俺の幼女化
ー天音さん。柑崎天音さん。
…誰だ?人の昼寝の邪魔をするのは…
ー邪魔はしていませんよ、ここはあなたの夢の中ですから。
…は?
ーあなたの力が必要なのです。
…そんなことはどうでもいい。俺の夢から出て行ってくれ。
ーそれなら仕方ないですね。あなたは…
…何の話だ?ともかくどっか行ってくれ。眠いんだよ。
ーまあよいでしょう。あなたは特別な…
…はぁ…
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
俺をこれまでにないほどに不快だった眠りから覚ましたのは、我が妹・琴音の声だった。
「兄貴、入るよ〜…!」
「…俺、寝ちまってたか。まだ昼の3時だな。スマンスマン…ってなんで固まってんだよ?俺の顔に何か着いてるか?」
「…ねぇ、兄貴、鏡、見てみな?」
俺は妹の顔から鏡に目を移す。すると、そこにいたのは…
「…はぁ!?」
俺の寝間着に身を包んだ、女の子だった。
妹より一回り以上小さいようにさえ見える、か弱い幼女。琴音が12歳だから、8、9歳くらいか?それが、今の俺だった。
「って、マジかよおい。これ、俺なのか?」
「、、、みたいね。」
「何か手がかりはないのか?」
あれ?何か紙が落ちてるわよ。ほら」
琴音が、今の俺の小さな手に紙切れを押し込んだ。
「お姉ちゃんが読んであげようか?」
「じゃかあしぃ、読めるわこんくらい!
なになに、魔法少女セット取扱説明書?」
「へえー、兄貴が魔法少女か。悪くないわ」
「どこが!?」
「えーっと、"魔獣が現れたら、ブレスレットを掲げ、(自らのヒーローとしての名前)トランスフュージョン!と叫びなさい。変身して戦闘携帯になれます。その際生成されるステッキが、あなたの基本武装です"」
「ヒーローとしての名前ってなんだよ?」
「ブレスレットのジュエリー周辺に刻印があります、だって。」
「、、、これか?ラブリーレッドって、そんなの叫べないぜ?」
「試しにやってみてよ。じゃないと、ベッドの下のもの、お隣さんに見せちゃうよ?いいの?」
「はいはい。ラブリーレッド、トランス…ふゅーじょんっ!」
俺の身体が、光に包まれた。天井を突き破り(!)空中に浮き、服が脱げるとリボンのようなものが身体に巻き付く。
それは魔法少女のコスチュームになった。ステッキも現れ、俺はそれを手に取る。小さな手には少し重いし大きいが、なんとか持つことができた。
再び地面に降り立ち、
「私が炎の戦士ラブリーレッドよ、絶対にあんたなんかに負けないんだからねっ!」
恥ずかしい決め台詞を叫ぶところまで全自動。
「…かわいいわね、兄貴…いや、ラブリーレッド?」
「五月蝿い。変身解除はどうするんだ?」
「ブレスレットが変形したステッキの宝石に、アンリミテッドってさけぶんだって」
「…アンリミテッド」
叫んだ瞬間、ステッキは氷解してブレスレットに戻り、服になっていたリボンは解けて元のブカブカの寝間着にもどった。
「やっぱ服ごと戻っちゃうか…あ、ちょっと待ってて」
琴音が部屋を出る。
俺は、自分の拳を見た。紅葉のように、とまではいかないが、小さな子供の、それも女の子の手だった。
鏡で、自分の顔を見た。妹のものよりさらに幼さとあどけなさの残る、美しい幼女の顔だった。
自分の体を見た。元のたくましさはどこへやら、小さな子供そのものの身体だ。俺の知る限り、琴音はジュニアブラというものをもうつけているはずだ。妹より未熟な身体に、なってしまった。
自分でなければ良かったのに。そう思った。
「おまたせ〜」
琴音が、大きなダンボールを抱えて戻ってきた。
「…なにそれ」
「私の昔の服よ。流石に全部は取ってないけど、とりあえずそのままじゃ動きにくいでしょう。着替えな」
「…じゃあ、出てって」
「…何の話?」
「…着替えるから、部屋から出ていっては頂けないでしょうか?」
正直言ってこの未熟な身体を実の妹の前で晒すのは屈辱だ。
「…駄〜目!」
「へ?」
「さて…さ〜あ天音ちゃん、脱ぎ脱ぎしましょうね♪」
「ひっ?目が、目が怖いですよ?」
とっくのとうに上だけになっていたパジャマを脱がせられ、俺は裸の状態にされた。
「いいねえ、この(自主規制)も穢を知らない綺麗な一本スジ!…じゃあ、このぱんつハキハキしようか?それともお姉ちゃんがはかせてあげようかな?」
助けて。俺の妹(今は姉)は変態だったよ、小6にして。
ロリに履かせるならこれで決まり、というほど俺らが心酔してきたモノ…縞パン。
しかし、自分で履くことになるとは正直思わなかった。
決意を決め足を通し、両手で引き上げる。
本来そこにあるはずのモノがないせいで、それは股間にビッタリと密着した。
あ、これを喪失感っていうのか。
俺は多分いま、とても大切なものを失った。
「じゃあ次は…これかな?」
取り出してきたのは、あきらかに女児用の…小学校の体操服。
2ねん 1くみ かんざきことね
「…いや、おかしいでしょ」
「じゃあこれ?」
活発な子供らしいデザインのワンピース。
「もしくは…これがいいのかな?」
旧型スク水、平仮名で「1の2 かんざき」。
「天音ちゃんが選んでいいんだよ?」
ブルマ、普段着、もしくはスク水。
こんなものは三択とは言わない。
「こ…このワンピースにします…」
!!
「そっかぁ。じゃあ、バンザイして」
「…なあ、お前楽しんでるだろ」
「もちろん!じゃあ、ばんざーい!」
「自分で着る」
「駄目、天音ちゃんは裸でいたいのかな?」
「…ちっ」
渋々両手を頭上に上げる。
この年になってピンクの女児服とは。恥ずかしいにも程がある。
しかし、俺は知らなかった。
これが、これからの俺の苦労のたった一部分であることを。