第11話 記憶の所有権(世界か、自分か)~四者四様の正しさ~ [2/4]
ロールバック層の空間は、
まるで“議論のために用意された舞台”のように静まり返っていた。
黒い穴は閉じたまま。
unknown-node-02 の影は動かず、
ただ“観測”している。
〈!-- 所有権:未確定 --〉
〈!-- decision-required --〉
ログが淡く脈動している。
B君「……なぁ、もう決めようよ。
Aの記憶、戻すんだろ?」
B君は迷いなく言った。
その声には、怒りでも焦りでもなく、
ただ“友達を守りたい”という真っ直ぐな気持ちだけがあった。
A君「……ありがとう、B」
A君は小さく笑った。
しかし、その笑みはどこか痛々しい。
A君「でも……
俺の記憶を戻すことで……
世界がどうなるか……分からないんだろ?」
O君《分からない、じゃない。
“歪む可能性が高い”》
O君の声は静かだった。
だが、その静けさは“警告”の色を帯びていた。
O君《A君の“昨日”は……
世界が巻き戻しを選ぶほどの出来事だった》
B君「でもさ、それって……
Aのせいじゃないだろ?」
O君《もちろん。
A君は悪くない》
O君ははっきりと言った。
O君《でも……
“悪くない”ことと
“世界が耐えられるか”は別問題》
その言葉に、
空間がわずかに揺れた。
〈!-- 整合性:警告(軽度) --〉
AB君【……O君の言うことは正しい】
AB君は静かに言った。
AB君【でも……
B君の言うことも正しい】
B君「え……?」
AB君【A君の記憶は……
A君のもの】
A君「……AB……」
AB君【でも……
世界の整合性は……
“世界全体のもの”】
4人の視線が交差した。
AB君【だから……
どちらが正しい、じゃない】
O君《どちらも正しい》
B君「……じゃあ……
どうすんだよ……?」
その問いに、
空間が静かに応えた。
〈!-- 所有権:未確定 --〉
〈!-- decision-required --〉
〈!-- 整合性:警告。 -->
“警告”のログが混ざり始める。
A君「……世界が……
俺の記憶を……拒んでる……?」
O君《拒んでるというより……
“優先度が違う”》
B君「優先度……?」
O君《世界は……
“整合性”を最優先にする》
AB君【人間は……
“記憶”を最優先にする】
A君「……だから……
衝突してる……?」
O君
A君は拳を握りしめた。
A君「……でも……
俺の昨日は……
俺のものだ」
その言葉に、
空間が強く揺れた。
〈!-- 整合性:警告(中度) --〉
〈!-- rollback-core:不安定 --〉
B君「うわっ……!
また揺れてる……!」
O君《A君の“意志”が……
世界の整合性と衝突してる》
AB君【でも……
A君の意志は……
“世界を揺らせる”】
A君「……俺は……
昨日を取り戻したい」
その瞬間、
unknown-node-02 の影がわずかに揺れた。
〈!-- access-level:再評価 --〉
〈!-- request-source:A --〉
B君「……A……
お前……本気なんだな……」
A君「……うん」
O君《A君……
本当に戻したいなら……
“覚悟”が必要だ》
A君「覚悟……?」
O君《戻した瞬間……
世界がどう変わるか分からない》
AB君【A君自身も……
“今のA君”じゃなくなる可能性がある】
A君は息を呑んだ。
A君「……俺が……変わる……?」
B君「でもさ……
変わってもいいじゃん。
AはAだろ?」
その言葉は、
この空間で一番“人間らしい”言葉だった。
A君「……B……」
A君の胸が熱くなった。
O君《……僕は……
“戻すべきじゃない”と思う》
B君「なんでだよ!」
O君《A君が傷つく可能性がある》
その言葉は、
B君の怒りを一瞬で凍らせた。
B君「……Aが……?」
AB君【A君の“昨日”は……
世界が巻き戻すほどの出来事】
O君《つまり……
“思い出したくない記憶”かもしれない》
A君は息を呑んだ。
A君「……俺が……
思い出したくない……?」
空間が静まり返った。
〈!-- 所有権:未確定 --〉
〈!-- decision-required --〉
AB君【……だからこそ……
4人で決めるべき】
その言葉が、
議論の核心を突いた。
A君「……俺は……
昨日を取り戻したい」
B君「俺もだよ。Aの記憶が消えたままなんて、嫌だ」
O君《僕は……反対だ。
戻すことで、A君自身が傷つく可能性がある》
AB君【僕は……
“4人で決めるべき”だと思う】
4人の答えは、まだひとつにならない。
空間に浮かぶログが、静かに脈動した。
〈!-- 所有権:未確定 --〉
〈!-- decision-required --〉
〈!-- 整合性:警告(強) --〉
黒い穴は閉じたまま。
unknown-node-02 の影は動かず、
ただ“観測”だけを続けている。
A君は拳を握りしめた。
A君「……俺は……どうすればいい……?」
その問いが、
4人の“選択”の幕を開けた。




