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騎士の部は各国から選ばれた合計20人程度の出場者がトーナメント形式で戦う。でかでかと貼られたトーナメント表をオペラグラスで見るとエンディオは後半第7試合からの登場だった。
「あら?」
トーナメント表に『メディルス・サレン』の名前を見つけてイリーナは少し目を見開く。
メディルスとは彼が帝国に帰ってから連絡を取っていなかった。イリーナはまさか親善試合に出てくるとは思っていなかったのだ。
(まぁ、ウロボロスの聖印が発現したとなれば当然の流れかしら)
トーナメント表にはカイラス・サレンの名前もある。親子で出場とは珍しいが、ないわけではないのだろう。
彼の出場は第3試合から。待機場から出てくるメディルスは長い紫髪をポニーテールにしていた。
イリーナは声をかける。
「メディルス〜頑張ってね〜」
はたと、イリーナがいることに驚いたのだろう。メディルスは目を丸くしてこちらを見るとふんわりと笑った。
きゃあと周囲の女性達が黄色い声をあげる。
(流石メディルスは女性人気がすごそうね)
第3試合は瞬殺とも言える速さでおわった。
開始直後に相手の剣をはね上げ一瞬で終わらせてしまったのだ。
見応えがないといえばそうであるが、メディルスは聖印持ち。
格差は明らかなものであった。
「メディルス、強かったのねぇ」
強くなったのねぇが正しいのかもしれないが、日頃の鍛練がしっかり積み重なっていないとあの動きはできない。ウロボロスの聖印がなくとも研鑽は欠かさなかったのだろう。
「師匠の方が強いよ」
ムスッとリーガルは頬を膨らませる。
パチパチと拍手の中待機場に戻ってくるメディルスは、イリーナの前で立ち止まると膝まづく。何事だろうとキョトンとしていると、メディルスはイリーナの方を見て高らかに言い放った。
「イリーナ・サーシェス。もしこの大会、私が優勝出来たら結婚して欲しい」
よく通るテノールの声は会場を震わせる。どよりと冷やかしの声のような歓声や悲鳴のようなざわめきが波のように広がっていく。
「こ、困りますメディルス!」
イリーナはざわめきの中欄干から身を乗り出す。
「わかっています。私がずるい男であることくらい。それでも見ていてくださいイリーナ。私は必ず勝ってみせます」
メディルスはイリーナの手を取るといつものようにそっと口付ける。そのままイリーナの目をじっと見つめた後は身を翻しスタスタと待機場に入っていってしまった。
「そーいうことじゃなくってぇ!!」
イリーナの力は尋常じゃない。とてもとても国外に出せるものではないのだ。ましてやイリーナが嫁ぐとなれば、ヒナツやミーチェなどは確実に着いてくるだろう。ダメだとお願いしてもだ。特にヒナツは誰の手にも負えない。
当然、国外に嫁ぐなどいい顔をされない。
そろりと貴賓席を見ると案の定王と王妃が難しい顔をしていた。
こちらに気づくと2人仲良く大きく手でバツを作った。
(ですよねー)
分かってはいたが想定外の事態にイリーナは恥ずかしさもあってか泣きそうだった。
もしかしたらもう既に勝手にどこぞの家に嫁ぐようにと決められてしまっていそうである。
エンディオの元に嫁がされる可能性が1番高いがそんな王命で嫁ぐとなればエンディオにとってイリーナは『王命を使ってまで妻になりたがる浅ましい女』になってしまう。そんなことでこれまでの努力をむだにしたくはなかった。




