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56(sideメディルス)

(あぁ、嫌だ)


何が足りないのだろう。やはり時間か?

もっと早くに彼女に出会えていたらとメディルスは爪を噛む。


まだチャンスはあると、思っていたのに、目の前で渡される月桂樹に息ができなくなった。


(なんで?)


彼は、エンディオ・レイトンはイリーナの事など気にも留めていないというような態度であった。

だからメディルスは安心していたのだ。イリーナの片思いだけなら自分にもまだまだチャンスがあると。

愛おしい彼女は触れるだけで真っ赤になってしまう。そんな姿を見せられ続ければ期待してしまうのも無理のないことだ。


(あぁ、ほんとうに嫌だ)


己の未熟さが嫌になる。もう少しだったのに。

やはり、もっと早く彼女に出会えていたらと考えずにはいられない。聖印の力に慣れるのにだってもっと時間もあったはずだ。


今まで1番欲しいものは何かと聞かれたら聖印であると間髪入れずに答えられていた。それ以外何も求めるつもりもなかった。

だが聖印を手に入れてから1番欲しいものはイリーナに変わった。

初めは聖印を与えてくれた彼女への感謝の気持ちだった。だが接しているうちにその人柄に、愛らしさに、美しさに転がり落ちるまでにそう時間はかからなかった。

明るい彼女が好きだ。

よく笑う彼女が好きだ。

堂々として自分に自信のある振る舞いが好きだ。

困ったら視線をすぐ外すそんな癖も愛おしい。



イリーナはある一定の基準を満たしたものの聖印を発現させる力を持っている。そんな事ができる人物など聞いたことは無い。まさに天賦の才能だと言える。

イリーナは力のことはある一定の偉い人には言ってあるのだと言っていた。

もし自分が王であればイリーナは決して外には出さない。

イリーナもそれは分かっているのか、どこかメディルスに対しては一線を引いて接しているように感じていた。何度か送っている婚約の打診も全て突っ返されていた。


だから、今回はこの場を利用することにした。四カ国合同親善試合。この観衆の前での告白であれば観客を味方にイリーナに正式な求婚ができる。

もちろん優勝する気でいたが、メディルスはエンディオに勝つことが出来なかった。


エンディオから月桂樹の冠を受け取った彼女は嬉しそうに笑っている。


見たくないのに目をそらせない。あんな笑顔を自分にも沢山向けて欲しい。


エンディオ・レイトン……彼女の事を想う気がないなら本当に大人しくしていて欲しい。


こんなに狂おしいほど想っているのは自分だというのに。

締め付けられるように胸が痛む。

フラフラと待機場に入ると、メディルスは静かに涙を流した。


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