第二話 魔法科の少女と未知の光
今回も長くなっちゃいました汗
文字数は減らしたいのに…
続きをどうぞ!
――火の初級魔法しか使えない。
その事実を前に、レンは自分の手を見つめていた。
おかしい。
魔力がないわけではない。
むしろ、魔力そのものは十分に感じられる。
だが、魔法を発動しようとすると――。
その瞬間、魔力が霧のように散ってしまう。
「……なんだ、これ」
もう一度、魔力を集める。
《ファイア》なら、なんとか発動する。
だが、それ以外は駄目だった。
風も。
雷も。
光も。
回復も。
もちろん、移動の魔法も。
まるで、魔法として形になる直前に、何かに邪魔されているようだった。
ケビン「どうした?」
ケビンが改めて尋ねる。
レン「……魔力はあるんです」
レンは、自分の感覚を確かめるように答えた。
レン「でも、魔法を使おうとすると……途中で消えるんです」
ケビン「消える?」
レン「はい。霧みたいに、散ってしまうんです」
ケビンは少し考え込んだ。
ケビン「ふむ……」
レンの身体から感じられる魔力を探るように、目を細める。
ケビン「この世界に来たことが影響しているのかもしれないな。魔力は十分にあるのに、これまで使えていた魔法が使えなくなった……」
レン「何か分かりますか?」
ケビン「すまない。今のところ、原因までは分からない」
そこで、学園長が口を開いた。
学園長「一度、魔法科で詳しく調べてもらうといい」
学園長「魔力そのものに問題があるのか。それとも、別の原因があるのか。専門の設備を使えば、何か分かるやもしれん」
レン「分かりました」
レンが頷くと、学園長は少し考えてから続けた。
学園長「それと、レン君」
レン「はい」
学園長「君には特殊科が合っていると思う」
レン「特殊科……ですか?」
学園長「ああ」
学園長は穏やかな口調で説明を続けた。
学園長「君がなぜこの世界に来たのか。なぜ、これまで使えていた力が使えなくなったのか。現時点では、分からないことばかりだ」
学園長「だが、君が扱える魔法の種類や、これまでの戦闘経験を踏まえれば、既存の学科に当てはめるよりも、特殊科で学ぶほうがよいと私は考えている」
レン「……なるほど」
学園長「もちろん、特殊科への入学には、本来なら面接と試験が必要になる」
そこで、ケビンが口を挟んだ。
ケビン「ただ、今回は学園長との面談に加えて、君の事情や能力についても確認できた。これらを選考の一部として扱い、残る手続きは受付で進めてもらおう」
学園長「君のような生徒は、そうそう現れるものではないからな」
学園長は小さく笑った。
学園長「もちろん、入学したからといって、すべての問題が解決するわけではない。それでも、この学園ならば、君が自分の力と向き合うための手がかりが見つかるかもしれん」
レン「……分かりました。よろしくお願いします」
レンが頭を下げる。
学園長「レン君。君がこの世界に来た経緯についてだが……」
レン「はい」
学園長「今のところ、その事実は私たちと、ここにいる者だけが知っている。できれば、このことは不用意に口外しない方がいいだろう」
レン「……やはり、知られるとまずいのでしょうか?」
学園長「必ずしも、まずいことになるとは限らない。だが、異世界から人が現れたとなれば、興味を持つ者は大勢いるだろう。中には、君の事情などお構いなしに、あれこれ詮索する者もいるかもしれない」
ケビン「君が落ち着いて学園生活を送るためにも、今は秘密にしておいた方がいいだろう」
レン「分かりました。俺から話すことはしません」
学園長「ありがとう。もちろん、君が信頼できる相手に話すことまで禁じるつもりはない。だが、話す相手は慎重に選んでほしい」
学園長はそこで一度言葉を切り、机の引き出しから小さな袋を取り出した。
学園長「それから、これを渡しておこう」
レン「これは?」
学園長「この世界のお金だ」
差し出された袋を受け取る。
中には、見慣れない硬貨が入っていた。
学園長「君は、この世界のお金を持っていないのだろう?」
レン「はい。でも、こんなにいただいても……」
学園長「あくまで最初の餞別だ。しばらくは、それで何とかなるだろう」
学園長「ただし、これから先の生活費は自分で稼ぎなさい。学園で過ごすということは、そういうことでもある」
レン「……! ありがとうございます!」
レンは袋を大切にしまった。
学園長「うむ。それでは――」
学園長は、穏やかに微笑んだ。
学園長「ようこそ、アスペリオン学園へ」
レン「……はい!」
レンは、もう一度深く頭を下げた。
こうして、彼の新しい生活が始まろうとしていた。
◇
マナ「それでは、魔法科へ向かいましょう」
部屋を出ると、マナが先頭を歩きながら案内を始めた。
マナ「魔法科は、この先ですよ」
レン「魔法科……」
レンは周囲を見渡した。
学園の中を歩くだけでも、これまでいた世界とは違うものが次々と目に入る。
廊下を行き交う生徒たち。
見たことのない道具を抱えた者もいれば、手のひらに小さな炎を浮かべながら歩いている者もいる。
ここでは、魔法が特別なものではないのだろう。
そんなことを考えていると――。
――ドンッ!
