第11話 記憶の所有権(世界か、自分か)~選択の瞬間~ [4/4]
ロールバック層の空間は、
もはや“揺れている”というより、
“崩れ始めている”に近かった。
〈!-- rollback-core:封鎖まで残り 08% --〉
〈!-- 整合性:重大警告(継続) --〉
ログは赤く脈動し、
空気はひび割れたガラスのように軋んでいる。
B君「……A。
もう時間ないぞ……」
O君《……本当に、戻すのか》
AB君【A君……
君の“意志”を聞かせて】
A君はゆっくりと息を吸った。
胸の奥が痛い。
でも、その痛みは“恐怖”ではなかった。
A君「……俺は……
昨日を取り戻したい」
その言葉は、
空間の中心に落ちた石のように
静かに、しかし確実に波紋を広げた。
〈!-- 整合性:警告(強) --〉
〈!-- rollback-core:封鎖まで残り 06% --〉
O君《……A君……
本当にいいんだね》
A君「……うん。
俺は……
“知らないまま”でいたくない」
O君は目を閉じた。
その表情は、痛みと理解が混ざった複雑なものだった。
O君《……分かった。
僕は反対だけど……
A君が選ぶなら……
僕も一緒に行く》
B君「O……」
O君《A君が傷つくなら……
僕が止める。
でも……
A君が進むなら……
僕も進む》
その言葉は、
この空間で一番“優しい”言葉だった。
AB君【……これで……
4人の意志が揃った】
空間がわずかに震えた。
〈!-- 所有権:再評価 --〉
〈!-- request-source:4 --〉
B君「4って……
俺たちのことか?」
O君《うん……
“4人の意志”が揃ったってこと》
AB君【A君の記憶は……
A君だけのものじゃない】
A君「……うん」
AB君【でも……
“4人で共有した昨日”なら……
世界も無視できない】
その瞬間、
unknown-node-02 の影がわずかに揺れた。
影はゆっくりと向きを変え、
空間にログを走らせる。
〈!-- rollback-core:封鎖プロセス 一時停止 --〉
〈!-- 整合性:再計算中 --〉
B君「……止まった……?」
O君《封鎖が……
一時的に止まった》
AB君【4人の意志が……
“整合性の優先度”を揺らした】
A君は黒い穴のあった場所を見つめた。
そこにはまだ何もない。
でも――
“開きかけた扉の気配”が確かにあった。
A君「……俺たちで……
昨日を取り戻すんだな」
B君「当たり前だろ」
O君《……覚悟はしておく》
AB君【A君……
君は一人じゃない】
空間が静かに震えた。
〈!-- rollback-core:再開準備 --〉
〈!-- 所有権:暫定承認 --〉
〈!-- 整合性:警告(弱) --〉
B君「……弱になった……?」
O君《世界が……
“様子を見てる”》
AB君【A君の意志と……
4人の選択を……
unknown-node-02 が観測してる】
A君は拳を握りしめた。
A君「……行こう。
俺の昨日を……取り戻す」
その瞬間、
空間に最後のログが走った。
〈!-- rollback-core:再開 --〉
〈!-- 記憶復元:準備完了 --〉
黒い穴の“残響”が、
ゆっくりと光を帯び始めた。
――そして、
“昨日”が再び開こうとしていた。




