覚醒
努力の魔眼 ~報われない世界から、報われる世界へ~
高橋 悠真 12歳
(……もう、限界だ。)
意識が薄れていく中、悠真は自分の部屋の隅で小さく丸くなっていた。
今日も学校では無視され、家に帰れば継母の冷たい視線と義弟の嘲笑。
「頑張れば報われる」なんて、綺麗事だ。
テストで良い点を取っても「自慢か」と嫌味を言われ、
家事を一生懸命やっても「当然でしょ」と一言。
部活でどれだけ練習しても、才能のある奴が簡単にレギュラーになる。
努力なんか、するだけ馬鹿を見る。
最後に悠真は、強く思った。
――この世は、努力しても報われない者と、努力しなくても得をする者の二種類だ。
俺はずっと、前者だった。
今度生まれ変わったら……
絶対に、努力がちゃんと報われる側になってやる。
誰よりも努力して、誰よりも成長して、誰よりも報われてやる。
暗闇が全てを飲み込んだ。
目が覚めると、そこは素朴な木製のベッドの上だった。
窓の外には深い森と、淡い青緑色の空。
ここが元の世界ではないことは、すぐに理解できた。
「おや、目が覚めたかね」
穏やかな声が聞こえて、悠真はゆっくり顔を上げた。
そこにいたのは、温かみのある笑顔の白髪のおばあさんだった。
「森の中で倒れていたところを、見つけて連れて帰ったんだよ。最初は髪と目が真っ黒で、夜の妖精か何かかと思ったよ。」
彼女の名はエレナ・シルヴァン。
この村の薬草師で、一人で静かに暮らしているらしい。
エレナおばあさんと話すうちに、いろいろなことが分かった。
ここはアルテリア大陸の辺境にある、ルミナ村。
人間のほとんどが明るい色の髪と瞳を持っていて、黒髪・黒目の人間はほとんど見かけないという。
言葉が通じる理由は分からないが、今はそれよりもっと大事なことがある。
悠真は意識を集中させた。
すると、視界に淡い青い文字が浮かび上がった。
名前:ユーマ
種族:人間
ジョブ:なし
LV:1
HP:8 / MP:3
力:2 敏捷:4 体力:3 知力:24 魔力:1 運:5
パッシブスキル:なし
アクティブスキル:なし
固有スキル:努力の魔眼 LV1
スキル詳細を開くと、文字が展開される。
『あなたが見つめた対象(自分を含む)の「努力」を極限まで加速・増幅する。
努力の成果が通常の数倍から数十倍になり、成長速度が劇的に向上する。
対象が努力を放棄した場合、効果は失われる。
使用回数制限あり。成長により解除・強化される。』
ユーマ(悠真は心の中でそう名を決めた)は、静かに息を吐いた。
「……これなら、本当に努力が報われる。」
エレナおばあちゃんが心配そうに顔を覗き込む。
「どうしたの? まだ痛むかい?」
「大丈夫です。おばあちゃん、助けてくれてありがとうございます。」
ユーマは小さく微笑んだ。
元の世界では、努力しても何も変わらなかった。
でもここは違う。
このスキルがあれば、努力した分だけ、確実に強くなれる。
誰よりも地道に、誰よりも長く、誰よりも深く努力して、
誰よりも高く、誰よりも遠くまで到達してやる。
今度こそ、努力が無駄にならない世界で生きていく。
ユーマの黒い瞳に、静かで熱い決意の光が宿った。
まずは、この優しいおばあちゃんに恩返しできるくらい強くなること。
ルミナ村で生きていくための基礎を、しっかり固めること。
そして、いつか――
努力しなくても楽に生きているような連中がいたら、
努力の価値を、ちゃんと教えてあげよう。
ここが、俺の新しい人生の始まりだ。
初投稿です。
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