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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第二章 灰被りの魔女。
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第99話/ご利用(返済)は計画的に。


 ダンジョンの利便性を紹介しつつ、全力で借金返済を申し込むアビゲイル。


 

「えっと、それはどういうことですの?」

「いやほら、ダンジョンって基本的に見つけた人に権利があるわけじゃん?」

「確かにギルドや国の規定ではそうなってますね」

「そうそう。それをサリシアさんとエルモで4:4くらいに分けて、残りの2をオレ様の権利としつつそれを借金返済に充てようかと思ってるんだけど、どうよ?」

『え……?』


 オレ様がダンジョンを作ってる最中に兼ねてから考えていた借金返済プランを話すと、サリシアさんとエルモが驚いて目を丸くする。


 そんな変なこと言ってないつもりなんだけども……?


「確かに長い目でダンジョンの利潤を考えれば、アビゲイルさんの借金を相殺することも可能といえば可能ですが……」

「アビー姉様はそれでいいんですの? ダンジョンの利権と言えば個人も国も喉から手が出るほど欲しがるものですのよ?」

「ん-、ぶっちゃけると個人的に利権なんかそもそも興味ないし。なにより管理するのが面倒そう?」


 まあクイーンちゃん(ダンジョンマスター)ラーシア(ダンジョンコア)がいれば、管理することに関しては問題ない気がするけど。


 それでもこんな素敵なゲームキャラ(我が子)に転生出来て最高の力もあるのに、元の世界みたいに仕事して生活して終わるような狭い人生を送るなんてもったいない。


 せっかくの異世界転生なんだから広く大きく世界を堪能しなければ。


 なので人任せにできるものはさっさと譲るに限るのである。


「ということで、オレ様としてはとっとと借金を片付けたいわけで。

 それで二人の答えや如何に? あ、ちょっとまってクイーンちゃん。そこのだし巻き卵はオレ様も狙ってたから一つ頂戴」


 取り急ぎお箸でだし巻き卵を一つつまんで、もぐもぐ。うん、この甘めな感じが美味しいよね。


 ちなみにクイーンちゃんは『難しい話は分かんないのです』と利権の話辺りから話しに参加するのを放棄して食事に取り掛かっていたりするので、油断していると狙っていた料理がなくなってしまうのである。


「緩い……大規模で億越えの話なのに、この緩さは一体……」

「ま、まあまあエルモ様。せっかくのお食事ですし、わたくしたちも頂きながらお話をしてもいいのでは? 

 それにわたくしとしてはこのお話はお受けしたいと思っていますわ。ただ、受けるにあたって細かいことは分かりかねますので、後日領主であるおじいさまと面会していただければと」

「あ、うん。それくらいならオッケーオッケー。で、エルモは?」


 オレ様が返事をするとサリシアさんはいそいそと『ではわたくしもお料理を』と、豚の角煮を小皿に取り分けてそれを一口食べ、『はふ~ん』と顔を蕩けさせる。


 一方で返答を求めたエルモとは言うと、困った顔をしつつ大きく息を吸い『はあ』と溜息一つつき、


「わかりました。ギルドも利権と管理を受ける方向で動きます。でも確実に本部や他の利権狙いのバカ共が動きだすと思うので、そこらへんは絶対に協力してもらいますからね?」

「もちもちのもっちのすけ。それじゃオレ様の借金完済(仮)と町とギルドのダンジョン利権獲得のお祝いにぱーっと楽しもう!!」

「アビー! このめろんくりーむそーだがおいしい! もっとちょうだい!!」


「ふはははっ! どんどん食べるて飲んで楽しむがいいっ! オレ様の椀飯振舞じゃー!!」

「じゃあ、私はホッケとまぐろユッケを追加でお願いします」

「わたくしはこの、ぽてとふらい、かにくりーむころっけ、を食べてみたいですわ」


 クイーンちゃんのダンマスカモフラージュもダンジョン運営の丸投げも、ついでに借金も返済する目途がついた!


 かくて有頂天になったオレ様は、皆がメニューをみて注文するがままにダンジョンポイントを浪費して居酒屋ご飯をご馳走するのであった。


 ☆


 翌朝、なんやかんやの遅くまで祝宴をしていたオレ様たちは見事に二日酔いになり動けなくなった……ということもなく、サリシアさんとエルモにいたっては朝風呂まで済ませて町へ帰る支度を整えていた。


 二人とも、ザ・出来る女、みたいな感じである。


 そして最後に起きた寝ぼけ眼のクイーンちゃんと一緒にみんなで朝食をとり、帰りに町まで歩くのはちょっとめんどかったのでオレ様が黒雷孔雀(サンダルフォン)を召喚してさくっと到着。


