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今日も今日とて彼は花束を持ってイリーナに会いに来ていた。
「もう、ここに来る理由なんて無いんじゃないの?メディルス」
「君がいるのに訪問する理由が無くなるわけないじゃないか」
「私としてはちゃんとあの部屋での出来事を口外しないのなら御礼なんて必要ないと思っているのよ?」
「それでは僕の気がおさまらないよ」
とか何とか言ってメディルスは既にイリーナに多くのアクセサリーやドレスを贈ってきていた。
イリーナがもういいと悲鳴をあげる程である。
「今日はたまご食堂のプリンだよ。君これが好きって言ってたよね」
今日のお土産はサーシェス辺境伯領で有名な店のプリンだった。
彼は最近はうちの領で過ごしているのか、サーシェス辺境伯領で手に入る物をお土産に持ってくる。
「貴方、私を太らせてどうするつもりなの?ここ、シュークリームも美味しいのよね」
確かにたまご食堂のプリンが美味しいと伝えたのはイリーナである。もちろん美味しくいただくが、それと毎日やってきては蔵書には目もくれずイリーナとのお茶を楽しむようになってしまったメディルスとは別の話だ。
「そうなのかい?じゃあ明日はシュークリームを買ってこよう」
「あなた、はやく家に帰って聖印の事を報告した方がいいんじゃないの?」
「……僕も聖印を手に入れたらいの一番にそうすると思っていたんだけどね。愛の前にはどんな予想もたてられないらしい」
メディルスはそんな事をウインクしながら言うと、イリーナの手を取って手の甲に口付ける。
そんな行動に慣れていないイリーナは視線をさ迷わせ、バッと手を引っこめた。
「ふふっ。本当に可愛らしい」
「お生憎様ですが。そういうのには興味ありません!」
なんたってイリーナには好きな人がいるのだ。例えエンディオと同じくらいの美丈夫からの好意だとしても、ちょっと嬉しいと思うくらいで、それくらいで、それくらいなのだ。むにむにと赤らみそうになる頬を両手で抑える。
(これは生理的に自然な反応であって決してメディルスの事が好きになっちゃったとかそう言うわけではないんだから!!)
なんてことを考えながらぺちぺちと頬を叩く。
「本当はずっとこうして通っていたいんだけれどね。残念ながらそろそろ僕も家に帰らないといけないんだ」
メディルスはため息混じりにそう言うとイリーナに視線をあわせる。
「それまでは毎日来るし、家に帰ってもまた必ず来るよ。待っていてくれるかい?」
「待つ筋合いがないわ。さっさとお家に報告でもしてお父様の鼻を明かしてやるといいのよ」
「おかしいな、こんなに辛辣なレディではなかったはずなのに。照れているのかい?」
なんて笑いながら言うメディルスの目はどこまでも本気だった。
厄介な人に好かれてしまったなとイリーナは眉をひそめる。
それからしばらくイリーナが顔を真っ赤にするのを楽しむかのように愛を囁いたメディルスは「明日はシュークリームを買ってくるね」とサーシェス辺境伯家をあとにするのだった。
(くそう。イケメンめ……私はエンディオ様一筋なんだから何を言われたって揺らがないわよ)
そんなイリーナの様子をどこかから見ていたであろうエディに
「ガチでエンディオ様から乗り換えるんですか?」
などと言われ、イリーナはふたたび彼を小突くことになるのだった。




