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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第二章 灰被りの魔女。
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第100話/領主のじーさん。


 ナゾのジーサンがアラワレタ。

 アビゲイルのニラムこうげき。

 ジーサンはコシをヌカシタ。

 

 誰だ、ちみは! と誰何してきたので一睨みするとあっさりと腰を抜かし、側にいたサリシアさんに縋り付くという醜態を見せている見知らぬ初老のじーさん。


 なんなんだちみは?


「申し訳ありません。アビー姉様のことはあえてふせて、一人の冒険者がダンジョンを発見してその利権を譲ってくれると話していたのですが…………どういうつもりですかお爺様?」

「サリシアちゃんの目が冷たい!? いやだって、どこぞの馬の骨がダンジョンの利権を餌にサリシアちゃんの貞操を要求すると思ったんじゃもん!!」

「もんじゃありません。ちゃんと人柄は問題ないと伝えたはずです。というよりいつまで乙女の腰に縋り付いているんですの?」


 冷たい目のままサリシアさんは初老のじーさん、つまりはここの領主だと思うんだけどその襟首をつまんでぺいっと引きはがす。


 引きはがされた領主のじーさんはすごすごとソファへと座り、ようやくまともにオレ様と対面し、わざとらしく咳払いをする。


 するとどこからともなく現れた先ほどの妙齢のメイドさんが領主のじーさんの前に紅茶を置き、オレ様の紅茶を新しいものへと取り換えてくれる。


 紅茶のお礼にアイテムボックスから小箱に入ったお菓子をそっと渡すと、受け取ったメイドさんはにこりと微笑んで一礼し、そのまま静かに部屋からフェードアウトしていった。


 素晴らしく出来るメイドさんである。


「んんっ! さて、先ほどはお見苦しいところをお見せして申し訳ない。

 改めて、儂がこのハイドランジアの領主のバルド=ローレント子爵である」

「これはご丁寧にどうも。オレ様は冒険者でCクラスのアビゲイル。よろしくー」

「……話し方は種族性と一応駆けだしの冒険者というとこでお聞き流してくださると幸いです」


 フォローしてくれるエルモに、領主のじーさんは頷き、 


「あ、いや、ダンジョン喰らい(イーター)を倒した話は聞き及んでおるし、なにより先ほど感じた強者たる吸血鬼の気配を考えるにやむを得ないじゃろう」


 うんうん。レベルカンスト我が子(オレ様)は強いからねぇ。まあ口調に関しては相手を下に見ているわけでもなく、自然にこうなっちゃうんだよね。


「さて、アビゲイル殿を鑑みるに貴族流の回りくどいやり方は好かんだろうと思うので、率直に申し上げる。

 この度は利権の譲渡に感謝している。が、それにより発生しうるであろう問題について説明と助力を願いたいと思っている。資料を」


 オレ様はエルモが差し出してくれた資料を受け取り、それに目を通してみる。


 ふむふむ。譲渡した場合は四年に一度の更新があったり、ダンジョンの氾濫(スタンピード)が起きないように努める責務が権利者にあったり等と要約したっぽいものが細かに書かれている。


 あと権利を譲渡した者、この場合オレ様なんだけど、それが死亡した場合は権利が譲渡された者に移るらしい。


 あ、ちなみにサリシアさんとエルモには立ってるのもなんだし、一緒に座ってお菓子でも食べててと言ったところ二人して最初は遠慮していたが、領主のじーさんから『お言葉に甘えなさい』と言われるとそれぞれの隣に座って嬉々としてお菓子を味わいはじめた。 


「内容は大体理解したけど、それでなにがどんな問題だったりすんの?」

「うむ、人手や宿泊施設などはなんとかなると思うのだが、いかんせんダンジョンナイトはこちらで手配できぬものでな」

「それと同じくギルドでも条件にある、常駐できるCクラス以上の冒険者パーティーというのが難しいところですね」


 難しい顔をする領主のじーさんと共にエルモの方でも、同じような問題があるらしい。


「ていうか、ギルド側はいいとしてダンジョンナイトってなんぞや?」

「それはわたくしから説明を――――」

「あ、サリシアさん、口元にクリームがついてて可愛いよ?」

「…………」


 オレ様の指摘に一瞬固まるも、楚々と口元をハンカチ拭いたサリシアさんは背筋を伸ばして、


「それはわたくしから説明を――――」


 やり直した! やり直してなかったことにしたよサリシアさん!!


 あ、領主のじーさんが『サリシアちゃん、さすがに無理があるじゃろ』なんて余計な事言ったもんだから脇に肘鉄喰らって悶えてる。


「ダンジョンナイトと言うのは、ダンジョンの内外を警邏し秩序と安全を守るための専属の騎士のことですわ」

「じゃ、じゃが我が領には兵士はいても騎士はいなくてな。基本的に騎士というのは、国の認可を経てなるもので国が有事の際に派遣するものなんじゃ」

「もしくは常駐させるにしても主要都市、国境、砦くらいですわ。残念ながらここのような規模の町では常駐する騎士はいませんの」

「じゃあ、派遣してもらえば?」


 しかし派遣の言葉を聞いた領主のじーさんとサリシアさんが苦い顔をしたのをみると、そこら辺が問題っぽい。


「その派遣が問題でな。このような大きな利権が絡む事となると、どうしても欲深い貴族が絡むんでくる。そうすると、派遣されてくるのは欲深い(そういう)貴族のバカ息子(ぼんぼん)か、その息のかかった私利私欲な連中が送られてくることになる」

「そうなると治安もなにもあったものではませんわ。そうしていずれ問題を起こしてその責任をこちらに押し付けたあげく、治安維持に不備があるとか難癖をつけて領主交代、とばかりに自分がその座を取って代わろうとするのが目に見えますわ」


 うわぁ、いま語られる元の世界でもあるような腐った組織図。


 どこにでもいるもんだなぁ。人の手柄を横取りするクソ上司みたいな存在。 


「ギルド側も似たようなものですね。Cクラス以上の冒険者を自前で用意できなければ、他ギルドから派遣してもらえますが、まあ、まず間違いなく領主様と似たような案件になるでしょうね」


 お菓子を摘まんでいたエルモが困った顔して溜息をつく。


 どちらも自前で用意できるのが最善で、利権を横取りする気まんまんの派遣を容認するのは最悪なわけだ。


 うむうむ。元の世界でも異世界でも管理職って言うのは大変だな。


 しかしオレ様もここまで黙って聞いていたわけじゃない。


 すでにオレ様の中でどちらとも解決できるかもしれない案が一つ、思い浮かんでいる。


 まあ成功するか否かは後で判断してもらえばいいか。


「ところでオレ様に一つ案があるんだけど、聞く?」

『是非!』


 よっぽど困っていたのか、一も二もなく飛びついてきた三人なのであった。


 そして領主側もギルド側もダンジョン運営に関するなんやかんやの準備を進めていた数日後。


 ついに懸念していた、国とギルド本部からの召喚令状が届いたのだった。





 作者もギックリ腰をやった際にあまりの痛みに腰が抜けたことがあります。

 配送の職場だったんですが、その時は台車に寝せられて事務所までドナドナされていきました。

 同僚曰く『出荷される冷凍マグロみたいだった』と半笑いで教えられました。



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― 新着の感想 ―
どんな案があるのか…… (たぶんパワープレイだな) ぎっくり腰はマジでヤバいっぽいねうちの父も前なってたけどその時は救急車で運ばれてた。
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