突然、廊下の先から大きな音が響いた。
レン「今のは?」
マナ「魔法科の訓練場ですね」
マナが笑った。
マナ「ちょうど誰かが訓練しているみたいです」
さらに進むと、開けた空間が見えてきた。
その中央で、一人の制服姿の少女が魔法を放っている。
赤みがかった長い髪を、左右で高く結んだ小柄な少女だった。
しかし、その身体から放たれる魔法は、とても小柄な少女のものとは思えない。
少女「――《フレイムランス》!」
轟音とともに、大きな炎が無数の槍となって飛び出した。
炎の槍は一直線に標的へと向かい、次々と直撃する。
燃え上がる標的を見届けると、少女は満足そうに笑った。
少女「よしっ!」
そして、こちらの存在に気づく。
少女「あっ!」
少女はぱっと表情を明るくすると、こちらへ駆け寄ってきた。
リーゼ「マナさんだ! ヤッホー!」
マナ「こんにちは、リーゼさん」
リーゼ「こんなところで何してるの?」
マナ「今日は、少し案内をしているんです」
リーゼは、マナの隣に立つレンへと視線を移した。
リーゼ「その人?」
マナ「はい。レンさんです。今日から学園に通うことになりました」
レン「俺はレン。よろしく」
リーゼ「あたしはリーゼ・フレイア!」
少女は胸を張った。
リーゼ「魔法科の一年で、天才魔法使いよっ!」
レン「……大した自信だな」
思わず口にすると、マナが小さく笑った。
マナ「でも、リーゼさんには本当に魔法の才能があるんですよ」
マナ「魔力量は魔法科でもトップクラスですし、火の魔法においては、彼女の右に出る者はいません」
レン「……確かに、さっきの火の魔法は相当なものだった」
リーゼ「でしょ?」
リーゼは得意げに笑った。
しかし、すぐにレンをじっと見つめる。
リーゼ「……そういうあなたも、結構な魔力量があるのね」
レン「そうなのか?」
リーゼ「うん。最初は近接科の人かと思ったけど、魔法も使うんでしょ?」
レン「まあ、一応はな」
レンは少し言葉を濁した。
レン「俺は特殊科に入る予定なんだ」
リーゼ「特殊科?」
リーゼが目を丸くする。
リーゼ「へえ……珍しいじゃん」
レン「あまりいないのか?」
ケビン「そうだね。全学科の中でも、在籍する生徒は一番少ないよ」
ケビンが答えた。
ケビン「その代わり、個性的な生徒が多い。既存の学科では学びきれない才能を持っていたり、自分の可能性を探していたりね」
リーゼ「ふーん……」
リーゼは興味深そうにレンを眺めた。
リーゼ「……なんか、面白そうな人ね」
そして、何かを思い出したように手を叩いた。
リーゼ「そうだ! 魔力測定に来たんでしょ?」
レン「ああ、そのつもりだけど」
リーゼ「だったら、あたしも見ていい?」
レン「別に構わないけど」
リーゼ「やった!」
リーゼは嬉しそうに声を上げた。
リーゼ「あなたからは、何か不思議な魔力を感じるんだよね……」
レン「不思議な魔力?」
リーゼ「うん。うまく説明できないんだけど、なんか普通とは違う感じがするの」
レンは疑問に思いながらも、彼女とともに魔力測定のための部屋へと向かった。
◇
魔法科の一室。
そこには、大きな透明の水晶玉が置かれていた。
教師「では、まずこちらに手を触れてください」
教師に促され、レンは水晶へと手を伸ばす。
指先が触れた瞬間――。
水晶の中に、淡い光が灯った。
その光は徐々に強くなり、やがて水晶全体へと広がっていく。
教師「……これは」
教師が目を見開いた。
隣から覗き込んでいたリーゼも、思わず声を上げる。
リーゼ「えっ、すご……」
水晶いっぱいに広がる光。
その反応は、かなり大きなものだった。
教師「魔力量は……かなり多いですね」
ケビン「どのくらいですか?」
教師「魔法科全体で見ても、上位に入るでしょう」
リーゼ「ま、まあ、あたしほどじゃないけど!」
リーゼは少しだけ視線を泳がせた。
教師は苦笑しながら、次の水晶を取り出した。
教師「それでは、次に属性を調べましょう」
