭も優秀だったけど、父さんみたいに優しかったね」
夜の空を見上げ、独り老いたの老婆が独白する
父さん。僕の父親を指す単語を母さん自身が発音した時、彼女は昔の父さんが出て行く前にそうだった僕を殴らない本当に優しかった母さんだった頃の輝きが宿った
それは瞬きの間にも満たない、ほんの一瞬の事だった
そして母さんの顔が僕の方を向いた瞬間
その眼は
再び一瞬にして
狂気を宿していた
「そんな母さんの生きがいを信二。
出来損ないのお前が奪ったのよ
私の哲也を。父さんに瓜二つだった哲也を」最早母さんからは理性の匂いを嗅ぎとれない事を突き刺さるような痛みの中で悟る
「許さない…絶対にお前を殺す
楽には殺さないわ
一週間かけて小指の先から切り飛ばして散々痛みと苦しみを体に刻み込んでから殺してやる
勿論さっき刺した足は消毒してあげる
変な破傷風で死なれたら私が殺せないしねぇ」
ヤバい
僕は痛む足を無理やり立たせ、なんとか母さんに向き直ろうと試みる、しかし
逃げようとする僕を母さん歪んだ笑みともに蹴り飛ばした
僕は激みと共に転倒し、再び地面とキスをするハメになった
また起き上がろうと試みるも先程刺された腿を爪先で抉るようにして蹴られた
「楽には殺さないよ。信二」
母さんは無様な醜態を晒す僕を見物し、皺だらけの乾いた唇を歪に曲げ、涎を垂らしながらニタニタと笑っている
その時恐怖を覚えた
母さんが
本当に僕を殺すことを楽しんでいる母さんが
人間とは違う、何か別の生き物の様に思えた
「あ、あああああッ…………」
僕は殺意に満ちた母さんの濁った目を見て恐怖に支配され、痛みを押さえながら無様に土下座の体勢を取り見てこう言った
「ご…ごめんなさいっ。哲也を殺した事は謝る。自首もする、
だから
許し…て下さい……………」
か細い声だったせいか気付かなかったのか、それとも命乞いをする僕の姿がそんなに醜かったのか、母さんは僕を見て何も答えずに、愉快そうにゲラゲラと笑うだけだった
解ってはいた
あの笑い方をする時の母さんには何を言っても通じないことは
仮に哲也を殺したことを抜きにしても今の状態の母さんは絶対に僕を殺すだろう
昔からこの人は僕が許しを請う度にその都度それを無視して更に苛烈な暴力を振るってきた
だから僕は絶対に殺される
どんなに死にたく無くても、どんなに額を地面にこすりつけて懇願してもあの人は必ず僕をいたぶってから殺す筈だ
ヤバい
このままじゃ僕は殺される
抵抗しないと死ぬ
しかし、足が傷つけている今の状態じゃどうにもーーー
ーーーーひゅううう
その時、微かに風の音が聞こえた
意識が少しそっちに向いた瞬間
母さんが再び僕の傷口を抉った
再び絶叫を上げそうになる激しい痛みが襲う
足を庇いながら転げ込み痛みに喘いでいる際に先程の風切り音の正体に気付く
崖だ
崖の岩肌を風が滑って大気を切る音で音が鳴っているのだ
藤谷の体の一部を投じた崖が僕の背後に在るのは解った
母さんから逃げているうちにいつの間にかそこに辿り着いていたらしい
あのまま木の根っこ足を取られていなければ、冷静さを失い、錯乱していた僕はそのまま谷底にダイブしていただろう
母さんに刺されて頭に少しばかり冷静さを取り戻したのは、僕にとって不幸中の幸いなのかもしれなかった
頭の中に電流が走り何かが閃く
少し距離を置いた母さんが走ってくる
僕の中で次第に時間の認識される間隔が短くなっていく
一秒が一時間にそして一時間が一日に引き延ばれていった
母さんの動きがスローどころか、止まってさえ見える
動きだけではない、胴体視力を異常に強化されたかの様にあらんかぎりの形相で作られた中で一際引きつけられる濁りを宿した双眼が僕への怒りと憎しみで充血し、そのくせ妙に狂気に血走った母さんの眼球を睨みつける
母さんが走ってくる
銀色の鈍い輝きを宿した切っ先が僕に迫る
母さんが近づいてくる
僕は痛みに痺れる足の筋肉を叱咤し無理やり立たせる
母さんが迫ってくる
僕は負傷した脚を軸にして体全体に力を入れる
その時は、既に
僕と母さんの距離は一メートルにまで縮んでいた
一メートル
