第157話 伯父➁
「きみと妹にずっと謝りたかったんだ。力になってやれなくて、すまなかった」
アンジュは自分こそ謝りたい気持ちだった。光魔法を利用しようとしているのでは、と邪な考えをしてしまったのだ。実際は妹思いで、姪を養女にと考えるほど心優しい人だった。
「謝罪など必要ありません。村での生活は楽しかったので」
両親がはやくに他界して寂しさは抱えていたが、自分が不幸だと思ったことはない。王族や貴族のような裕福な暮らしではなくとも、その暮らしが当たり前だと思っていたし、村人たちと支え合う生活が性に合っていた。それにその生活があったからこそレイフォナーと一緒になることができたのだ。
「アンジュ妃殿下。いつか我が屋敷に遊びに来てください」
アーメイアの部屋は前公爵が片付けてしまったが、こっそりと思い出の品をいくつか残してあるという。それを見せたいと言ってくれた。
「ぜひ!ありがとうございます、伯父様!」
「そう呼ばれるのは、なんだかくすぐったいな」
エルゼルドがアンジュに会いにきた理由が明らかになったところで、国王はもう一つの質問を投げかけた。
「エルゼルド。アーメイアが光の魔力を持っていたことは知ってるか?」
「アーメイアが?え、いや・・・あの子の魔力は風だろう?」
アンジュは国王に促され、持ってくるよう言われていたアーメイアの手紙をエルゼルドに渡した。これには彼女の過去や秘密、アンジュが進むべき道が記されている。
手紙に目を走らせるエルゼルドの手は、小さく震えていく。アーメイアが光の魔力を持っていたことを初めて知り、彼女が亡くなった理由にはクランツが関わっていることに混乱しているのだ。
国王は「そのクランツは私の息子のクランツではない」と否定し、これまでの経緯を説明した。アンジュとレイフォナーの生まれ変わりのことから封印が解けた二百年前のクランツのこと、闇空間のことや息子のクランツが身体を取り戻したことまで何もかもを。
エルゼルドは冒険譚を聞かせてもらった気分だった。
国王はさらに孫のレイディックにも光の魔力があることを伝えた。途絶えていたはずの光の魔力が三代に渡り発現したのだ。ラプラナ家にはこの二百年、アーメイア以外にも光の魔力を持つ者が生まれていたのではと考えている。「そんな話、聞いたことがない・・・」と答えたエルゼルドに調べるよう命じた。
話が一区切りしたところで、国王たちはアーメイアとの昔話に花を咲かせている。それを聞いていたアンジュは、母がみんなから愛されていたのだと改めて実感した。だが彼らの会話は不穏な雰囲気へと移っていった。
「覚えてないのか・・・?」
と言ったエルゼルドの表情は険しい。
「ああ。私がアーメイアに嫌われていた理由・・・まったく見当もつかない」
「き、ききっ貴様ぁぁあああ!!」
エルゼルドはテーブルにティーカップを叩きつけ、勢いよく立ち上がると国王を指さした。
「あの日のことを覚えてないだと!?アーメイアはものすごく泣いてたんだぞ!あのときは貴様に殺意すら抱いたわ!!」
「えぇー・・・ごめん、覚えてない。どの日のこと?てか貴様ってひどくない?私、国王なんだけどー」
「だまらっしゃい!アンジュ、いますぐ離縁するんだ!レイディックを連れてうちに来なさい!大甥がこんなやつの世話になるなど解せん!」
アンジュはどうしていいのかわからず、助けを求めるようにレイフォナーや王妃に視線を送った。だがこの光景は珍しくないようで、二人は呑気にケーキを食べている。言い合いはまだ続いており、というかエルゼルドが一方的に激怒しているのだが止めに入る隙もない。国王がアーメイアに何をしたのかは不明なままだが、エルゼルドが兄バカということだけは明らかだ。