今度の水晶は、先ほどのものとは少し違っていた。
教師「こちらは、測定する者が持つ魔力の性質を読み取り、対応する属性の現象を内部に映し出す水晶です」
教師「例えば、火の適性があれば炎が、風の適性があれば旋風が現れます。雷なら稲妻、水や氷なら、それぞれ水流や氷の結晶といった具合ですね」
教師「複数の属性に適性がある場合は、それぞれの現象が順番に映し出されます」
レン「なるほど……」
教師「では、手を触れてみてください」
レンは頷き、水晶玉に手を当てた。
すると――。
水晶の中に、赤い炎がゆらめいた。
続いて、緑色の旋風が渦巻く。
黄色い稲妻が走り、白い光が水晶の奥から差し込んだ。
最後に、淡い緑色の光の粒が舞い、波紋のように広がっていく。
それぞれの現象が、一つずつ水晶の中に映し出されていた。
リーゼ「火、風、雷、光、それに回復まで……?」
リーゼが驚いたように水晶を覗き込む。
リーゼ「こんなに適性があるの? あなたは一体――」
そのときだった。
水晶の奥で、小さな光が灯った。
炎でもない。
旋風でも、稲妻でもない。
先ほどまで映し出されていた現象とは、明らかに異なる光だった。
一同「……?」
ほんの一瞬。
何とも形容しがたい光が、水晶の奥で瞬いた。
そして、それはすぐに消えてしまった。
教師が水晶を覗き込む。
教師「……今のは?」
ケビン「何か反応があったようだが……」
教師「分かりません。少なくとも、私の知る属性の反応とは異なっています」
リーゼも、真剣な表情で水晶を見つめていた。
リーゼ「……何だったの?」
誰にも分からなかった。
レン自身にも、心当たりはない。
教師「今までに見たことのない反応です」
ケビン「未知の属性……あるいは、何らかの特殊な能力を示しているのかもしれないな」
ケビンは考え込むように顎に手を当てた。
ケビン「ただ、これだけでは何とも言えない。もう少し調べる必要がありそうだ」
レン「……そうですか」
レンは自分の手を見つめた。
魔力量は十分にある。
複数の属性にも適性がある。
それなのに、魔法を発動しようとすると、魔力は霧のように散ってしまう。
レンは、教師に尋ねた。
レン「魔法を使おうとすると、発動する前に魔力が消えてしまうのですが、何か原因は分かりますか? 以前は、こんなことなかったんです」
教師「えっ……そんなことが?」
教師は驚いたように目を見開いた。
ケビン「レンくん、もう一度、実際に見せてもらってもいいかな?」
レン「はい」
レンは右手を前に出した。
レン「《ファイア》」
手のひらに小さな炎が灯る。
初級魔法としては正常に発動している。
しかし、レンが魔力を込めても、炎はそれ以上大きくならなかった。
ケビン「火の魔法は問題ないね」
レン「はい。しかし、今はこれが限界です」
続いて、レンは風の魔法を試した。
レン「《ウィンド》」
手元に魔力が集まる。
しかし、風が生まれる直前、魔力は霧のように散って消えてしまった。
教師「……確かに、発動していませんね」
教師「魔力の制御に問題があるのでしょうか?」
ケビン「その可能性はある。だが、レンくんは以前、複数の魔法を使いこなしていたんだろう?」
レン「はい。火や風、雷の魔法はもちろん、光や回復の魔法も使えていました。」
ケビン「それが突然、発動できなくなった……。単純に制御が苦手になったというだけでは、説明がつかない気もするな。」
教師「確かに……」
ケビンは、改めてレンの手元を見つめた。
ケビン「今の段階では、制御の問題なのか、それとも別の原因があるのか、判断できない。もう少し詳しく調べる必要がありそうだ」
レンは自分の手を見つめた。
魔力が不足しているわけではない。
属性への適性も確認できている。
それなのに、なぜ魔法が使えないのか。
まるで、魔法が形になることだけを拒まれているようだった。
そして、水晶に現れた正体不明の光。
それが何を意味しているのかも、今は分からない。
魔法が使えなくなったことと、あの光。