実際はその距離以上よりも何万メートルもそれこそ何千キロ以上に母子の心の距離は離れている
昔、僕は必死にその隙間を埋めようと必死に振る舞ってきた
それでも母さんは僕じゃなくみんなに好かれる哲也にしか関心を持たなかった
そして僕もつい五年前までは母さんに認めてもらおうと努力してきた
しかしそれも哲也を殺したことにより決定的な断絶が出来てしまい、親子は一生分かり合えない溝を抱え母さんは僕を殺そうとした
だから僕はたった今、決意した
今現在まで僕と言う存在を自分の中で認識しなかった母さんを
絶対的な殺意を抱いて僕の存在を完全に抹殺しようとする母さんを
“殺す”
母さんは生まれながらにして僕の存在を認めなかった
彼女以外に理解でき無い歪な価値観から家の中にて哲也以外の存在である僕を認めようとしなかった
ぎこちない親子ゴッコはここで終わりだ
僕は自分を殺そうとするただの狂った女を殺す
そう考えれば簡単だった
そして、行動を実行に移す
刺突を地面に倒れ込むようにして回避し、刃物を持った殺人者は勢いそのままに仰向けになった僕の身体につまずいた
無論、未だに殺人者の身体には前に進もうとする運動エネルギーが残留している
勿論、これだけでは母さんを排除するのには足りない
だから、僕は、母さんの体を両手で、
奈落へと突き落とした
地獄から伸びてきた腕にに引っ張られるように殺人者は下へと落ちていった
僕が自分の見ている感覚がてスローモーションで確認出来たのは次のあの瞬間までだった
それは母さん。いや、殺人者は束の間空中に滞空しながらも首だけを僕へと回転させ
にやり、と
醜い笑いの形へと顔を歪めたのが見えた
そして虚空に滞空する殺人者の体から前進を続けようとする運動エネルギーがゼロになる
その後、殺人者の体を捕まえたのは当然、重力の法則に基づいた落下エネルギーだ
そして母さんは墜ちていった
深い闇にひきずられるように
底など見えぬ、奈落へと
崖に突っ立っている僕に狂った笑顔を向けながら
下の闇に吸い込まれていった
数瞬後、骨と肉が硬い岩盤にぶち当たり、生肉が固い岩盤に叩き付けられるような鈍く湿った音が足元の下方より聞こえた
その後、山城と哲也の死体も処分した僕はすぐに車でアパート目指して夜明け前の山道を走っていた
夜明け前と言っても日の出ているの時間がどの季節よりも長い夏場のことだ
まだ空は暗く大気は涼しいが日はすぐに昇って周りは明るくなることだろう
帰った後どうするか揺れる車内の中で考える
僕はこれで四人も他人を殺してしまった計算になる
当然、四人もの人間が一気に行方不明者となれば警察は動き出すだろうし、下手なネタでは興味を示さないマスコミも当然の如く記者を派遣し、あちこちを調べて回るだろう
素直に自首して刑務所で規則正しい生活を送る気はさらさら無いので、もうすぐこの街から逃げる準備をしたほうが良いかもしれない
複数人も死体が発見されるとマスコミは急に騒ぎ出し、朝八時に主婦しか見ないワイドショーでスタイルだけが取り柄でアタマの足りない芸能人女優や支離滅裂でテレビ局が喜ぶ事しか言わない知恵者気取りの五月蝿い司会者が勝手に馬鹿い憶測を言い合って僕が起こした事件を仕事のネタにするのだろう
僕がいつも考えている事ではあるが
彼らは人の不幸を事件として扱うニュースを笑えもしない爆笑トークショーか何かに勘違いしているのだ
人の不幸に面と向かっては同情の意を示し、陰では嘲笑う現代の風潮を体現している番組では仕方の無いことかも知れないが
殺人を犯した僕がこんなことを考えるのも皮肉だが、こういった連中にああだこうだと勝手な感想を言われ、ブラックジョークのネタにされた日には殺された藤谷も安眠出来ないだろうし、実際に手を下した犯人である僕から見ても腹が立つ事だろう
所詮、不幸な人の死やどころかの企業や有名人の不手際に対して
スキャンダルの裏にある本当に大切な事情すら押し量ろうとすらせずに公共の放送にて自分勝手かつ失礼な戯れ言を放つ連中が出演するような番組だ
人間は、他人一人無惨な最後を迎えてもその不幸が自分達に降りかかる迄は、痛みすら知ろうともしない
そうなのだ、
