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聖印を表面化するにはいくつか段階がある。まず前段階である【オーラの浸透】そして【聖印の発現】、【聖印の固定】と続く。


「イリーナ、君の目が……」

「あぁ、これ?いつもこうなっちゃうのよ。気にしないで」


聖印の発現の段階になると、イリーナの瞳はシェンと同じような瞳の色に変わるのだ。どうしてかと聞かれるとイリーナにも謎の現象であった。シェン曰く、聖印を発現するこの力の行使はシェンの力を借りて行っているため瞳の色がかわるのではないかとの事だが、彼自身よく分かっていないことのようだった。


「ねぇメディルス。今、どこか痛い場所はない?」

「痛い?そう言えば右手の甲がヒリヒリするような……」

「あぁ。じゃあそこなのね」


どうやら【聖印の発現】には成功したようだ。

聖印の発現に必要なのはイリーナの視線だ。上手く説明出来ないが、イリーナが【聖印の発現】をかけながら見ることでオーラが収束する。


(あとは固定するだけ)


イリーナはメディルスの右手を包み込むように握ると、一気に祝福の力を注ぎ込む。


「あつっ」


熱を持ったメディルスの右手の甲は、本人からしたら火傷でもしているかのような感覚になるらしい。熱いと手を離しそうになるメディルスを抑え込み、手を握り続ける。

しばらくして、熱が引いた頃に手を解けば、そこに現れたのは聖印。

この文様はウロボロスの聖印と呼ばれるものだった。


「は?」


それを見たメディルスはポカンと口を開けて固まってしまった。


「私にはね、一定の基準を満たした人に聖印を発現させてあげられる特別な力があるの。内緒よ?」


メディルスは信じられないというふうに右手をグーパーしている。

それはそうだろうイリーナが熱を操る魔術を使って聖印の印だけつけたと思われても仕方のないことだった。

イリーナは部屋の籠に入れられてあったリンゴをメディルスに渡す。するとメディルスが軽く握ったリンゴはバキャリと音を立てて弾け、ボロボロと崩れてしまった。

ウロボロスの聖印。その能力はドラゴンの聖印と同じ『身体能力強化』なのだ。


「ふふ。上手く発現できたみたいね。どう?悲願が叶った感想は?」


メディルスはその琥珀色の双眸からポロポロと涙を流していた。

それはそうだろう。死亡率5割を超え、博打とも言える精霊の血を飲んでまで欲した力だ。


「泣くほど嬉しいの?私に感謝してよね」


そう言うと、メディルスはその瞳をイリーナに向ける。そしてイリーナの手を強い力で引き寄せるとぎゅううっと抱きしめた。


「ありがとうイリーナ、本当に僕はどういえばいいか」

「わわっメディルスっあっ、痛い痛い」


発現したばかりとはいえウロボロスの聖印だ。その怪力で抱きしめられ、イリーナは本気で潰されそうになっていた。

キリキリと締め付けられ身体が痛い。


「あぁ、ごめん、そうだね。女性は宝物を扱うように優しく抱きしめないと」


ボロボロと涙を流しながらメディルスはイリーナをふんわりと抱きしめ、そのまま額にキスを落とした。


「ちょちょちょっと、メディルス!」

「これくらいは許してください、レディ」


またふたたび抱き締められたイリーナはしばらく離しては貰えなかった。



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