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第62話 いつの世も変わらぬ夏の定番(中篇):美女とウェイと陰キャ男と

<AI依存度>:

ほぼそのまま使用:60%

AI文をベースに改稿:10%

作者独自の構成・設定・加筆:30%


えっと……前篇とは打って変わって、大分書いてもらいました。何せ、こういうキャッキャウフフイベントには無縁ですので。これについてはもうしゃんなしと思ってください。所詮作者は一介の陰キャなので。次はもうちょっと書きたいんですが、次回も夏休み最後のリア充イベントですので、期待しないでください。

さて、お待たせしました。お待ちかねの水着回です。前回の続きですので、61話からどうぞ。


挿絵(By みてみん)

 健介と慎吾は場所を探す。どこかに泰造と千宥が待っているはずだ。

「あれじゃねえか?」

「あ、いたわ。泰造さん、目立つな」

「お、で、千宥ちゃん。……おおお! 急ぐぞ、健介!」

「あわてるなよ」

 健介はそう言いつつも、テンションが上がった慎吾が、制止も聞かずに走り出したため、仕方なく続く。

挿絵(By みてみん)

「健介、慎吾、早かったさ」

 泰造が言う。

「俺ら、着るもん少ないすからね。今頃、女子更衣室は寄せてあげてしてるんじゃないです?」

 慎吾が胸元でジェスチャーを交えつつ笑う。健介が顔をしかめる。

「女の子は大変さ。うちの母ちゃんは元気だった頃、背中の肉をし(・)に(・)集めてたさ」

 笑う泰造。母ちゃん、草葉の陰で怒ってなきゃいいけど。健介が苦笑する。

 そして、健介は千宥に目がいった。

「おあ……」

 ちょっと変な声が漏れてしまった。セパレートタイプで、下はスカートになっている。なるほど、そう来たか。これだったら「わからない」だろう。

「ど、どうかな。こういう水着、初めてで……」

 千宥が赤面しつつ聞く。健介も赤面する。とても照れくさい時間だ。

「おうおう、いいじゃんいいじゃん。鈴蘭さんに選んでもらったんだろ? いいやつあるじゃん」

 慎吾は至極饒舌に答える。

「ありがとう。変じゃなければいいんだけど」

「いいよいいよ、もうかわいくてビーチの視線釘付けよ」

「あ、あんまり注目されるのは嫌だなあ……」

 千宥が苦笑したその時だった。

「おーい! そこか!」

 茉衣子の声だった。着替えをしてきた女性陣、そして着替えはしていないがトイレかどこかに行っていたらしい茜も含め七名が向かってきた。

「おう、探したぞ。でも、いい場所だな。でかした、千宥」

「え? あー……」

 茉衣子に肩を叩かれ、困ったような表情をする千宥。

「茉衣子、探したの俺さ」

「父ちゃん、こういうときは嘘でも千宥のおかげさって言えよ」

「ごもっとも……」

 健介がぼそりとつぶやく。

「俺もせっかく孫と初海水浴だからいい顔したいさ。サラ、おいで」

「じいじ、千宥ちゃんすごいなあ」

 サラは駆け寄りながらも千宥をフォローする。

 できる子だ。健介は唸る。

「茉衣子、寄せてあげては終わったか?」

 慎吾が茉衣子に言う。

「はあ? してねえよ。あたしのおっぱいは、寄せなくてもちゃんとあがってんの。お前なら知ってるだろ!」

 健介は聞いていないふりをした。相変わらず遠慮のない奴だ。

「さてと」

 慎吾が品定めをするように女性陣を見る。それに気づき、つい健介も見る。

 茉衣子は、健介らにも予告していた通り、ビキニだ。去年も別のものだがビキニだった。今時堂々としたものである。

 二生は案の定、露出少なめな水着だった。目が合いそうになり、健介はつい目をそらした。

 美佳は、よくわからないがなんだか高級な感じがする。早速千宥に駆け寄り、千宥の水着を褒めている。

 果文は、なんだか、かわいい。茉衣子のような大胆さや美佳のような派手さはないが。

 あれ、これ誰だ? 健介は首をかしげたが、わかった。雛灯だ。眼鏡がないので、一瞬迷った。今日はこういう日なのでコンタクトレンズなのだろう。さて、水着については、よく言えば実用的、言葉を選ばなければ地味だが、これはこれで雛灯らしい。

 サラもセパレートタイプのかわいらしい水着だった。

挿絵(By みてみん)

 ……しかし、去年と違う緊張がある。改めて、男女比がバグっている。さっきは千宥を別勘定にしたが、やはり改めて、二対七だ。

 俺はなぜここにいるんだ……?