そんな連中が好む物など視聴する価値すらありはしない
僕は洋画番組しか見ないからあまり関係は無い話のかも知れなのだが
しかし、今日位は気まぐれで見ても良いと思った
ニュースで自分の所業がどのように報じられているのかも気になるし、一種の娯楽位にはなるだろう
藤谷のをバラした時と同じく自炊したチャーハンでも食べながらでだ
ニュース番組中においてバカなコメンテーター共が営利誘拐だとか、失踪した人達の無事を祈ってますとか本気でそう思ってもいない癖に、当たり障りの無い戯れ言をほざいてたら思いっきり大笑いしてやろうと思う、
僕がどんなに大声を出しても文句を言ってくる奴など居ない
藤谷はもう死んだのだから
ああ、本当に愉快な事だ
腐った連中の為に奉仕する腐った社会に万歳
かさり
車の外で妙に気になる音がした
何故か車のタイヤが雑草を踏んだのだろうとは片付けられない
妙に記憶に残る音だった
そして、それは無視できない現象へと変わっていった
かさり
かさりかさり
かさかさかさかさかさ
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
僕はそれだけでこの不可解な現象を察知してしまい
背骨が一瞬にして凍り付いたかの様な錯覚に陥った
見るな
絶対に見てはいけない
聴覚を遮断しろ
ここ数日でやたらと敏感になっている直感が警鐘を鳴らし始める
アレは化け物
アレは呪い
アレはおぞましいモノ
つい先刻まで高ぶっていた感情が鳴りを潜め、車外に存在するはずの“何か”に恐怖した
どすん!
鈍い音を立てて車全体が揺れたかと思ったら車のボンネットに“何か”が落下してきた
その“何か”は僕の直感を裏付けようにして一メートル程のある巨体を使ってフロントガラスに体当たりをしてきた
“何か”は体当たりで微かに罅の入ったガラス越しに人間とほぼ同じ大きさの赤い八つの眼球で僕を睨み付け、異様に長くそれぞれ一本一本が人の腕と同じ太さの足を四対、僕に対して威嚇するかのように広げた
蜘蛛だった
夢に出て来たあのイエグモの体毛を赤くし、そのまま拡大したかの様な姿以外はあの蜘蛛と寸分違わぬ姿だった
「―――――ひいいッ!」
もう悲鳴しか出てこない
慌てて蜘蛛を振り落とそうと急いでハンドルを切った
結果を言うと、それが間違いだった
狭い山道で急にハンドルを切ってしまった僕の車は、真っ直ぐに走っていた山道からドリフトをするような形で直角に道から逸れてしまい、拍子にロックを掛けていなかったドアが開き、僕はそのままは車外へと投げ出された
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
夜明け前の薄暗い森のなか
僕の近くであの巨大な蜘蛛が蠢く忌まわしい音が響く
姿を見せない襲撃者は気持ち悪い音を立てるだけで僕の前に姿を見せようとしなかった
僕は覚悟を決めてポケットから果物ナイフを取り出し逆手に構える
この際、足の痛みは無視した
――――面白い。僕を喰うつもりならやって来い、逆に滅多刺しにしてやる
先程とは違う激く凶暴な高揚感に身を委ね、襲撃者の再来に備える
がさっ
一際大きな音が上から聞こえたかと思った次の瞬間
朱い蜘蛛が僕の頭上から降ってきた
落下した大蜘蛛は僕の背中にのしかかり、鋭い牙を突き立てた
「うっ…………うおおおおおおおおおおおおおッ!」
背中を襲う痛みを無視して僕はくもを背中に両手を回し
けむくじゃらの大蜘蛛の巨体を掴みつつ、投げの勢いで後ろにのけぞった背筋の力も込めて勢いよく前方へ放り投げた
巨大蜘蛛は直ぐにひっくり返った状態から体勢を戻したが、体全体はよろめき一メートル半を超える四対の巨脚を弱々しく蠢かして辛うじて直立させている
恐らく僕に投げられ、地面に激突した衝撃で体の動きが鈍ったのだろう
「ク、クククッ。この化け物がぁぁッ!」
脳から分泌されるアドレナリンと化け物を出し抜いた事によってもたらされた興奮の酔った僕は手の中の果物ナイフを得意気にクルクルと回す
この時僕は、自分のことを洋画で化け物退治をする主人公の様だと錯覚するような陶酔感覚に陥った