 あ、もちろんまた魔物の襲撃と間違えられると困るので、町からちょっと離れた場所で降りて歩いて帰ったけど。


 この町の領主代行とギルド長が一緒ということもあり、門番に見咎められることなくあっさりと通過し、それぞれの職場へと戻ることになったのだが、その際にサリシアさんとエルモから割と真剣な顔で、


「ダンジョンの運営等に関して、おじい様にお聞きして問題点などを洗い出しておきますわ」

「ギルドも必要なことを調べて用意しておきます。大体五日位かかるとは思いますが」

「私の方もそれくらいかかりそうですわね」

『なのでそれまで大人しく(・・・・)していてくださいね(ましね)?』


 と、二人から一部強調して言われてしまったからにはオレ様も頷かくしかない。


 それぞれに帰る三人を見送りながら、流石に昨日の今日でなにかやらかすのは確実に怒られるよなと思ったので大人しくせざるを得ないのわけだけど、なにをしようか。


「……あ、リリベルちゃん発見。リッリベルちゃーん! おっはーっ!!」

「うっきゃあああっ! いきなり後ろから人の脇の下に手を突っ込んでくんじゃねーわよー!!」


 とりあえず道行くオレンジ髪の魔女っ娘な知り合いを発見したので、挨拶代わりに突撃してみるのであった。



 それから数日の間、マルガリーゼ、メルナリーゼ姉妹と一緒に依頼を受けたり、虎娘のミズカちゃんと模擬戦をしたり、鍛冶師エルフのココレアさんとお菓子を食べながらお話したりと大人しく過ごしていたオレ様。


 ……いやまあ、マルメル姉妹との依頼でちょっといいとこ見せたくて魔法の出力間違って森の一画を吹っ飛ばしたり?


 ミズカちゃんが煽るとすぐにムキになっちゃうのがおもしろくてなんか足腰経たなくなるまでやっちゃったり?

 

 ココレアさんがあまりにも感激してくれるのでお菓子をたくさん分けてあげたら数日後に『腰回りが少し豊かに……』という懺悔を受けたりと、ちょっと大人しくとは言えない事もあったりしたけど。


 そんなこんなで楽しく過ごしていたある日、エルモとサリシアさんからダンジョンのことについてお話があると領主の館に招かれた。


 領主の館に出向くと妙齢のメイドさんに案内されたのは調度品が立派な応接室のような部屋。


 『こちらでお待ちください』と促されたガラステーブルを対面に挟むソファに座ると、メイドさんがお茶を淹れてくれてぺこりとお辞儀をして部屋を出ていった。


 手持無沙汰なのでとりあえずガラステーブルに所狭しとアイテムボックスにあるお菓子を並べていると、『失礼します』という声と共に部屋に入ってきたのはエルモとサリシアさん。


 手に資料を持つ二人がテーブルのお菓子を見て一瞬目を輝かせたが、なぜかそのままソファには座らずにエルモはオレ様の横に立ちサリシアさんは対面のソファ横に立った。


 そしてなぜか二人ともどこか疲れたような困った表情なのはなぜか。


「すみませんアビー姉様。これからちょっとご迷惑をかけると思いますので、先に謝罪しておきますわ」

「アビゲイルさん、とりあえず過激なことは控えてくださいね?」


 二人から謝罪と忠告を受けるもわけがわからない。


 どやしたの? と聞こうかと思ったら、閉まっていた扉がバンと勢いよく開かれてそこへ肩を怒らせて入ってきたのは、痩せてはいるものの厳つい顔をした50代後半くらいの初老のじーさん。


 その初老のじーさんはオレの前くるなり、ギロリンと睨んできて、


「貴様か! 我が孫に妙なことを吹き込んだ不埒な輩は!!」

「あーん? 誰が道理に外れていてけしからん奴だって?」

「ひいいいっ! サリシアちゃん、なんかこの娘っこものすごく怖いんじゃがっ!?」


 いきなり喧嘩腰に叫ばれたので、ちょっと威圧を込めて睨んでやったら初老のじーさんは即座に腰を抜かしてサリシアさんに縋りついてしまう。


 そしてそれを見たエルモとサリシアさんは、困った顔でそろって深いため息をつくのだった。



リリベル『ぎゃー! 変なとこ触ってくんじゃねーわよ!!』

挿絵(By みてみん)






居酒屋ご飯って妙においしいですよね。


ただいつか入った居酒屋で出たお通しの『ただのキャベツの千切り(小鉢)』が500円もしたのは、ちょっと納得いかなかった作者です。


コンビニでも一袋100円で売ってるのに!? と心の中でツッコミいれた覚えがあります。


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― 新着の感想 ―
ガン付けられたからガン付け返したわけか( ˘ω˘ ) お通しは食べなければ払わなくてええんやで。
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