学園祭⑦
「沙希、ごめんなさい。わたし言い出せなくて」
秋月穂香が山岡沙希に嫌な仕事をさせてしまった事を謝りながら、散らかされたテーブルを片付けていた。
「穂香!もういいよ、後わたしがやるから」
山岡沙希が布巾を取り出してテーブルを拭きながら続けて言う。
「いいから、ほら仕込みはわたしに任せて表に出て接客しないと、穂香目当ての客に睨まれて仕方がないんだから」
「そんな、でも、ごめんなさい」
「穂香が謝るようなことじゃないよ、睨んでくるのは、たちの悪いファンなんだから」
おっと、二人の会話を眺めていた俺まで”たちの悪い客”にされてはかなわない。
俺は二人から目を離して窓の外を見る事にする。
「あっゴメン。あっちのお客さん未だだった。穂香お願いね」
「分かった、じゃあお願いします」
山岡沙希と秋月穂香の会話が聞こえて直ぐに
「お待たせいたしました。アイスコーヒーお一つですねご主人様」
いきなり斜め後ろから秋月穂香が注文していたアイスコーヒーを持ってきてくれて驚いた。
テーブルを片付けている山岡沙希の、神対応に感謝していると、テーブルを片付け終わってすれ違いざま
「アンタも十五分ルールは守りなよ」
と、イメージ通りの塩対応を返された。