―――動かないうちに化け物にとどめを刺してやる
そうだ
こいつを片付けて、この街を出た後は、今まで僕を陥れてきた連中に復讐しに行こう
藤谷の様に、山城の様に、哲也の様に、母さんの様に、殺してしまえばいい
小学生の頃に友達面を装って僕を嵌めた連中に、ランドセルを溝に放り投げた連中に
中学生の頃に僕を無視した連中に
高校生の頃に僕に無関心だった連中に
バイトで僕を虐めた雌豚二人に、それに対し非干渉を貫いた店長に
どいつもこいつも皆殺しにしてやろう
僕の人生に負債を負わせた連中全てに復讐してやる
これも僕なりの新たな目的だ
警察がどうだ
マスコミがどうだ
刑務所がどうだ
そんなものはどうでもいい
僕は僕なりの目的を果たす
これらはそれらを邪魔する只のファクターに過ぎない
この化け物も同じだ
その一歩としてこいつは殺す
この化け物蜘蛛を排除してから僕の人生は初めて意味を得るのだ
僕を腐らせた連中を消すことで
決意を固めた僕はゆっくり化け物に歩み寄った
赤い大蜘蛛は八つの紅眼を僕に向け、威嚇するように光らせるだけで未だに体勢が整えきれない様子に見えた
僕はナイフを両手に持ち換え頭上にて大上段に構える
―――これで終わりだ。化け物!
そして蜘蛛の頭蓋に刃を振り下ろそうとした瞬間
―――――え?
全身がいきなり硬直して動けなくなり、そのまま大地から天を仰ぐようにして倒れ伏した
何か起こっているのか全く理解出来なかった
化け物の奇襲によって牙が背中に刺さった時に麻痺毒が体内に入ったのだろうか?
ただ、右腕の痒みが日焼けし過ぎて肉が焼けてしまったかのような爛れから発生する熱のみが脳内を駆け巡っていた
僅かに自由の効く首を動かし、大蜘蛛の姿を視界に捉える
眼前の赤い蜘蛛は僕を静かに紅眼で見つめるだけで一向に襲ってくる気配が見えない
直ぐに襲って来ないからと言って僕は自分を安心させる事は出来なかった
化け物はまるで何かを待っているかのように僕は思える
何故そう考えた
悪い予感がする
これにこの景色
これはまるでこの前の―――――――
鈍くなった思考が答えを見つける前に嫌な感じビジョンが浮かんだ
そしてその予感はすぐに的中した
ちくり
何か針のようなものが僕の足の傷に触れた
辛うじて動く首をそこへと向ける
見えたのは小さな蜘蛛だった
僕はそれに見覚えがあった
その虫は数日前に玄関で噛み付いたあのイエグモに似ていた
ちくり
再び微痛
そこにもう一匹イエグモがいた
合計二匹
否、
殖えたのは一匹だけではない
すぐに足の傷口に群がるようにして何十匹のイエグモが茶色いボールを形成する様に群がっていた
「!?」
声が出ない
耐え難いおぞましさと嫌悪感で悲鳴を発したいに声は出ない
チクチク、チクチクと傷口に小さな針が刺さるような感覚が脚全体に感じる
増え続けたイエグモは既に百匹を超え、 尚も森のあちこちからいきなり湧いて数を増やすイエグモに牙を突き立てられているにも関わらず痛みはない
逆にそれが恐ろしい
周りは悪夢で見たような赤茶色の海
僕の体に取り付く蜘蛛も次第に数を増やしていく
今や森中の緑色が赤茶色に染まり、その波は大海の如くうねり、波をたてていた
ただひとつ確かな事はどうあがいてもこの蜘蛛の呪いから逃れることなど出来ないという残酷な事実だけだった
―――そして何十分か経過した
体は既に無数の蜘蛛に蹂躙された僕の肉体は死を受け入れようとしていた
何も見えない
眼球は蜘蛛に貪られ既に暗闇の世界しか見えなかったから
体は外気の冷たさを感じることが出来ない
皮膚は既に蜘蛛の毒により溶かされ、爛れ、赤黒く変色した醜い腐肉が骨に張り付いているだけなのだから
口は大気を吸い込む事が出来ない
喉には空気の代わりに無数の蜘蛛で満たされ、僕の体の肉を喰らっていたから
さっき以上に感覚が鈍く感じる
徐々に視界もぼやけていく
少しずつ体温が冷え切っていく
思考が微睡むように沈んでいく
恐ろしいと感じていた気持ちは徐々に溶けていき既に無くなっていた
ただようやく終わるのかといった冷めた感慨だけが僕の胸の中にあった
終わる
一体なにが終わるのだろうか?