「健ちゃん、どうしたの?」

 無邪気にも果文が声をかける。

「若杉。……俺、場違いだわ。うすうす気づいてたけど」

「ええっ、何で?!」

 果文は唐突にそんなことを言われて動揺している。

挿絵(By みてみん)

「目のやり場に困りすぎる。俺は、美少女だらけの水泳大会に来たのか……?」

「健ちゃん、男子だねえ。でも慎吾先輩と真逆だよね。面白い」

 果文が苦笑する。ふと遠くを見ると、慎吾は千宥にちょっかい出して茉衣子にどつかれていた。

「あいつら、通常運転だな」

「慎吾先輩もすごいけど、茉衣子ちゃんもすごいね」

「お前の姉ちゃん、すごいな。というかあれが来年のお前の姿だろ」

「そんなことないでしょ……」

 果文が顔を引きつらせる。

「でも、健ちゃんの気持ち、ちょっとわかるかも」

「なんで?」

「みんな華があるなって。千宥先輩も、美佳先輩も。あと……」

「果文ちゃん、行かないの?」

 二生が駆け寄った。気づけばほとんどの面々が海に入る準備を始めていた。

「え?! 行くけど」

「何の話してたんですか?」

 二生が健介にも話を振る。

「二生が華があるって話」

「ふえっ!?」

 横から果文が答え、二生がびくっとした。健介は苦笑した。まあ、二生ちゃんも華はあるよな……。

 ちなみに健介は、雛灯が言及されていないことには気づかなかったふりをした。


「ほら、しゃべってないで行くぞ!」

 茉衣子がぼーっと突っ立っている健介たちを手招きし、海を指さした。そのまま走り出そうとしたところで、茜が後ろから肩をつかむ。

「待ちなさい。荷物も置きっぱなしだし、準備も何もしてないでしょ」

「大丈夫だって。海は逃げねえけど、あたしの夏は今しかないんだよ?」

「意味のわからないこと言わないの」

 茜に止められ、茉衣子は渋々荷物の整理に戻った。……既に茉衣子の「ママ」になりつつあるんじゃないか? 健介は苦笑した。

 レジャーシートの上には、それぞれの鞄や着替え、タオルが雑然と置かれている。

 泰造が持ってきた大きなクーラーボックスもあり、中には人数分の飲み物が詰め込まれていた。

「水分はちゃんと摂るんだよ。喉が渇く前に飲むこと」

 茜が言いながら、ペットボトルを一本ずつ確認する。

「はいはい。学校の先生みたいだな」

 慎吾が答えると、茜はじろりと息子を見た。

「あんたと健介くん、日焼け止め塗った?」

「塗ってねえ」

「俺も別に……」

 健介も慎吾に続こうとしたが、茜の表情を見て口を閉じた。

「後で肩が真っ赤になって痛いって騒いでも知らないよ」

「騒がねえって」

「去年騒いでたでしょ」

「……そんな昔のこと覚えてんなよ」

 慎吾がしぶしぶ日焼け止めを取り出した。健介も借りて腕に塗る。肩の後ろから背中にかけては、届かないこともあり、互いに塗ることになった。

「雑にすんなよ」

「男の背中を丁寧に塗って何が楽しいんだよ」

「楽しいかどうかの話じゃねえ」

 二人が文句を言い合う横で、茉衣子が腕を組んで眺めていた。

「女子はもう更衣室で塗ってきたぞ」

「茉衣子、お前も塗ったのか?」

 慎吾が尋ねる。

「塗ったけど」

「もう焼けてんのに?」

「焼けてても焼けるんだよ!」

 茉衣子の平手が慎吾の肩に飛んだ。乾いた音が鳴り、慎吾が笑いながら逃げる。

「千宥さんは、まだよね?」

 美佳が千宥に声をかけた。

「あ、うん。私、更衣室には行ってないから……」

「私が塗ってあげるわ」

 返事を待つ前に、美佳は日焼け止めを手に取った。

「えっ、自分でできるよ」

「背中は難しいでしょ?」

「……二生に頼むから」

「二生ちゃんなら、果文ちゃんと浮き輪を膨らませているところよ?」

 見ると、少し離れたところで二生と果文が、浮き輪の空気入れに悪戦苦闘していた。サラが横から口を出し、むしろ作業を混乱させている。

「千宥さん、背中を向けて」

 美佳に押し切られ、千宥はおとなしく背中を向けた。肩から背中にかけて日焼け止めを塗られ、くすぐったそうに身をよじる。

「み、美佳ちゃん、そこは自分で届くから」

「塗り残しがあってはいけないわ」

「なんか楽しんでない?」

「ええ、楽しいわよ」

 声は平静だったが、表情はどこか満足そうだった。

 一方、浮き輪はようやく膨らみ始めていた。

「これ、いつまでやればいいの?」

 果文が空気入れを押しながら尋ねる。

挿絵(By みてみん)