何か関係があるのだろうか。
考えても、答えは出なかった。
リーゼ「……面白いじゃない」
リーゼは、楽しそうに笑っていた。
◇
魔力測定を終え、魔法科を出たあと、ケビンがレンに声をかけた。
ケビン「さて、君にはこのあと受付で手続きをしてもらうわけだが……」
ケビンは一度言葉を切り、レンの顔を見た。
ケビン「特殊科への入学について、改めて一つだけ確認しておきたい」
レン「何でしょうか?」
ケビン「君は、この学園で何をしたい?」
レンは、すぐには答えなかった。
この世界に来てから、まだそれほど時間は経っていない。
見たことのない街。
自分とは異なる種族の人々。
魔法と技術が発展した、これまでの世界とはまるで違う暮らし。
そして、失われた自分の力。
分からないことばかりだ。
レンはゆっくりと口を開く。
レン「……俺は、自分の力を取り戻したいです」
レンは、まっすぐにケビンを見つめた。
レン「なぜ、魔法が使えなくなったのか。どうすれば、元に戻せるのか。それを知りたい」
レン「それに……」
レンは、周囲へ視線を向けた。
先ほど見た、様々な種族が行き交う街の景色が思い浮かぶ。
レン「俺のいた世界では、こんなふうに、いろんな種族が当たり前のように一緒に暮らす光景は見られませんでした」
レン「だから、もっとこの世界のことを知りたいんです」
少しだけ間を置いて、レンは続けた。
レン「……もし俺がこの世界に来たことに何か意味があるのなら。それが何なのかも、知りたいと思っています」
ケビンは黙ってレンの話を聞いていた。
やがて、小さく頷く。
ケビン「……合格だ」
レン「え?」
ケビン「君の目的は分かった。ならば、ここで学ぶ意味は十分にある」
ケビンは笑みを浮かべた。
ケビン「明日からよろしくな、レンくん」
レン「……はい! よろしくお願いします!」
ケビン「君の力や、この世界に来た意味については、私も気になっている。分かることがあれば、できる限り協力しよう」
レン「ありがとうございます」
ケビン「授業の予定については、他の学科の分も含めてマナさんに聞くといい。すまないが、私はこの辺で失礼するよ」
ケビンはそう言うと、研究室へと戻っていった。
その背中を見送ってから、レンはマナとともに受付へ向かった。
◇
受付での手続きを終え、レンは正式にアスペリオン学園の生徒となった。
所属は特殊科。
授業は明日から始まる。
他の学科の授業予定が記された一覧表も受け取った。
マナ「こちらが寮の案内です」
マナから説明を受け、レンは書類に目を落とした。
マナ「寮費は月八百Gです」
マナ「食堂を利用する場合は、一食八十から百二十Gくらいですね」
レンは、学園長から受け取った小袋を思い出した。
中に入っていた硬貨の枚数を、正確に数えたわけではない。
それでも、しばらくの間は何とかなりそうだった。
マナ「それから、学園では学生向けの仕事もありますよ」
レン「仕事?」
マナ「はい。学園内のお手伝いだったり、外部から依頼を受けたり。学業と両立しながら働いている生徒も少なくありません」
レン「なるほど……」
マナ「冒険者ギルドに登録して、依頼を受ける学生も多いんですよ」
レン「冒険者ギルド……」
その言葉に、レンは少しだけ反応した。
以前いた世界にも、冒険者が集まる酒場はあった。
旅の情報を集めたり、依頼を受けたりする場所だ。
この世界にも、似たような仕組みがあるらしい。
マナ「冒険者ギルドには、魔物の討伐や薬草の採取、荷物の護衛、調査など、さまざまな依頼が届きます」
マナ「学園都市の外で活動することも多いので、外の世界について知るには、ちょうどいい場所だと思いますよ」
レン「外の世界……」
マナ「もちろん、危険な依頼もありますから、最初は自分の実力に合ったものを選ぶ必要がありますけどね」
マナは、少しだけ念を押すように言った。
マナ「学園の勉強だけでは得られない経験もできますし、学園生以外の人たちと知り合う機会にもなります」
