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曲がり角の向こうに君が居てくれた  作者: 湖灯


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水族館⑮

 座ったままボーっとしている俺に代わり、落とし物や忘れ物がないか見てくれる俊介。


 俺が意地悪な気持ちで見ていた時も、俊介はなにも変わらないまま優しかった。


 電車が駅に停車し、椅子から立ち上がり俊介の肩を叩いて「じゃあな」と声を掛ける。


 向こうからも「じゃあ」と返事を返されるものと思っていて左程気にしないで電車から降りようとした時。


「今日は色々と気を使わせてゴメン。おかげで楽しかったよ」


 と声を掛けられた。



”知っていた”



 俺は驚いた。


 俊介は、俺がワザとびしょ濡れになる場所を選んだ事も、今日の合同デートの事も、俺が秋月穂香を好きだった事も、そして俺が失恋した事も全て知っていたのだ。


 もしも……。


 もしも、俺が抜け駆けしたり、二人の邪魔をするような行為をしていたら……。


 そう思うと、背筋に氷を背負わされているような恐ろしいくらいの不安が過ぎる。


 しかし今日、俺のとった行動は決して友に恥じる事のない誠実なものだ。


 そう思うと、少し大袈裟だが堂々とした態度で


「おう!」


 と笑顔で応えて電車を降りた。


 俺が降りると直ぐに電車の出発を告げるベルがなる。


 後ろからドアの閉まる音、そして電車が動き出す音、走り去って行く電車の音。


 俺は電車を降りてから一度も後ろを振り向かず、かといって足早に走り出すこともなく、寧ろいつもより堂々と、ゆっくり歩いた。


 それが屹度車窓から俺を見ているはずの、親友阿久津俊介に対する最後の抵抗だった。

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