「もう少しだと思う」

「果文ちゃん、まだぺたんこやで」

「サラちゃんも手伝ってよ」

「応援してるで」

「それは手伝ってるって言わないよ!」

 やがて浮き輪が二つ、ビーチボールが一つ完成した。

 荷物番については、茜と泰造が交代で残ることになった。泰造が荷物番についたのを確認して、茜が全員を並ばせた。

「最後に準備運動。急に入ったら足つるよ」

「えー」

 茉衣子と慎吾が同時に不満を漏らす。

「ほら、腕回して」

 渋々ながら、全員が茜に合わせて身体を動かす。健介も肩を回し、屈伸をする。隣ではサラが妙に張り切っていた。

「よし、もういいだろ!」

 茉衣子が真っ先に海へ向かって走り出す。

「おい、待て!」

 慎吾がその後を追う。雛灯も呆れながら続いた。

「準備運動した意味あるのかな……」

 千宥が苦笑する。

「まあ、いつものことだろ」

 健介もそう答え、少し遅れて波打ち際へ向かった。


 波打ち際では、茉衣子と慎吾が既に足首まで海に入っていた。

「つめてっ!」

 慎吾が声を上げる。

「何だよ、ビビってんのか?」

「ビビってねえよ。……温度差だよ。空気はこんなに暑いのによ」

 そう言った直後、慎吾は両手で海水をすくい、茉衣子へ勢いよく浴びせた。

「てめっ!」

 茉衣子は顔をしかめると、慎吾の倍はあろうかという量の水を蹴り上げる。慎吾の胸から顔まで、まともに海水がかかった。

「しょっぺ!」

「ざまあみろ!」

「お前ら、入って早々何やってんだよ」

 健介が呆れていると、その横をサラが駆け抜けていった。

「海やー!」

 浮き輪を抱えたまま、迷いなく波の中へ飛び込んでいく。膝ほどの深さまで進み、寄せてきた波に足を取られかけながらも、楽しそうに笑っていた。

「サラちゃん、走ったら危ないよ!」

 二生が慌てて追いかける。その隣では果文も、おっかなびっくり波打ち際へ足を踏み入れていた。

「うわ、冷たっ」

「最初だけだよ。たぶん」

 二生もそう言いながら、波が来るたびに小さく肩を揺らしている。

「二生も怖がってるじゃん」

「こ、怖がってないよ」

「二生ちゃん、こっち来て!」

 サラが浮き輪の中から手を振る。二生と果文は顔を見合わせ、少しずつ先へ進んでいった。

 千宥は、皆より一歩遅れて波打ち際に立っていた。

 足先へ、白い波が静かに届く。引いていく水に砂をさらわれ、足元が少し沈む。

 去年は、皆が海に行ったという話を聞くだけだった。写真も見た。楽しそうだと思ったし、行きたかった。それでも、自分には無理だと諦めた。

 今年は、その海が目の前にある。

「冷たい?」

 隣に立った美佳が尋ねる。

「うん。でも、気持ちいい」

 千宥が笑う。美佳も安心したように微笑んだ。

 健介は少し離れたところから二人を見ていた。先ほどまで水着姿に落ち着かなかったが、実際に海へ入ってしまえば、案外いつもの千宥だった。

「来てよかったな」

 健介が声をかける。

「うん」

 千宥はもう一度足元の波を見た。

「思ってたより、普通だった」

 その言葉に、美佳がわずかに首をかしげる。しかし健介には、なんとなく意味がわかった。

「そりゃ、海入るだけだからな」

「そうだね」

 千宥が小さく笑った、その時だった。

「隙あり!」

 遠くから慎吾の声が飛んできた。次の瞬間、大きく蹴り上げられた海水が千宥たちへ降り注いだ。

「きゃっ!」

 千宥が目を閉じる。健介も顔面にまともに浴びた。

「おい、慎吾!」

「ごめんごめん、そこまで飛ぶとは思わなかった!」

 どう見ても狙っていた顔で笑っている。

 健介は目をこする。痛い。口に入った海水もしょっぱい。

「やったな!」

 雛灯が兄の背後から水を浴びせた。

「ひな、お前まで!」

「先にやったのは慎吾でしょ!」

 さらに茉衣子が加わり、慎吾へ左右から水が飛ぶ。

「おい、二対一は卑怯だろ!」

「健介もやれ!」

「俺を巻き込むな!」

 そう言った健介にも、茉衣子の蹴った水がかかる。

「お前、わざとだろ!」

「細かいこと気にすんな!」

 仕方なく健介も両手で水をすくい、茉衣子へ投げ返した。しかし狙いが外れ、横にいたサラへかかってしまう。

「健ちゃん、やったなー!」

「ごめん、サラちゃん!」

 サラは謝罪など聞いていなかった。浮き輪から身を乗り出し、小さな両手で何度も水をかけてくる。

「果文ちゃん、二生ちゃんもやるで!」

「え、私たちも?」

 戸惑う二生へ、サラの水が飛ぶ。大した量ではなかったが、二生はびくっと肩を跳ねさせた。

「サラちゃん……」

「二生、やり返そう」

 果文が静かに海水をすくう。

「えっ、果文ちゃん?」

「こういうのは先に謝った方が負けだから」

「そういうルールなの?」

 言いながらも、二生も水をすくった。二人から同時に水を浴び、サラはきゃあきゃあと笑う。その騒ぎを少し離れて見ていた美佳は、参加する気がないらしく、千宥の隣で髪についた水を払っていた。

「美佳ちゃんはやらないの?」

「私は別に……」

 美佳が答えた直後、慎吾がまた大きく水を蹴り上げた。今度は千宥の胸元から顔にかけてまともにかかる。

「慎吾くん」

 美佳の声が低くなった。

「事故だ事故!」

 慎吾が笑いながら後ずさる。美佳は何も言わず、両腕で海水を大きくすくった。そして、慎吾の顔面を正確に狙って浴びせる。

挿絵(By みてみん)

