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——ミヤコ、法学部。職業無し。この世界で、私はどう生き延びていけるのだろうか。
「ミヤコさん、大広間で早速夕食にしましょう!タスクの帰りを待ってたら、腹が空きすぎた!」
ぼんやりとしていたミヤコに、国王のハジメが威勢よく声を掛け、先頭に立って歩き始める。
「大広間には夕食が準備されているはずだ」
ギギ——……
「ここが大広間。食事はここで皆一緒にするんだ」
ハジメが扉を開けたその先には——
「ええっ!凄い!豪華!美味しそう!」
長いテーブルの上にはステーキ、お洒落なサラダ、湯気が出ているスープ、ご飯は無いが柔らかそうなパンがある。おまけに色とりどりのスイーツ……
「美味そうだろ?」
席に着きながら、ハジメが得意のニカッとした笑みを浮かべた。
「は、はい……!香りだけでも絶対美味しいのがわかります!」
「ミヤコさんは私の隣でも良いかな?」
タスクがミヤコの席の椅子を、さり気なく引いた。
「あ、ありがとうございます!」
夕食はほぼ情報のやり取りで話が持ち切りになった。
「ミヤコさんがさっき話していた"契約書"の件だけれど、ローズの店で契約書の内容が変わっていて、一悶着起きていたんだ。そこで、契約書を三枚作ってそのうち一枚を国で保管したらどうか、という案を出してくれた」
「ミヤコさんが……へぇ、凄いな」
「ほうがくぶ、というのはそういう事ができるのかしら?」
「案くらいなら出せるかと思います」
ステーキをいつの間にか食べ終えていた。ふかふかのパンにバターを塗り頬張る。染み込んだバターが最高である。
「いやぁ、タスクが誰も連れて来なかったらどうしようとか、新たな勇者が俺達を倒す為に召喚されたとかだったら不味いな、なんて考えていたけれど、国をまとめていくのに大事なポジションの人が来た!助かったー!」
ふぅ、とハジメは一息ついた。
「本当だよな。国を治める立場になって、三ヶ月で敵とみなされたら行き場があの世しか無いもんな」
濃厚なコーンポタージュが勢いよく喉を通過していった。
「さ、三ヶ月!?」
「あ、あぁ、話していなかった。国民に持ち上げられてなってしまったんだ」
「そうそう。有難いけれど、まだ全然それらしい事ができなくて、考えあぐねていたんだ。」
ハジメは二枚目のステーキを食べ終えると、キリッとした眼差しをミヤコに向けた。
「俺とタスクはこの世界に勇者として、この国から冒険を始めたんだ。ルナは魔法使いで、途中の村で出会ってパーティに入ってもらった。あと二人いるが、今はそれぞれの故郷に帰っている。五人で魔王を封印したのが三ヶ月前。その功績が讃えられて、前国王からこの国を任された……っていう状況なんだ」
「へ、へぇ……魔王を封印して、国王ですか……」
「暫くは強大な危機に見舞われる事は無いはずだ。そうそうハジメ、ミヤコさんも日本から来たらしい」
「日本!久しぶりにその単語を聞いたなぁー!色々思い出せないけれど、単語を聞くとある程度思い出せるんだな!じゃあ、ミヤコって呼んでも良い?俺もハジメで良いからさ!言葉も丁寧じゃなくて構わないから!」
「じゃあ私もミヤコって呼んでも良いかな?勿論タスクで構わないよ」
「ルナの事を置いていかないでよね。私の事も特別にルナと呼んで良いわよ」
「は、はい……ありがとうございます」
「ところで」
タスクがミヤコの傍に置かれたノートパソコンを見た。
「それ、ノーパソって言っていたけれど」
「あ、これはノートパソコンでね」
ミヤコはパカッと画面を開いた。
「すみません……もう充電が切れて画面が付かなくて……」
「いや、私が引っかかったのはそこじゃないんだ。何か気持ち的にモヤモヤするんだ」
「タスク、俺もだ。なんか胃がグルグルする」
「ルナは何とも無いわ。二人がおかしいんじゃないの?」
ルナが不思議そうにノートパソコンを覗きながら言った。
「あっ、ルナ!もしかして魔法で充電できるんじゃないか?」
タスクがルナに顔を向けたが、ルナは首を横に振った。
「無闇に魔法を使うと、このノートパソコンとやらが壊れてしまうかもしれない」
ハジメが何か思いついたような顔をした。目がキラキラしている。
「じゃあ、明日にでもリーパ爺さんの所で一度見てもらいなよ」
「リーパ爺さん?」
「そ!何でも見てもらえるからな!」
「ハジメ、早速国王権限使うのか?」
「勿論!」
「書類を作るのはルナかしら?」
「ルナー!そこを何とか」
「仕方が無いわね」
ルナはハジメのデザートを二つ、自分の皿に乗せた。
「これでとりあえず良いわよ」
夕食の後案内された部屋は、何畳あるのか分からない広さの部屋だった。天蓋ベッドまである。
「ミヤコ、明日は私が付いて行くからゆっくり休んで」
タスクはひらひらと手を振り、広い部屋にミヤコは一人になった。
パジャマに着替え、ベッドに入る。疲れているはずなのに、一向に寝付けなかった。
窓の外に煌めく星々が、白んでいく空で見えなくなっていく……
それが、始まりの国に来て最初の朝だった。
⭐️お読みいただきありがとうございます!次回更新はR8.10.10の20時です!是非お楽しみに⭐️