レン「……行ってみたいです」
マナ「ふふっ。そう言うと思いました」
マナは嬉しそうに微笑んだ。
マナ「では、その前に――」
彼女は、ふと時計へ目を向けた。
マナ「少し遅くなってしまいましたね。まずは食事にしましょうか」
レン「あ……そういえば」
言われてみれば、朝からいろいろなことがありすぎて、食事のことをすっかり忘れていた。
レンの腹が、思い出したように小さく鳴った。
レン「……すみません」
マナ「ふふっ。謝らなくても大丈夫ですよ」
マナは楽しそうに笑った。
マナ「学食へ案内しますね」
◇
学園の食堂は、想像していたよりもずっと広かった。
大勢の生徒たちが食事を楽しみ、あちこちから賑やかな声が聞こえてくる。
人間だけではない。
獣の耳や尻尾を持つ者。
額に小さな角を生やした者。
耳の長い者。
レンがこれまでいた世界では、滅多に見ることのなかった種族が、当たり前のように同じテーブルを囲んでいた。
それぞれが友人と談笑し、食事を楽しんでいる。
その光景に、レンは思わず目を奪われた。
レン「……本当に、いろんな種族がいるんだな」
マナ「ええ。アスペリオン学園には、世界中から生徒が集まってきますから」
マナ「出身地も種族も違う人たちが、一緒に学んでいるんです」
マナは慣れた様子で食堂の一角を指さした。
マナ「料理もいろいろありますよ。こちらのカウンターで好きなものを選べます」
並んでいる料理を見て、レンは少し迷った。
見慣れた肉料理もあれば、見たことのない野菜や、色鮮やかな煮込み料理もある。
香ばしい匂いが食欲を刺激した。
レン「……じゃあ、これにします」
レンが選んだのは、焼いた肉と野菜、それにパンが添えられた料理だった。
代金を支払い、マナと空いている席に座る。
マナ「いただきます」
レン「いただきます」
レンは手を合わせ、さっそく料理を口に運んだ。
香ばしい肉の味が口いっぱいに広がる。
レン「……おいしい」
マナ「よかったです」
マナも笑顔で食事を始めた。
食事をしながら、レンは改めて周囲を見渡した。
ここには、戦いに備えて武器を磨く者だけがいるわけではない。
魔法を研究する者。
新しい道具を作る者。
学問を修める者。
それぞれが自分の目標を持ち、同じ場所で日々を過ごしている。
戦いのためだけに生きてきたレンにとって、それはどこか新鮮な光景だった。
自分も、ここでなら――。
そんな思いが、ほんの少しだけ胸に芽生えた。
食事を終えると、レンはマナに案内されて寮へ向かった。
寮の場所や部屋までの道順を確認し、部屋に荷物を置く。
質素ではあるが、落ち着いて過ごせそうな部屋だった。自分用に用意された学園の制服もベッドに畳んで置いてあった。
これから、ここが自分の帰る場所になる。
そう思うと、少し不思議な気分になった。
◇
学園を出る頃には、日は少し傾き始めていた。
通りには、仕事へ向かう者や、買い物を楽しむ人々の姿が見える。
レンは、その景色を眺めながらマナの後を歩いた。
レン「冒険者ギルドは、この先ですか?」
マナ「はい。もうすぐですよ」
しばらく進むと、周囲の建物とは少し雰囲気の異なる、大きな建物が見えてきた。
出入りする人々の中には、剣や弓を携えた者もいる。
旅装束に身を包んだ者や、大きな荷物を背負った者もいた。
建物の入口には、冒険者ギルドの看板が掲げられている。
マナ「ここが冒険者ギルドです」
レンは、建物の中から聞こえてくる賑やかな声に耳を傾けた。
自分がいた世界の酒場を思い出す。
あそこにも、旅の情報を求めて人々が集まっていた。
この世界では、どんな出会いが待っているのだろうか。
レンはギルドの扉に手をかけ、ゆっくりと押し開いた。
中から、さらに大きな話し声と笑い声が聞こえてくる。
見知らぬ人々の姿が、レンの目に飛び込んできた。
――こうして、レンは初めて冒険者ギルドへと足を踏み入れるのだった。
燃え尽きたぜ…
次回もお楽しみに…!