「ぶはっ!」

「美佳ちゃん、意外と容赦ないね……」

 千宥が目を丸くする。

「千宥さんにかけたからよ」

「美佳さん、意外と……」

 健介がぼやく。

「なあに、健介くん? 私だって、ちゃんと普通に高校生の女の子なのよ?」

「え?! あー……、すいません」

 健介はそこはかとない圧を感じ、自然と謝った。

 気づけば、全員が入り乱れて水をかけ合っていた。


 ひとしきり水をかけ合った後、千宥たちは浅瀬に戻った。サラは浮き輪に入り、二生と果文が両側から支えている。美佳は千宥のすぐ隣を離れない。

「二生、思ってたより平気そうだね」

 果文が言う。

「うん。最初は恥ずかしかったけど……」

 二生は浮き輪を押しながら、少し照れくさそうに笑った。

「果文ちゃんが来てくれたから」

「私?」

「先輩たちだけだったら、たぶん、もっと緊張してたと思う」

 果文は一瞬きょとんとした後、嬉しそうに目を細めた。

「じゃあ、来てよかった」

「うん。来てくれてよかった」

 そこへサラが浮き輪の中から顔を出す。

「サラもおるで」

「もちろん、サラちゃんもだよ」

「ついでみたいに言わんといて」

 三人が笑う。

 千宥もその様子を眺めながら、少しずつ沖へ足を進めた。まだ腰より浅い場所だったが、足元の砂が波にさらわれ、不意に身体が傾く。

「あっ」

 一瞬、足が滑る。

 美佳と、少し離れた場所から戻ってきた健介が、ほとんど同時に千宥の腕をつかんだ。

「千宥さん!」

「大丈夫か?」

 千宥も片足を踏み直し、すぐに体勢を立て直した。

「大丈夫、大丈夫。ちょっと滑っただけ」

「本当に?」

 美佳も心配そうに声をかける。

「うん。そんなに心配しなくても平気だよ」

 千宥は苦笑しながらも、どこか楽しそうだった。

 健介は、美佳が支えたのを見て、すぐに手を引っ込めた。ただ、一瞬つかんだ千宥の感触は、女の子のそれそのもので、気恥ずかしくなった。

「転んだら、慎吾たちに笑われるぞ」

 照れ隠しとばかりに慎吾の名前を出す。

「それは嫌だなあ」

 千宥は苦笑した。こうやって、まったりと時間は流れていく。


 ひとしきり泳ぎ、騒ぎ、遊んだところで、茜から休憩の声がかかった。

「そろそろ一度上がりなさい。お昼にするよ」

「もうそんな時間か?」

 茉衣子が海の中で振り返る。まだまだ遊び足りない顔をしていたが、慎吾の腹がちょうどよく鳴った。

「俺は賛成。運動したら腹減るだろ」

 一同は海から上がり、泰造が確保したレジャーシートへ戻った。

 濡れた足に砂がまとわりつき、健介は何度か足を払う。どうせまた海に入れば同じなのだが、気になるものは気になる。

 クーラーボックスの横には、大きな保冷バッグが置かれていた。中から出てきたのは、個包装のおにぎり、唐揚げ、卵焼き、それに冷やした果物だった。

「全部作ったんですか?」

 二生が目を丸くする。

「おにぎりと卵焼きだけね。唐揚げは買ったものだし、人数分きっちり作るのは大変だから、足りない人は海の家で何か買ってきて」

 茜が説明する。

「十分ですよ。すげえな」

 健介は素直に感心した。十一人分を完全に用意したわけではないにせよ、これだけでもかなりの量だ。