なにも無い空っぽの僕には何もない
ただ一つ自分の物だったはずの人生も終わる
それも普通は信じられない死因によって
既に何千、何万ものイエグモに肉体を食されながらも痛みを感じないのは不幸中の幸いかもしれない
――――もう疲れた
僕はそろそろ休んでもいいだろう
自分はもう助からない
僅かに残っていた感覚によれば体中に張り付いた蜘蛛は僕の目や鼓膜等にに侵入し肉を喰らっているらしい
例え今から病院に運ばれて治療を受けてもやがては蜘蛛の神経毒で僕は死を迎えるだろう
眼球を喰らい尽くした蜘蛛が僕の脳髄にまで侵入し、牙を立て毒を注入し始めた
もうすぐ思考するのも限界らしい
最後に何を考えたのかは直ぐに忘れた
ただひとつだけの思考
『なんで僕は何時も不幸な目に逢うのか?』
最後の思考を終えた後
僕の肉体は死を迎え、意識は永遠に闇へと沈んだ
そして夜明け前のまだ暗い森の中には一人の人間の骨ばかりが遺った死体に群がり、更に貪欲にそれをしゃぶり尽くす何万匹という数のイエグモとその“食事”を見守る一匹の赤い大蜘蛛だけの姿だけが残された
蜘蛛の復讐《完》
この『蜘蛛の復讐』は私が初めて完結させた作品です
まぁ思い付きで考えた作品ですのでここまで続くとは思いもしませんでしたが
次は近未来社会にて活躍する暗殺者が主人公の物語を書きたいと思います
え、『デッドライン』、『非人道〜』はどうするかって?
すいません。予定は今の所考えてません
『デッドライン』は文章が酷すぎるから黒歴史になっております。
まぁ最終話までの予定はノートに記して有るので気が向いたら足りない設定をプラスして執筆するかもしれませんが、他にビデオ鑑賞や漫画執筆等やりたい事があるので(オイ
漫画の方は絵が上手くなって機会が訪れましたら載せたいと思います。爛やジンのイラストは載っているんですがね(といっても中学生レベルですが)
『非人道〜』の方はPCかワープロ買って執筆速度が上がればぼちぼち書きたいですね。
こちらも大まかなシナリオはノートに有るので多分書けるんじゃないとは思うのですがビデオ鑑賞やイラストで(ry
まぁ無いでしょうが要望とか有りましたら書くかも知れません
蜘蛛の復讐書いて思ったんですが、やっぱり話を自分で考えて実際に形にするのは結構達成感が有ります。
スパロボJの四週目で隠し主人公機のラフトクランズ使えるようになるよりも嬉しいですよ^^
是非ともこのあとがきを読んだケータイ小説読者の方も試してみてはどうですか?
色々な事が見えてきますので娯楽だけじゃなく人生の勉強にもなります
すいません。長くなった上に色々脱線してしまいました(汗
汚い文章でグダグダと申し訳ない、、、
それではこれで失礼致します
僕の新小説でお会いになられましたら感想等お願いします。あ、批評でも構いませんよ^^
それでは『蜘蛛の復讐』を最後まで読んで下さって有難うございました(ぺこり




