第11話 記憶の所有権(世界か、自分か)~閾値を越える揺れ~ [3/4]
ロールバック層の空間は、
“静か”ではなく“張り詰めていた”。
先ほどまでの揺れとは違う。
今は、空気そのものが“裂け目の手前”で震えている。
〈!-- 整合性:警告(強) --〉
〈!-- rollback-core:封鎖準備 --〉
ログはすでに“強い警告”を示していた。
つまり――
**世界はもう限界に近い。**
B君「……A。
もう、戻すしかないだろ。
こんな状態で“閉じる”なんて……絶対ダメだ」
A君「……俺も……そう思う」
A君の声は弱くなかった。
ただ、迷いが混ざっていた。
O君《……二人とも、落ち着いて》
O君の声は静かだったが、
その静けさは“必死に保っている”静けさだった。
O君《“強い警告”が出てる。
これは……
“世界が本気で止めに来てる”状態》
B君「止めに来てるって……
Aの記憶だぞ!?
なんで世界が止めるんだよ!」
O君《A君の“昨日”は……
世界の整合性に深く関わってる》
AB君【……A君の昨日には……
“他の誰か”が関わってる】
A君「……他の誰か……?」
その言葉に、
空間がわずかに反応した。
〈!-- memory-offset:-23h --〉
〈!-- 関連ログ:秘匿 --〉
B君「秘匿って……
なんだよそれ……!」
O君《“A君以外の誰か”の記憶も巻き込まれてるってこと》
A君「……俺の昨日に……
誰が……?」
A君の胸が強く締めつけられた。
“思い出せない痛み”が、
記憶の奥からじわりと滲み出す。
AB君【A君……
君の昨日は……
“君だけのもの”じゃない】
A君「……でも……
俺の記憶だろ……?」
その瞬間、
空間が大きく揺れた。
〈!-- 整合性:重大警告 --〉
〈!-- rollback-core:封鎖プロセス開始 --〉
B君「うわっ……!
本格的に閉じに来てる!!」
O君《A君の“所有権の主張”が……
世界の整合性と衝突してる》
AB君【A君……
“言葉”だけで世界が揺れるほど……
君の昨日は重い】
A君は拳を握りしめた。
A君「……俺は……
昨日を取り戻したい。
でも……
誰かを巻き込むのは……嫌だ……」
B君「巻き込むって……
そんなの……
Aのせいじゃないだろ!」
O君《でも……
“巻き込まれる誰か”がいる》
AB君【そして……
その誰かの記憶も……
“世界の整合性”に関わってる】
A君は息を呑んだ。
A君「……俺の昨日って……
そんなに……重いのか……?」
空間が答えるように、
新しいログが走った。
〈!-- rollback-core:封鎖まで残り 12% --〉
〈!-- 整合性:重大警告(継続) --〉
B君「12%!?
もうすぐ閉じるってことじゃん!!」
O君《A君……
本当に急がないと……
“昨日”が完全に消える》
AB君【A君……
決めるんだ】
A君は黒い穴のあった場所を見つめた。
そこにはもう何もない。
ただ、
“閉じた扉の残響”だけが漂っている。
A君「……俺は……
どうすれば……」
その声は、
空間の奥に吸い込まれていった。
そして――
unknown-node-02 の影が、
初めて“わずかに”動いた。
〈!-- 観測モード:変動 --〉
〈!-- 所有権:再評価 --〉
影は、
まるで“4人の決断を待つ”かのように
静かに揺れていた。