「じゃあ、俺、焼きそば買ってくる」

 慎吾が立ち上がる。

「あたしも行く。焼きそばと、カレーも食う」

 茉衣子も立ち上がる。

「両方?」

 千宥が驚いて茉衣子を見る。

「海で動いたんだから、そんぐらい食えるだろ」

「私はおにぎり一個でいいかな」

「そんなショボ飯だったら、バテるぞ」

 茉衣子はそう言いながら、既に唐揚げを一つ口へ放り込んでいる。

「朝はちゃんと食べたよ」

「何食った?」

「トーストとヨーグルト」

「やっぱショボいじゃねえか」

「普通だよ」

 千宥が苦笑する。

 その隣で二生も、おにぎり一つと卵焼きを皿へ取っていた。

「二生もそれだけか?」

「あとでお腹が空いたら、何か食べます」

「姉妹揃って食が細えなあ」

 呆れたように言いながら、茉衣子は慎吾と海の家へ向かった。

「待って。私も行くわ」

 えっ。立ち上がる美佳を見て、健介は思わず声を漏らした。

 遠ざかる三人を見届けつつ、健介はおにぎりを二つ、唐揚げを三つ取った。果文も同じぐらいの量を選んでいる。サラはというと、おにぎりを二つ抱えたうえに唐揚げを皿へ山盛りにしている。

「サラちゃん、そんな食べられるの?」

 果文が尋ねる。

「食べられるで。海来たらお腹空くもん」

「茉衣子と同じ血だな」

 健介が言う。

「よく食うのは母ちゃんの血さ。サラはばあばに会ったことないけどね」

 泰造が笑う。

「ゆーても、泰造さんも結構取ってますよね」

 泰造の皿には、既におにぎりが三つ載っていた。

「若いもんには負けられんさ」

「どこで張り合ってるんすか……」

 健介が眉間に皺を寄せる。そこへ、焼きそばとカレーを持った茉衣子と慎吾が戻ってきた。

「お待たせ!」

「誰も待ってねえよ」

 健介が答える。

「健介も焼きそば食うか?」

 茉衣子がプラスチックのパックを差し出す。

「俺はいい。ていうか、お前ら本当に両方食うのか」

「食うぞ」

 慎吾は即答した。茉衣子も当然のようにうなずく。

「果文ちゃん、これも食べる?」

 サラまで自分の皿から唐揚げを差し出した。

「サラちゃん、それ、自分で食べる分じゃないの?」

「まだいっぱいあるで」

「だからって、私に食べさせなくても……」

 そう言いつつ、果文は受け取った。困っているようでいて、どこか嬉しそうでもある。

「果文ちゃん、あとでかき氷食べよ」

「え、まだ食べるの?」

「かき氷は別腹やで」

「ほんと、茉衣子ちゃんばりによく食べる!」

 二生が横でくすくす笑っていた。

 その様子を見ていた健介はふと左を向く。美佳が焼きそばを食べている。

「焼きそば……」

 深窓の令嬢が焼きそばを食べる姿に、なんとも言えない感情を抱き、健介は呆然とする。

「何よ、焼きそばぐらい、食べるわよ」

 その視線に慣れている美佳は、ため息をつきつつ、食事を続ける。

挿絵(By みてみん)

一応補足しておくと、沖縄弁の「しに」は強調表現で「ばり」とか「でら」とかに相当すると思います。


【次回予告】

海水浴、お昼の部!

次回に続きます。お楽しみに。

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