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曲がり角の向こうに君が居てくれた  作者: 湖灯


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夏目書店⑧

 それから暫く数学を一緒に勉強した。


 親には、友達の家で試験勉強をして帰るとメールをしておく。


 帰り際に山岡沙希が外まで見送ってくれた。


「急にお願いして御免ね!色々教えてくれて有難う」


 やけにしおらしい表情で言われたので驚いた。確かに最初は迷惑に感じたが、かえってムシャクシャしていた気持ちが晴れて良かったと思ったので


「別に」


 とだけ答えて自転車のハンドルを握る。


 漕ぎ出す前に、また質問された


「さっきの一生引きずる負い目って、先生のこと?」


”先生”の意味が分からなかったので訝しい表情をしていると


「夏目漱石の『こころ』でしょ?」


 と言われて驚いた。


「漱石も読んでいるの」


「当たり前だろ、書店の娘だもの」


 成る程、外見ばかりに捉えられていて書店の娘だと言う事をスッカリ忘れていた。


 もっとも、それを知ったのはついさっきなんだけど、そのことに気が着かず、漱石の”こころ”から答えを引用してしまった事が見透かされていて恥ずかしく感じた。


「わたしも漱石好きなんだ」


 やけに嬉しそうに話す表情は、学校で見せるクールな山岡沙希とはまるで別人で可愛らしく思った。


 どれが好きかと尋ねると”こころ”だと言ったので俺もそうだと伝えると歓声を上げて喜んだので書店に出入りしている人たちが一斉に、こっちを向いた。

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